第5話 女子寮道場

 ハリアルに急用が発生し、夕方まで戻らないとのことだった。わざわざ着替え直したのに、結局ユウラはすぐ女子寮の自室へ戻る羽目になった。戻る途中、宿舎三階の、各人の部屋の並びの手前にある大部屋・女性兵道場を覗いてみると、セトの実戦部隊所属の部下であるレヴィアンビューナ、マリナ、ルーナが訓練をしている最中であった。


 ユウラは先ほど脱いだトレーニングウェアにまた着替え直し、髪をひっつめに結い直し、ピアスを着けて道場に足を運んだ。

 宿舎の中でも道場だけは、フロア一面が木の板張りの床で造られている。道場は、セト隊の部下三人以外にも、他の隊の女性兵達が大勢訓練に励んでいた。


「みんな、やってるわね」


 ユウラが部下達に声をかける。


「副隊長殿、ロムでの任務、お疲れ様でした!」


 レヴィアンビューナがユウラに敬礼をすると、マリナ、ルーナも続いて敬礼。ユウラも軽い仕草で敬礼を返した。


 レヴィアンビューナは軍服姿の他二人と違い、ユウラと同じように、腹部を露出した、豊満な胸を覆うブラトップと、ぴっちりとフィットするレギンス姿だった。色はユウラと対照的に上下黒。艶を湛えた黄金の長髪を伸ばした女剣士で、山脈以北を領地とする名門貴族の出である。女性としてはかなりの長身で、ハリアルより僅かに高いほどだ。ハリアルも男性としては高身長の部類だが、それより高いということもあってセトの実戦部隊の女性兵士の中では一際目立つ。ユウラも初めてレヴィアンビューナに会ったとき、頭一つ分以上の身長差を間近で感じ、こんな長身の女性がいるものなのかと驚いたものだ。脚も恐ろしく長く、レギンス姿のインパクトが凄まじい。


 もっとも、レヴィアンビューナと初めて会ったときのカルチャーショックは、昨日ムキコという更なる長身の女性と出会ったことで更なるショックとして上塗りされてしまったのだが。


 マリナはユウラより若干小柄な、青い髪の呪使いだ。ショートヘアの青髪は、セトの水色がかった色味より更に深い。ローブタイプの軍服を着用している。


 ルーナはユウラと同じ槍使い。髪は栗色のポニーテール。背はユウラよりやや高い。メインで使う武器が同じで女性兵同士ということもあり、日々ユウラと共に槍の研鑽に励んでいる。


「レヴィ、もしかしてあたしの代わりに稽古付けてくれてた?」


 ユウラが笑顔を見せて言うと、レヴィアンビューナも笑顔を返す。


「はい。副隊長殿のようなしなやかな身体を目指して、柔軟の特訓を」


「ありがとう。夕方まであたしも暇だから。一緒にやりましょ」


 そう言って、ユウラは挨拶代わりにサッとI字バランスを披露した。この程度は何でもない。


「副隊長殿、あたし呪使いだからいいって言うのに、レヴィアンビューナ殿に無理矢理駆り出されたんです~!」


 マリナが眉をハの時にして抗議する。


「あなたは固過ぎるのよ。もっと身体能力を向上させなさい。呪使いだからって肉体の鍛錬をしなくていいってわけじゃないわ。ユウラ殿が不在のときは私がサボらせないから覚悟なさい」


 レヴィアンビューナが言いながら、マリナをキッと睨みつける。


「レヴィの言う通りね。あんた呪に偏り過ぎてるから。柔軟性もそうだし、体力の方もね。実戦部隊ウチに来たからには、常に走って後衛のポジションを維持する持久力も必要よ」


