第11話 奏多、また助ける
軽い修行を終え、ダンジョンを出ようとしたその時だった――
『キュルルルルルルルルルルルル』
鳴き声と共に白い触手が地面から出現した。
ホワイトスライムだ。Sランクのモンスターで、スライムが進化した姿。
白い触手が特徴的で、触るとヌルヌルする。攻撃力はほとんどなく無害ではあるが、たまに変な液体をまき散らす。スライムの核を叩かないと消滅しないので意外とやっかいな相手。
「奏多さん! 私に任せてください! 修行の成果を見せます!」
「私も……! 魔力出量の制御試してみます!」
俺が村正を構えるまえに二人はホワイトスライムと対峙する。
「無害だけど、一応Sランクモンスターだ。油断は禁物だぞ」
すると、芽衣は自信満々に触手に向かって思い切り打撃を繰り出す。
「えいっ!!!!!!」
先ほど俺が教えた踏み込みだ。
明らかに前よりも威力が増している。
『キュル……』
打撃をうけたホワイトスライムは一瞬にして消滅する。
「芽衣ちゃん、すごい……Sランクモンスターを一発で……」
暗女も驚嘆の声を漏らしている。
「奏多さん! 見てください! Sランクのモンスターを倒しちゃいましたよ!」
芽衣が飛び跳ねながら笑みを浮かべる。
だが――
「芽衣ちゃん、後ろッ――」
『キュルルルルルルルルルルルル』
暗女が声をあげると同時に複数の触手が芽衣の後ろから現れる。
「えっ!? 倒したはずなのに!?」
そして、その触手は芽衣目がけて向かう。
「きゃあああああああああああああ」
白い液体をまき散らしながら芽衣の身体に複数の触手がまとわりついた。
「このっ! 放せっ!」
触手はさらに芽衣の身体の中へと忍び寄る。
首筋……太もも……スカートの中。
「や、やめて……んぁっ……やめ……」
なんとか抵抗するが、ホワイトスライムのぬめりによって無効化される。
「うぅ……どうしたら……」
暗女は杖を構え、スキルを発動するか迷っている。
芽衣を巻き込んでしまうのを恐れてからか……。
『キュルルルルルルルルルルルル』
一瞬の迷い。その瞬間に暗女の下から複数の触手。
「きゃああああああああああああ」
暗女も触手に捕らわれる。
触手が暗女の大きい胸を何度も撫でる。
「いやっ……そこは……だめ……っ」
二人の身体は白い液体で汚れている。
"なんだこれ……"
"ホワイトスライムさんもっとやれー!"
"なんか、いやらしいな"
"ホワイトスライムちょっとそこ変われ"
"超羨ましい……!"
"ホワイトスライムさん絶対わざとだろ"
"切り抜き班!出番ですよ!"
"任せろ!"
"俺の娘に何をするうううううううううううう!"
"えっ? 本部長配信見てて草"
"アカウント本物だわw"
"相変わらずの親バカだ"
コメントがなにやら荒れている。反応を見るに本部長が見に来たようだ。
これは早めに終わらせた方がよさそうだな。
ホワイトスライムの核は地下深くにある。それを破壊しないとこの触手は止まらない。
「それなら」
俺は、先ほど芽衣に教えた踏み込みの構えを取る。
「おらああああああああああああああ」
拳を真下目がけて放つ。
すると、半径百メートルほどの地面が一瞬にしてひび割れる。
『キュルルルルルルルルルルルル!?』
ホワイトスライムの触手が次々と消滅していき、地下深くでモンスターが消滅する音が響いた。
どうやら、核が消滅したようだ。
「大丈夫か、二人とも」
白い液体にまみれた二人に駆け寄る。
「だいひょうふでふ……」
「うぅぅ……へっぐ……私、もうお嫁にいけましぇん……」
意気消沈する芽衣と泣きじゃくる暗女。
ごめんな。もう少しはやく助けてあげればよかった……。
"っち、もう少し観たかったのに……"
"駄目だ変態だらけだここの配信"
"モンスターを応援したのは生まれた初めてだ"
"ホワイトスライムさん……逝ったか"
"ホワイトスライムさんグッジョブ!"
"安らかに眠れ"
"芽衣ちゃんと暗女ちゃん可哀想……"
"怖かったんだろうな"
"それにしてもあのホワイトスライムを一撃か"
"ほんと怪力は師匠譲りだな"
"規格外すぎだろ"
コメントも落ち着きを取り戻していた。
芽衣を危険な目に合わせたこと、本部長、怒ってないといいけど……。
俺は気を取り直して二人へ向きなおり、反省点を告げる。
「とりあえず、芽衣の打撃は素晴らしかったけど、油断をするのは悪い癖だな。あれぐらいの相手なら芽衣なら余裕のはずだ」
「はい……すみません」
芽衣が悲しげに俯く。
「暗女はまぁ、相性が悪かったな。だけど、魔力出量の制御を会得していれば芽衣を助けられた。味方と連携するためにもこれから頑張ろうな」
「はいっ、頑張りましゅ……」
「だけど、さっきの二人は頼もしかったぞ」
芽衣と暗女はお互いの顔を見つめあいながら笑顔を浮かべた。
今日の俺のアドバイスで何か掴んでくれればそれでなによりだ。
「それじゃあ、そろそろ帰るか!」
強化された村正を使う機会はなかったのが残念ではあったが、まぁいいか……。
ダンジョンを出ようとした次の瞬間――
『貴様が、北村奏多だな』
突如自分の名を呼ばれた俺は、ふと、後ろを振り返った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます