EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)25

クライングフリーマン

歌舞伎役者誘拐

 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

 横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。大阪府警テロ対策室に移動。

 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

 幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

 花菱綾人所員・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の刑事。

 倉持悦司所員・・・南部興信所所員。

 横山鞭撻所員・・・南部興信所所員。元大阪府警刑事。

 馬場(金森)和子二尉・・・EITO東京本部メンバー。昔、事実婚をしていた、EITO隊員の1人の馬場と結婚した、。

 財前直巳一曹・・・怪人二十面相財前一郎の姪。EITO東京本部メンバー。

 中村浦野助・・・歌舞伎俳優。

 佐々一郎・・・大阪府警テロ対策本部所属。定年退職して南部興信所に転職した横山元警部補の後任として、EITO連絡係をしている。

 月山澄子・・・飲み屋の女将。幸田所員と『付き合って』いる。


 =====================================


 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


 午後2時。EITO大阪支部。会議室。

「歌舞伎俳優が誘拐?それって、警察の案件と違いますのん?」と、大前は素っ頓狂な声で言った。

「そうなんだよ。もう逆探知もセットしてあるんだけどね。誘拐されたのは、今売れっ子の中村浦野助だ。浦野助は吉本知事と懇意でね。誘拐されたことを、家人が知事に報告してしまったんだ。それで、万一の時を考えて、EITOにも協力要請を、ということになった。」と、小柳警視正が言った。

「コマンダー。取り敢えず、私が行くわ。いきなりぞろぞろ行くのもまずいでしょう。どこかで犯人が見ているかも知れないし。」と、一美が言った。

「じゃ、制服で来てくれ。捜査関係者には、単に協力捜査官と言っておく。」

 ディスプレイは消えた。一美は、すぐ出掛けた。

「身代金、大きいやろうなあ。映画やテレビでも引っ張りだこやし。」と南部が言った。

「テレビや映画出てても歌舞伎役者なんか?」と、総子は南部に言った。南部は、興信所の依頼の調査のついでに、ちょくちょく顔を出す。」

「本業は歌舞伎で、他はバイト、副業。歌舞伎だけで食われへんから、やないで。年に何回か舞台に出るだけで、政府からの援助金から給料が出る。売れてない役者は、その給料で何とかやりとりする。いや、違うな。売れてる役者は、それ以外の収入でがっぽり。その他の役者は、その給料でやりくりする。世襲社会やからなあ。その他の方は、一生そのた。そのた大勢の役は、ずっとその他大勢の役。昔、世襲やない『女形(オヤマ)』の役者さんが、随分苦労した話は有名やろ?」

「ふうん。ひょっとしたら、一生日の目がないこと恨んでいる人もいるかな?」

「総子は名探偵ね。あり得るわね、おおいに。もし、テロリストが唆していたら、ただの誘拐事件じゃないわ。」と三美は言った。

「闇サイト?また、アルフィーズ?」と二美は言った。

「そういう場合は、誘拐されて、誰が得か?って関係ないわね。」と、ぎんは言った。

「でも、調べた方がええな。コマンダー。ちょっと調べてみますわ。」と南部は言い、出て行った。「すんませーん、お願いしますぅ。」と、後ろから大前は声をかけた。

「まずは、動きがあるまで待機やな。」と大前が皆に言うと、「コマンダー。式は?」とジュンが言い出した。

「式?何の式?」「鈍感やナア。」と、ボソリとヘレンが言った。

 午後3時。浦野助の家。

 一美が到着すると、佐々ヤンこと佐々警部補が待っていた。

「事件の概要はこうです。浦野助は、早朝のテレビ3大阪の収録の後、一旦家に帰る事にしていた。ところが、玄関出たところに、急にワゴン車が暴走してきて、車から出てきた男達は、一緒にいた山木マネージャーを突き飛ばして、あっと言う間に浦野助を連れ去った。警備員が駆けつけたが、バックナンバーを見るのがやっとでした。車は盗難車で、大阪城公園に乗り捨てられていました。乗り換えたということでしょう。ところで、犯人から要求の電話がありました。明朝6時に、石ヶ辻公園に、現金1億円と『浦野助の家のお宝』を持って来い、ということです。1億円は会社で用意するそうです。お宝というのは、代々襲名してきた役者の台本やっそうです。」

「台本?なんで?」「テレビ1大阪の番組『たからもの探偵団』で鑑定され、20億円の値が付いた代物です。全部で10冊あります。1冊あたり1億円ですな。」

「分かりました。佐々ヤンは、このまま捜査本部に行って。多分、浦野助の交友関係を当たるだろうけど、何も出ないと思うわ。私は、南部興信所にスタッフの素行調査をさせるわ。それと、EITOに戻ります。」「了解しました、警部。」