 ユウラがレヴィアンビューナの主張を補強する。いざ黒獣との戦いで、呪使いがへばって走れなくなったら前衛の足手まといになる。


「はい」


 マリナがしゅんとしてうなずく。


「マリナもすぐ柔らかくなるよ。あたしももうこのぐらいできるようになったし」


 ルーナがその場で前後180度開脚をする。両脚はぴったりと道場の床に付き、軍服のスカートの裾も床板に覆い被さる。


「ああー、ルーナも最初結構固かったもんね。確かに、こういうポーズできるようになるの羨ましいかも」


 マリナがルーナの開脚を感心したように見つめる。


「副隊長殿、レヴィアンビューナ殿、いつものアレやって下さい。アレ見ると気合い入るんで」


 ルーナが立ち上がりながら言う。


「いいわよ」


 ユウラがレヴィアンビューナに視線を送ると、彼女もうなずいた。


 ルーナとマリナが一旦道場を出る。その間に、ユウラは床に胡座で座るレヴィアンビューナの髪を、自分と同じようにひっつめにして、頭頂部で丸く纏めてやった。


 ルーナとマリナがそれぞれ、水の入ったワイングラスを二つずつ持ってきた。


 ユウラとレヴィアンビューナは床に両手を突いて倒立し、そのまま180度左右に開脚する。


 ルーナがユウラの両足の裏にワイングラスを置き、マリナはレヴィアンビューナの両足の親指と人差し指の間にワイングラスを挟む。


「行くわよ」


「はい」


 ユウラは足の裏に置いたワイングラスの水を全く波立たせず、左右に開脚した足を戻し、また開いてを繰り返す。レヴィアンビューナも同じように、ユウラとリズムを合わせ、ユウラが開いているときは脚を閉じ、ユウラが閉じているときはレヴィアンビューナが開脚する。


 ずっと倒立を維持したまま延々と乱れぬリズムで繰り返されるユウラとレヴィアンビューナの開脚動作を、マリナとルーナは息を飲んで眺めていた。


 道場にいた他の女性兵達も、訓練の手を止めて二人に視線を注いでいた。


「あ、あっ」


 どれほど続いたであろうか。レヴィアンビューナから声が漏れた。


 レヴィアンビューナの脚が徐々に震え始め、足の指でつまんだワイングラスが傾く。ユウラとのリズムが乱れるも、数度開いて閉じての動作を繰り返していたが、少しずつ水がこぼれて脚に滴り始める。


 レヴィアンビューナが脚を閉じると、ルーナが素早く足の指から落ちそうなワイングラスを回収し、レヴィアンビューナは床に足を付けた。


 ユウラはまだ続けられたが、レヴィアンビューナが終わったことでマリナがユウラの足の裏に置いたワイングラスを回収したので、ユウラも一旦床に足をついた。ユウラは一切水をこぼさなかった。


 ユウラが立ち上がって額の汗を拭うと、ユウラとレヴィアンビューナに対し、周囲の女性兵達が一斉に歓声を送る。やっている最中はこちらの集中力を阻害しないように声を出さないでおいてくれたらしい。


「ありがと」


 ユウラは言いながら、マリナからワイングラスを一つ受け取り水を一気に飲み干し、渇きを潤した。


「きぃええええええいっ!」


 そのとき、道場に響き渡る甲高い掛け声。


「あの声は」


 ユウラが道場の隅に目を遣る。


「えええええええい! きえええええええいっ!」


 ユウラとレヴィアンビューナのアクロバティックな離れ業に唯一目を向けずに一心不乱に木剣を振るい続けていた人物。人事部所属のメイだ。


「何なのあいつ。ウザッ」


 レヴィアンビューナが舌打ちし、不快感を露わにした。


「レヴィ、あたしちょっとメイと話してくるから、引き続き二人をよろしくね」


「ハッ!」


 レヴィアンビューナが張り切った様子で敬礼する。


 ユウラはメイの側までやってきた。


「ハアアアアアッ! きええええええいっ!」


 メイは側にいるユウラにまるで気付かない様子で、打ち込み用の藁人形に木剣を打ちこみ続ける。黒髪のセミロングに、前髪の隙間からは赤い鉢巻きが覗く。線の細い体格でなかなか気合いが入っている。


