第3話

 “渦の森”には法則があるわ。

 森の中は開拓がされていない。道なき道を左右に生い茂る白樺しらかばの木を掻き分けるようにして進むしかないのだけれど、その中に“魔法”が掛けられている場所が幾つかあるの。

 魔法が掛けられていることに気づいたのは冒険者・ネオちゃんよ。彼の観察力・洞察力はとても優れているわ。それは人並み外れた特殊能力に近いものがあって、彼は白樺しらかばの根元に存在する僅かな“どよめき”を見つけることができるんですって。

 ……なんなのかしらね? どよめきって。ファンタジーとやらは奥深いわ。 


 次に魔導師・レインによって魔法の解析が行われる。その結果、白樺しらかばの根元に“時空改変の魔法”を掛けられていることがわかったの。

 そして、時空改変の主な成分は召還士・アレクが従える魔物、タイヨが発する特殊な光ととても相性が悪いことも解析できた。

 改変の魔法は光に反応すると最後の悪あがきを始めるの。

 私・ソラはさしずめ特攻隊長といったところかしら。

 とにかく身体能力が優れているの。

 私が魔法の暴走を抑え込みながら、アレクがタイヨに命を出し、タイヨが光を放出し続ける。

 シスター・ララの祈りによって怪我の傷を癒す。

 “時空改変の魔法”を一つ一つ解きながら先へと進んでいくの。



          ◇

 

 

「なあ……ソラ。今いる場所が、ネオが飲まれた場所だとしたら……元いた場所に戻ってるってことか?」

 岩場に腰掛け、パンをかじっているララが、呟くように尋ねる。

「……そうね」

 “渦の森”の特徴は人が渦そのものに飲まれる。

 それともう一つ、森そのものが迷路のようになっているの。いつの間にか元いた場所に戻っている、というなんとも厄介なものなの。

「──じゃあ、私もここに飲まれたら、ネオに会えるの?」

 ……あら、てっきりネオちゃんの片想いなのだと思っていたのに。案外、脈があるのかしら。

「ララ、ネオちゃんのことが大切なのね? けれど、ならば自分のことは大切にしなくちゃいけないわ」

「分かってるけど……夫婦だからな。アイツが無事か、心配なんだよ……」

「……まあ! まぁぁ!! そんなこと、一言も……」

 アニメでだって、そんな描写なかったわよね?

「“シスター”っていうのは、正確には“元シスター”だ。ネオと結婚したからな」

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