 午後5時半。EITO大阪支部。会議室。

「浦野助の交友関係で、怪しい人物はいません。」と、ディスプレイに映った真壁が言った。

「スタッフの方ですが、マネージャーが二人います。下山栄吉と蒔田俊郎です。下山栄吉の方は、会社からの派遣です。正力は、実は会社組織で、『主演級俳優』には、会社のマネージャーが付きます。昔風に『付け人』と呼んでいるようですが。それと、蒔田の方ですが、一応東京事務所のマネージャーですが、浦野助の古い知り合いのようです。東京事務所は個人事務所です。慣習に逆らっているので、税務署が目を付けています。で、この蒔田は、東京にいる間だけやなく、大阪に戻って来た時も我が物顔で仕切っているようです。まるで番頭やナア、って佐々ヤンが言っていました。」と、横山が報告した。

「所長に相談して、中津興信所にもヘルプして貰うことにしました。この蒔田の身辺を。」と、幸田が言った。

「今、東京の高遠さんから電話があって、新幹線や飛行機の切符を手配したスタッフがいないか調べた方がエエ、って言って来た。」と大前が言うと、「分かりました。チケット屋を手分けして当たってみますわ。」と、幸田は返事をした。

「兄ちゃん、東京本部も動くの?」と総子が大前に尋ねた。

「取引が変な時間やろ?今からやったら、たっぷり時間あるし。伝子さんも高遠さんも、それが気にかかるらしい。応援はな。ダークレインボーやサンドシンドロームを名乗ってないから、取り敢えず、金森さんと、新人の財前さんが来てくれるらしい。良かったな、総子。」「うん。」

「ほな、みんな朝早いから、明日に備えて解散や。」大前の一言に皆会議室を出て行った。

「アルフィーズかなあ。名乗り上げてないけど。でも、あのChot GPTが絡んでいるような気がするわ。」と、三美は言った。

「私も。」「私も。」と一美と二美は賛同した。

 午後7時。総子のマンション。

 南部のスマホに電話がかかってきた。花ヤンこと花菱だ。

「所長。やっぱり高遠さんって神さんの化身でっせ。」「何や、いきなり。花ヤン、何か分かったんか。」「チケット屋、あたりまくって正解ですわ。JRやったら、おかみの力でしか分からへん。蒔田は、東京行きの新幹線の切符買ってました。取引が早朝なんは、午後に東京行く為・・・詰まり、犯人とグルまたは主犯です。」

 花菱の声を受話器に耳を寄せて聞いていた総子は、「成程。取引済んだら『高飛び』か。」と、頷いた。

「よう調べてくれた。さっき中津さんから電話あってな。東京事務所の『鍵』開いてたから、そっと入ったら、PCの電源入ってて、ディスプレイに『計画』が映し出されていたそうや。ラッキーやなあ。」

「所長。中津さん、荒っぽいことしはったんチャイますの?」と幸田が花菱の横から言った。

「まあ、その辺は『当局は一切関知しない』けどな。とにかく、闇サイトにアクセスしたのも、愛人に貢いで借金あったのもバレた。中津さん、お兄さんの中津警部に報告した。緊急事態やし、事件が進展したし、久保田管理官が何とか『侵入』やなくて『潜入』ということで処理してくれるらしい。ご苦労さん。後は警察とEITOに任せよう。引き上げてくれ。」「了解しました。」

