白針兎は、赤を待つ

鳥兎子

白針兎は、赤を待つ


 魂は針の先にある。

 放射状に広がる白硝子の毛並みに、

 息を吹いた。


 旋回スピンした針は、珪酸塩鉱物オケナイト。凍て空へと跳躍すれば、消えかけた針が応えてくれるんだから。天から下賜かしされた『針形斧ハルバード』を、ふわふわ前足でタッチした。

 

 眼下で呆ける中級冒険者プレイヤーは「低級モンスター……じゃない? 」と、白兎わたしを見上げる。クールタイム、延長かかってるわね。

 

「ハイ、残念。私は柔くなんか無いのよ! 」

 

「新手の PKプレイヤー・キラーかよ!」


「花丸100点ですぅ、雰囲気イケメソくん! 」


 ウサ耳ぴょこん&ウィンク♡した私は、光の糸束を引いて大地へ突撃する! 彗星のテイルで薙ぎ払い、の者の魂を突く! 見開かれたまなこを、煌々と照らし出した!

 

「私の名は、ミィヤ・ラビットテイル!! 異称は『魂喰らいの白兎』!! イケメソくん、ちゃんと悪名広めといてよねぇ……って……もう成仏オーバーしたの? 堪え性無いなぁ……」


 私の一撃を躱せる、良質な魂の王子様を待ってるのに……これが、とんと来ないんだ。運命は赤い糸の先にある、なんて言うけれど、私の白針にだって運命が通してあるはずでしょ?


 魂消えかけの焚き火の前、しゃがんだ私は膝に頬杖をつく。白いため息は、揺らめく赤色画素ピクセルに透けた。

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白針兎は、赤を待つ 鳥兎子 @totoko3927

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