「メイ!」


 ユウラが声を張り上げると、メイはようやく打ち込みを止め、息を切らしながらユウラに向き直った。


「ユウラ殿」


「あんたも戻ってたの」


「はい。ユウラ殿おでこ出してるの凄く似合ってるじゃないですか。バレリーナみたい。絶対こっちのがいいですよ」


「まあ、柔軟や身体操作するときだけね。どうしても髪が邪魔になるから。ひっつめにお団子って、頭皮痛いし、何かおばさんっぽいでしょ?」


「いや、全然そんなことないですって」


「そう? ありがと。スカウトの旅は上手くいった?」


 メイは人事部で、主に優秀な女性兵士となり得る人材のスカウトを担当している。


「……いえ、全然駄目です。冬が来る前にと、採用スカウトチームのみんなではるばる山脈の向こう側まで行き、募集をかけましたが。抜擢枠も公募枠も鳴かず飛ばず。戦に出るのが嫌なのか、待遇が見合わないのか、それとも女だから……」


 女だから、軍に就職するという選択肢をそもそも持っていないのか。ユウラは言葉を途中で止めたメイの言葉の先を想像で補った。


「大変ね」


「部長からもお叱りを受けてしまいました。『お前らはただ旅行して遊んでただけでござるか!』って」


 メイが気落ちした様子で言う。


 ユウラはメイが不憫に思えた。広い北支部管轄区域の町や村を、勧誘しながら歩くなど、ユウラにはできる気がしない。しかも断られ続けてだ。ましてや、言うまでもなく白軍は軍隊だ。女性専門のスカウトとなると、男性の募集より遥かに不利であることは自明の理。誰にでもできる仕事ではないと思う。


「ファスト部長も分からんちんよね。女の子で白軍に来たいって子、なかなかいないでしょ」


「そうですね。女性兵士の勧誘なのに、おじさんばっか寄ってきて。今回男性の募集はしてないって言うと、『女のくせに調子に乗るな』ってキレて襲いかかってくるんです」


「何それ? ホンットおじさんの生態ってキモイわね。何かにつけて女のくせにって」


 ユウラは沸き上がってくる嫌悪感のままに、吐き捨てるように言った。アマラの町でユイカを攫われた後、倒れているユウラを連れて行こうとした下衆な男のことを思い出す(※)。あの男の、野太い毛むくじゃらの腕を思い出すだけで、不快感で吐き気すらしてくる。結果的にユウラとセトを引き合わせてくれた人物だが、当然ながら砂一粒ほども感謝などしていない。


「だから、正当防衛でみんな叩きのめしてあげました。そのときたまたま一人で行動してたから手加減できなかったんで。あの、多分、死んではいないと思うんですけど……。うん、あの程度じゃ死なないはず。きっと。お願い、生きていて」