 翌日。午前6時。石ヶ辻公園。

 石ヶ辻公園は、移転した新歌舞伎座から、程遠くない場所である。この場所の指定自体、おかしいと芦屋姉妹は思っていた。公園は、早朝の為、人気がない。

 公園の端に何故か『証明写真機』っぽいボックスがあった。

 二美と、EITOエンジェルズが待っていると、50人の一団が、現れた。

 そのリーダー格が、証明写真機から、浦野助を引っ張り出した。

 顔に頭巾を被せられて、椅子に縛られていた浦野助の脚の部分だけを外し、外に連れ出した。

「こいつの命が欲しければ、さっさと目印の所に金を置け。」リーダーは命令した。

 美智子や悦子達は、4つのケースを目印の上に置いた。2つは現金のジュラルミンケース。後の2つは『お宝の箱』だ。

 リーダーに命令された男とリーダーがケースの場所まで浦野助を連れて行き、中身を改めた。入っていたのは、パチンコ屋の景品だった。「偽物!」

「くそっ!!」リーダーは、浦野助にナイフを突き立てようとした。

 その時、浦野助の声が、グラウンドのスピーカーを通じて流れた。

「誰にナイフ、突きつけてんねん!」

 男は、驚いて、浦野助の頭巾を取った。「あ・・・違う。」

 ホバーバイクに乗った弥生の後ろに乗った浦野助が登場した。ホバーバイクとは、民間開発の『中に浮くバイク』をEITOが採用し、改造したバイクである。

「俺を誰やと思うてんねん!中村浦野助の得意は『早変わり』でござるよ。」

 頭巾を被っていた男は、浦野助とコンビを組んでいる、替え玉役者だった。

 男が持っていたナイフは、どこからか跳んできた、ブーメランに跳ばされ、額にメダルガトリング砲が撃ったメダルが当たった。

「メダルのデコピンの味はどうや?」一団の先頭で指揮を執っていた男に、『空から』降りて来た総子が言った。ブーメランは金森が投げ、メダルガトリング砲は、同じく『空から』降りて来た財前が撃ったのだ。

「くそ、やっちまえ!」一団のリーダーが言うと、弥生は浦野助をまたホバーバイクに乗せ、他のホバーバイクで到着した一美が替え玉役者を避難させた。

 三台目のホバーバイクでやって来た、真子が長波ホイッスルを吹いた。

 すると、身代金のケースの上にオスプレイから『浅黄幕』が落された。

 ジュンとぎんが、『2B弾』を一団に投げた。一団は驚いて散開した。

『2B弾』とは、半世紀以上前に流行って、事故が相次いで起きた田為、通産省の始動で製造中止をした、爆竹のような火薬のオモチャだ。

 一団が驚いて散開したのは。持っている機関銃や拳銃に引火する可能性がるからだ。

 この『2B弾』使用は実はどこにも許可を取っていない。南部や花菱や横山の昔話にヒントを得て大前の独断で開発、飽くまでも『インパクト』の為の数発である。

 EITOエンジェルズは、今度は『安心して』シュータ、ペッパーガン、水流ガン、ブーメラン、バトルスティックで挑んで行った。シュータとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。バトルスティックは3段階に変化させられる軽量のチタン製の棒で、水流ガンと呼ばれるものから発射されるのはグミ状に変化する水だ。大前が2B弾を利用したのは、この水流ガンでいつでも消火出来るからだ。

 闘いは30分で終った。50人の敵は、プロでは無かった。拳銃や機関銃が使えなくなると脆かった。総子は長波ホイッスルを吹いた。

 数分後。佐々警部補が連れて来た警官隊に一団は逮捕連行された。

 後は、エマージェンシーガールズに向かって、深々と頭を下げる浦野助と替え玉役者の姿があった。

 午前8時。EITO大阪支部。発射カタパルト付近。

「ごめんね、ふうちゃん。また今度ね。」と金森は総子に抱擁して言った。

「新人さんもご苦労さん。共闘する時はよろしゅうにな。」と、大前は財前に言った。

 オスプレイが、とんぼ返りに飛行体制に入り、やがて、空に消えた。

「また、近い内に共闘になるかも知れんな、総子。」大前は、優しく総子に言った。

 午後1時。大前のアパート。

 大前がカーテンを閉めると、紀子はもう準備万端だった。悩殺的なベビードールは、実は芦屋三美が買い与えたものだ。子供が出来たら、紀子はEITOを引退することになっている。二美が気を利かして大前に進言し、午前中に解散していた。

 午後1時。南部興信所。

「これ、少ないけど。」と、南部は横山に封筒を差し出した。

「すんません。」と、横山は素直に受けとった。

「サケの肴代くらいにはなるやろ。初仕事やのに、気張ってくれました。ありがとう。」と言って、南部は横山に頭を下げた。

「所長。中津興信所も活躍でしたね。」と倉持が言った。

「ああ。やっぱり闇サイトが関係していたらしい。蒔田は、闇サイトの協力で兵隊集めて、誘拐強奪をしようとした。罪はかなりのもんやで。家族によると、レプリカがあるにも関わらず、『お宝は本物でないと』と主張していたらしい。蒔田の女は、共犯として東京国際空港で取り押さえられた。実行したのは、蒔田でも唆したから共謀共同正犯やな。」

「レシピ通り、上手くいくのは料理だけや。」幸田が呟くと、「そう思って、籍入れといた。」と横から女が『婚姻届』の用紙の『コピー』を出した。

 驚いて、南部が見ると、月山澄子と幸田所員の婚姻届だった。

「区役所に書類を収めて、幸田は『年貢を納めた』訳やな。」南部がそう言った途端、幸田は気絶した。

 ―完―


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