第32話 覚悟

サヤ「レド…ごめんなさい…ごめんなさい…!」




レドに謝りながら自室へと向かう。




むこうから誰かが歩いてくることにも気づかずに…




ドンッ




誰かとぶつかってしまった。




サヤ「すみません…すみません…」




謝ってそのまま通りすぎようとすると…




「待ちなさい!何があったの?」




聞き覚えのある声だった。




サヤ「お義母様…」




母上「とりあえず私の部屋にいらっしゃい?お茶でも飲んだら少しは落ち着けるわ…」




お義母様の部屋へ行き、少し休ませてもらうことにした。




母上「今は隣国の王女、ルナ様とナーガ様が来訪されているんですよね?」




サヤ「はい…お茶までもらって…ごめんなさい…」




母上「謝らなくていいのよ。何があったか話してごらんなさい?少しは気持ちが晴れるわ…」




そして、サヤは自分に起きた出来事と、ルナがそれを忘れていることを話した。




サヤ「ごめんなさい…過去のことだから、もう忘れれば終わることなのに…でも…忘れられなくて…」




母上「過去を捨てるのは難しいことよ…自分を責めないで…?」




そう言うと、お義母様はそっとサヤを抱きしめてくれた。




サヤ「お義母様…ありがとうございます…でも私は王妃です。自分のことを…国と国の問題に巻き込むことはできません!」




母上「…サヤさんは強いのね…自分が思うように進んで行くのよ…その道はきっと、明るいはず!」




お義母様から励ましの言葉を得て、サヤは自分と向き合う覚悟をすることができた。




サヤ「お義母様、私は戻ります。紅茶、ご馳走さまでした!」




ペコリとお辞儀をして、サヤは部屋を去っていった。




サヤ「急がないと…失礼になっちゃうわ!」




笑顔で廊下を歩くサヤ。




その笑顔に、もう曇りはなかった。




ルナ「レド、このお土産は私が選んだのよ!このネックレス…きっと似合うと思うわ!」




レド「あ…ああ…ありがとう…」




かなり押され気味で、お土産を見ている状態だった。




サヤ「すみません、今戻りました!私にも見せてくださいませ!」




レド「サヤ…大丈夫か?かなり調子悪そうだったが…」




サヤ「なんのことですか?私はもう大丈夫ですわ!」




皆が目を丸くしている。




さらにサヤは話し続ける。




サヤ「あら、このネックレス…とても綺麗な装飾ですわ…!」




ルナ「そ…そうでしょう?我が国自慢の宝石職人に作らせた逸品よ!」




サヤ「通りでそんなに美しい訳です…!我々の国のものも見てくださいませんか?」




さりげなく話を反らし、レドに助け船を出す。




レド「そ…そうだな!持ってくるよ。この国も負けてないぞ?」




その後もお土産の開封は続いたが、先ほどのようにレドにぐいぐいアピールはなくなった。




見事にサヤが防いだからである。




ルナ「あら、見ていないお土産が無くなってしまいました…」




サヤ「今日はありがとうございました!ルナ様、ナーガ様。我が国自慢のふかふかベッドでお眠りくださいませ…!」




ここで初めてナーガが口を開いた。




ナーガ「その…ありがとうございます…!いきなり来訪したのに、こんなにもおもてなしを…」




ルナ「ナーガ、黙ってらっしゃい!私たちは王族よ?当然のことだわ。」




ルナの権力至上主義は変わっていないようであった。




少しご機嫌斜めに、ルナは客室へ向かった。




ナーガ「あの…レド様、サヤ様…私の姉が失礼なことを…すみません…!サヤ様に至っては私の体調まできにしてくださって…」




サヤ「お気になさらず!私がそう思ったからした…それまでですわ!」




そう言うと、ナーガは笑顔を見せて一礼し…




ナーガ「サヤ様、明日お茶会をしませんか?お返事は明日で大丈夫です!ではまた…」




ナーガも自分の客室へ向かった。




誰もいなくなると、レドがサヤの肩に頭をのせる。




レド「…疲れた…サヤ、体調は大丈夫か…?」




サヤ「ふふ…レドったら…大丈夫だよ!ちょっとお義母様の部屋にお邪魔しただけ!」




レド「母上の部屋に?…後で話してくれ…」




二人は自分たちの部屋へと向かった。

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