 スカウトは危険が伴う仕事だ。しかもヘッドハンティングする際に、腕試しをするわけだから、スカウト担当自身も相手の力量を正当に測れるだけの実力が要求される。


「あんたは悪くない。そんな、女一人をよってたかって襲うような男共なんて、実力的にも、人としても、白軍ウチに入る資格なんてないわ」


「そうですね。私如きに勝てない男なんて」


 そう言い、メイは気を取り直したように木剣を構え直し、藁人形の方を向いた。


 ユウラは、メイが再び稽古に入る前に話を切り出す。


「実はね、ロムでもの凄い逸材を見つけたのよ」


「え?」


 木剣を構えたままメイが首だけをユウラに向ける。


「警備で雇う浪人の腕試ししてたら、その中の一人だけ、明らかに他と雰囲気が違うというか、格が違うというか、とにかくとんでもなかったわ」


「えっ? そうなんですか?」


「ええ。もう、こーんな、全身筋肉の鎧のような、山のような体格の大女。そうねぇ、形容すると……、まあ、大巨人……みたいな?」


「大巨人!? そんなでっかい女の人現実にいるんですか!?」


「いたのよ、それが。昨日見たのよ」


「えっ? それってレヴィアンビューナ殿より背高いんですか?」


 メイがアクロバティックなコントーションの数々を披露中のレヴィアンビューナを見ながら言う。


「いやもう全然高いわよ。多分、レヴィより頭一つ分ぐらい高い」


「え~っ!? 支部長より背が高いレヴィアンビューナ殿より頭一つ分ぐらい高い!? ホントですか!?」


 メイが半信半疑な様子でドン引きする。


「疑うなら一度ロムへ行ってみなさい。手合わせもしたけど、間違いなく実力者よ。保証する。正直言って、是非ともこっちに欲しいわ。ロムの屯所に置いとくには勿体ない」


「その人の名前は?」


「ムキコ」


「屯所にいるのですか?」


「ええ。期間限定の雇われだろうから、早く行かないと町を去っちゃうかも」


「すぐ行きます! もしそんな人がいるなら絶対欲しいです。余所に取られる前に。もう今すぐロムまで走ります!」


 メイが走り出したところをユウラが呼び止める。


「待って」


「はい?」


「ムキコ、採用したらセト隊ウチに回してね」


 ユウラが期待を込めて言う。


「いや、それは、部長の意向もあるので」


「絶対よ。頼んだわよ」


 ユウラはにっこりと笑ってメイに圧力をかけた。


「ええ~っ!? わ、分っかりましたぁ!」


 メイは困惑しつつ、道場の出口に向けて走り出す。


 しかし、それを阻む者がいた。


 レヴィアンビューナが木剣を構えて出口を塞いでいる。


「レヴィアンビューナ殿?」


 メイが困惑した様子を見せた。


「あなた、いつもうるさいのよ。黙らせてあげる」


 レヴィアンビューナが冷たい眼差しをメイに投げかけてきた。


「レヴィ、やめなさい」


 ユウラがレヴィアンビューナを嗜めるが、彼女はユウラに綺麗な笑顔を作ってみせた。


「副隊長殿、大丈夫です。一本だけ。時間は取らせません」


 ユウラは溜息しながら腕を組んで、静観することとした。レヴィアンビューナは実力差を理解できていないようだが、彼女ではメイには勝てない。ユウラにはよく分かる。決してレヴィアンビューナが弱いわけではない。寧ろレヴィアンビューナは強い。精鋭である実戦部隊セト隊のメンバーに選ばれているのだ。だが、彼女の洗練され過ぎているが故の教科書通りの太刀筋では、修羅場を潜り抜けてきたメイの剣に対抗するのは厳しい。レヴィアンビューナの剣は行儀が良過ぎるのだ。


「防具をお着け下さい」


 メイが真剣な面持ちで言うと、レヴィアンビューナの眉が小刻みに震えた。


「ハァ!? この私を誰だと思ってるの!? 生意気ね、あなた。とても生意気。精鋭部隊であるセト隊の、それも副隊長殿のである私に対して。よくそんなこと言えたものね。度胸だけは褒めてあげる。お~っほっほっほっほっ!」


 高笑いするレヴィアンビューナだが、メイを見下す目は笑っていない。今時こんなあからさまなお嬢様笑いをするのは、エルティ中を探しても彼女ぐらいのものである。


 ちなみに、ユウラに副官などいない。完全に自称副官で、ユウラに心酔しているレヴィアンビューナが勝手に名乗っているだけである。何度も勝手に副官を名乗るなと注意しても「いいえ! 私はユウラ殿の副官です! 私が副官だと言ったら副官なのです!」と言って聞かないのでもう諦めているが。


「そんな薄着だと怪我します」


 再度忠告するメイ。


「必要ないって言ってるでしょ! 来なさい!」


 レヴィアンビューナが声を荒げる。


「……承知しました。上官で、しかもノースノーザル家の御令嬢を傷付けたくはありませんが、売られたケンカは買わせて頂きます」


 メイは覚悟を決めた様子で、真っ赤な鉢巻きを一旦外して力強く締め直し、静かに前髪を左右に分ける。そして、片付けた木剣を再び手に取って、レヴィアンビューナに対峙した。


