第4話 ガールズ・ライフ

 私はバニーガール部で空気の様にくつろいでいた。そう、存在が空気なのだ。良くも悪くもバニーガール部に馴染んでいた。


「あー平和だ」


 私が呟いた瞬間である。部室内に警報が鳴りだす。


「て、敵襲!」


 麗奈さんが叫ぶと入口の戸がバンと開き、数人のバニーガール姿の女子達が入ってくる。


「ごきげんよう、青空北高の皆さん」

「な、何者!?」


 私が叫ぶが、その存在を知っている麗奈さんはジト目になり嫌悪感をむき出しにする。


「隣町の聖ミリオン学園のバニーガール部の人達です」


 テラさんが説明すると。私は思い出す。それはバチカン直営のミッション校だと。本当にバチカン直営なのかはかなり疑問だがそういう事になっている。


「全国で二校だけのバニーガール部ですもの仲良くしましょう」


 威圧的な態度で語り出したのは部長の『綾小路幸恵』であった。何故、名前がわかったからと言うとネームプレートをしていたからだ。


 しかし、バチカン直営のミッション校に何故、バニーガール部が有るのだ???


「そこの、小さいの。私達が何故、バチカン直営なのにバニーガールだと思ったでしょう」


 綾小路幸恵さんは私を指名して話し出す。


「この極東の変な国だから許されたのです」


 はああああ、さいですか……。


「さて、本題です。どんな願いもかなえる、伝説のバニーガールスーツを探しに来ました。噂ではこの学園にあるとか」

「知っていても、お前らには渡さない」

「まー怖い、いいでしょう、今日挨拶だけです」


 そう言うと聖ミニオン学園のメンバーは帰って行く。


「はぜ、はぜ、敵は去った」


 麗奈さんのこの焦りようは強敵の証であった。


***


 今日もバニーガール部でまったりとしている。その姿は相変わらず制服姿でバニーガールにならないでいた。


 「小夜さん、ゲームでもしましょうよ」


 麗奈さんがスーパーファ〇コンを取り出す。


「レトロゲーですか、それでソフトは?」


「ス〇Ⅱです」


 うむ、うむ、盛り上がりそうです。そして、ゲーム専用のブラウン管テレビを更に取り出して皆が集まる。


『昇竜拳』

『昇竜拳』

『昇竜拳』


「勝った!」


 私は向かうところ敵無しです。さて、残りの敵はテラさんだけです。


「ふふふふ、私はチュンリー使いのテラと呼ばれた者です、負ける気がしません」



 むむむむ、画面の中のキャラクターのオーラが違う。


 こやつ、できる……。


 ここは、また『昇竜拳』で決めてやる。しかし、チュンリーのスピードが速く技が決まらない。しだいにライフが削られたていき、普通に負ける。


 あああああああ、負けた……。


「脱げ、脱げ!!!」


 私が負けると皆が『脱げ』コールを始める。


 はあ?


 バニーガール姿では脱げないが制服なら脱げるとのめちゃくちゃな理由であった。


「脱げ、脱げ!!!」

「嫌です、私は純粋な乙女です」

「ダメです、敗者には制裁がつきものです」


 テラさんが厳しい言葉を投げつけます。仕方がない、ここはスカートを脱ぐか。

私がスカートを下すと。


「イヤ、イヤ、そこまで期待してないし」


 麗奈さんが困った様子で一言いうと、皆も同情的な眼差しで見ている。


 ふん!


 脱げと言ったから脱いだのです。ここの面子はチキン野郎です。結果、私の白いパンツは皆に晒されるのであった。


***


 うん?


 それは夜明け前の事であった。微睡の世界は白く誰も居ない。この微睡は……白い世界に一人だけだ。


 これが死なのかもしれない。


 私は白い世界をトボトボと歩く。


「誰か居ないの?」


 しかし、返事は無かった。昔、飼っていた。猫が死んだ時の気持ちに似ている。


 やがて、私に朝日が差し込み。目が覚める。


 嫌な夢……。


 私には友達が居ない。バニーガール部に勧誘されて忘れていたが。この孤独は育った環境に影響されている。それは孤独に免疫があるのだ。だから、友達を無理に求めない。


 私はスマホを取り出して、バニーガール部のメンバーのアドレスを確認する。このアドレスを消せば自由になれる。私は白い世界の住人だ、生と死の狭間で生きるのだ。


 すると、目覚まし時計が鳴り響く。


 日常の時間が来たのだ。結局、バニーガール部のメンバーのアドレスは消しそこねてしまった。


***


 その日の昼休みの事である。


 私は麗奈さんとテラさんに手作りお弁当を渡すと。その後に私はお弁当を食べ始める。


 不意に外を眺めると、そこには小鳥のさえずりが聞こえた。


 飛ぶ鳥は自由でいいな……。


「暗いな、キャラがかぶるから止めて」


 制服姿の麗奈さんはブツブツと文句を飛ばす。


 陰キャラは一人で十分だと言う。まったく、贅沢なバニーガールだ。


 私は麗奈にバニーガール姿になるように推奨する。お弁当を食べ終わると麗奈さんはバニーガール姿になる。


 麗奈さんの人格が変わり。何時ものバニーガール部になるのであった。


***


 ここはバニーガール部である。しかし、演劇準備室をかねている。学園祭にはバニーガール部のライブと演劇部の演劇が同じ機材で行われる。


 結果、機材がリハーサルの為に取り合いになる。そこで、どちらを優先させるかコイントスで決める。


「ぶ、部長、今年も我、バニーガール部に勝利をもたらして下さい」


 星美さんが部長である麗奈さんに期待を寄せる。


 私は相変わらず制服でバニーガール姿でない。しかし、こう言う時に一団となれる存在があると嬉しいものだ。


 審判はサッカー部の顧問の先生であった。


 そして、コインが上に投げられる。部長の麗奈さんは裏を選んでいた。


 コインは裏を示していて、麗奈さんはガッツポーズをする。


「ふ、ふふふふ、今年も勝ちですね」

「ああああ、負けた!!!」


 演劇部の部長さんが頭を抱える。


「さて、早速、スポットライトを使って、勝利の宴です」


 部屋の中が暗くなり、スポットライトが麗奈さんを照らす。しかし、セクシーな絵ずらだなぁ。


 それでいて、売りはガチなロックバンドだから凄い。

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