第38話 魔女

二人が並んで城から出るところをサヤとナーガが観察している。




サヤ「よしよし…作戦は上手くいってるわ!ナーガ様、見てくださいまし!」




手に持った望遠鏡をナーガに手渡す。




ナーガ「これではレド様とお姉様のデートになってしまうのでは…?」




サヤ「幼なじみのお出かけですわ!決してデートではございません!」




さすがのサヤもこのシチュエーションには嫉妬するらしい…




自分に違うと言い聞かせている。






レド「いい店を知ってるんだ。俺たちの正装もそこで繕ってもらってる。」




ルナ「それは楽しみですわ!庶民の方々にも作るだなんて素敵な発想ですわ…!」




徐々に素が出てきているルナにレドはもう一押し…




レド「表向きには俺たちの服を作っていると知られていない。それでも人気の店だから、期待しててくれ。」






二人で楽しそうに向かう姿に、サヤは少し心配になる。




サヤ「私では力不足でしょうか…?」




それをナーガが否定する。




ナーガ「レド様はサヤ様のことを芯から愛されていますよ?サヤ様が来てからの笑顔は心の底から出た笑顔でしたわ。」




サヤ「…ありがとうございます。私も、もっとデートすればいいのですね!」




何か間違えているが、まぁいいだろう。






レド「そこのかどを曲がったら大通りだ。人が多いから、はぐれないようにな。」




さぞ当たり前かのように、イケメン発言をするレド。




ルナ「レドも変わりませんね…小さい頃から、王子様ですわ…」




昔のことを思いだし、少しポッとする。




レド「ん?何か言ったか?」




ルナ「何も言ってませんわ。さ、行きましょう。」




その後も話しながら歩いていると…




レド「あった!あの店だよ。って…ルナ?」




辺りを見回しても、ルナはいなかった。




そう…二人ははぐれてしまったのだ…




これには、遠くから観察していたサヤも飛び出した。




サヤ「私、ルナ様の元へ行ってきます!ナーガ様はレドを見ていてくださいまし!」




ナーガ「は…はい!お気を付けて!」




私服に着替えていたサヤは、そのまま街に出た。




大きな帽子を被り、正体を気づかれないように。




ルナはというと…




ルナ「レドったら…どこに行ったのかしら…?」




自分がはぐれたことに気づいていないようだった。




そこへ…




「そこのお姉さん、こっちにおいで…」




後ろから聞いたことのない声がしたため、振り向く。




ルナ「…誰ですの…?」




そこには大きな帽子を被り、日傘をさした不思議な雰囲気を纏う女性がいた。




正体を隠したサヤである。




ルナの手を引き、レドの元へと案内する。




「あの方は婚約者かしら?」




ルナ「いえ、幼なじみです…彼には婚約者がいるので…」




かなりの演技力で、まだ気づかれていないようだった。




「私は何でも知っているのよ…あなたが何かを抱え込んでいることも、妹さんが悲しんでいることもね。」




ルナ「!?」




「当たりかしら?」




しばらくルナは黙り込む。




ルナ「妹は…きっと、私のことなどどうでもいいと思っているはずです。」




「そんなこと誰にもわからない…妹さんは待っているはずですよ。あなたの帰りを…」




そう言うと、サヤは人混みに消えていった… 




ルナ「待ってくださいまし!まだ話は…」




レド「ルナ!そこにいたか…はぐれちゃ駄目だろ…?」




ルナ「レド…不思議な人がいたんですの!見ませんでしたか?」




何を言っているんだという顔でレドは…




レド「誰も一緒にいなかっただろ?ほら、店に入るぞ。」




二人で店に入っていった…

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