 沈黙の中、二人を見守るユウラ、マリナ、ルーナ、その他の女性兵の面々。


 ユウラは見守りつつ思っていた。ここでメイにプライドをへし折られるのもレヴィアンビューナにとってはいい薬かもしれない。


 レヴィアンビューナは木剣を中段に構えつつ、余裕の笑みを浮かべ、すり足でじりじりと間合いを詰める。


「きええええええいっ!」


 直立不動だったメイが、突如道場内を揺るがすほどの甲高い掛け声を上げた。そして、既にレヴィアンビューナの露出した腹部のど真ん中に鋭い突きを打ち込んでいた。


 速い。


 一瞬。


 丁度ヘソに切っ先が完全にクリーンヒット。


 レヴィアンビューナが仕掛けた間合いの読み合い。駆け引き。メイはそんなもの意に介さず。


「おおおうっ!?」


 レヴィアンビューナは内股になり、脚を震わせ膝から崩れ落ちた。手から木剣が滑り落ちる。


「お、おおうっ!? おげええええっ!?」


 レヴィアンビューナは腹部を押さえ、たまらずその場で嘔吐する。


「えっ! ええげえええっ! ああええええ!」


 再び嘔吐。胃の中の物を全部吐き出す勢いで、道場の床板に吐瀉物が広がる。


「レヴィ!」


「レヴィ殿」


 ユウラ、マリナ、ルーナがすぐに駆け寄る。


「だから防具を着けるよう申し上げました。恐縮ですが、先を急ぎます」


 レヴィアンビューナの脇を過ぎ去ろうとするメイ。


 レヴィアンビューナは介抱するマリナを振り解き、床を這ってメイに追いすがり、嘔吐しながらメイの足首を両手で掴む。上級貴族・ノースノーザル家の誇りと言うべきか、恐るべきプライドの高さだ。


「レヴィ! もう勝負あったわ!」


 ユウラも駆け寄ってメイの足首からレヴィアンビューナの手を振り解く。


「失敬!」


 メイはユウラやレヴィアンビューナに敬礼し、全速力で道場を飛び出していった。


「レヴィ殿! 大丈夫ですか? さあ、医務室へ」


「レヴィアンビューナ殿、立てますか?」


 マリナとルーナが両脇から肩を貸し、長身のレヴィアンビューナをゆっくりと立たせる。


「副隊長殿」


 マリナがユウラに目配せする。ルーナも同じく。


「ごめん。レヴィをお願いね。こっちはあたしがやっとく」


 レヴィアンビューナは目を真っ赤にして涙を浮かべ、息を震わせていた。


「な゛ん゛でぇ゛副隊長どの゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛……。メ゛イ゛速過ぎい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛……。何あ゛の゛太刀筋ぃぃぃ……」


 レヴィアンビューナが酷く掠れた声でユウラに訴える。


「メイが強過ぎるんです」


 ルーナがレヴィアンビューナにフォローの言を入れる。ユウラも同感だが、レヴィアンビューナの自業自得な面もあるので、今は上官として庇う言動は慎んでおいた。


「後でいくらでも聞いてあげるから、今は医務室に行ってなさい! 但し説教もするから!」


「ユ゛ウ゛ラ゛殿ぉ゛、申じ訳あ゛り゛ま゛ぜぇ゛ぇ゛ん゛……! ごん゛な゛ばずじゃ゛あ゛あ゛あ゛……!」


 レヴィアンビューナは謝罪の言葉を搾り出しながら、マリナとルーナに肩を担がれ、床板に足の甲を引きずり、その場を去って行った。


 入れ違いで、兵が二人やってくる。一人は両手に水がなみなみと入ったバケツを二つ持ち、もう一人は大量の雑巾を両手に抱える。


「はいはーい。お掃除開始でーす!」


 兵が言い、バケツを二つドカッと床に置く。


「ホントごめんね、ウチのレヴィが」


 ユウラは周囲の兵達に上官として謝罪しつつ、受け取った雑巾をバケツに漬け、みんなで一緒に床を掃除したのだった。


https://kakuyomu.jp/works/1177354055049306484/episodes/1177354055053332026

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る