第12話 奏多、復讐される②
振り返るとそこには、元ダンジョン委員会の三島が佇んでいた。
忘れもしない。俺のことを『無能』扱いした張本人だ。
綺麗に整えられていた髪は乱れ、目も血走っている。
ダンジョン委員会の時の三島は見る影もない。
"あれ? どうしてこんなところに?"
"なんか不穏な雰囲気"
"やばくね?"
"笑ってる……"
"三島、何しにきたんだ?"
"奏多のことを探してたのか?"
コメントがざわつきだす。
「どう、したんですか? お久しぶりですね」
俺は平静を装いながら口を開く。
すると、三島は不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。
「奏多、俺はお前に復讐をしにきた」
「どういうことですか?」
「お前が探検家にならなければ今頃俺は、委員会の幹部の座に就くところだったんだ! この気持ちが分かるかよ!」
三島は目を血走らせながら勢いよく喋る。
「挙句の果てに住所は晒されマスコミがごみのように押し寄せてきやがる」
「なるほど、俺に復讐をしにきたというわけか……」
「その通り、ニュースにお前の名前が載るたびに、虫唾が走るんだよ。この『無能』が」
悪いことしてないのに……自業自得だろこれ。
"奏多なんにも悪くないじゃん"
"普通に迷惑過ぎて笑うんだけど"
"無能は三島だった"
"高学歴の癖に自分が悪いことに気づいてない馬鹿"
"配信にうつっちゃってるけど大丈夫か?"
"三島、見ってる~~~~~~~~?"
「『無能』、覚悟しろよ!」
三島は勢いよく俺に向かって斬りかかってくる。
さすが元ダンジョン委員会の社員なだけはある。動きはいい。
「よっと!」
俺はその攻撃をギリギリで
「くそがっ! 逃げるだけかこの『無能』が!」
元ダンジョン委員会の社員はほとんど元探検家で構成された組織。
たまに探検家に喧嘩を売られることがあるので、戦闘に秀でた人を雇っているらしい。
「へへっ、見てろよ」
すると、三島は不敵な笑みをこぼした。
何か企んでいるな。
『スキル―――――
身体に違和感……。斬撃とスキルが使えなくなったのか。
なるほど、三島のスキルか。
「お前のお得意の剣とスキルは俺には効かない。相性最悪だな! どうするよ! この無能が!」
三島は勝ち誇ったような顔を浮かべた。
『剣技――――
確認のために斬撃を三島目がけて繰り出すが、余裕の表情で受け止められる。
『
スキル無効を解除しようとするが身体にはとくに変化はない。
「ほんとうに発動しない……」
なるほど、これは厄介なスキルだ。
「だから効かねぇって言ってんだろうがよぉ! この無能が!」
三島が怒りに身を任せながら俺に向かってくる。
俺は村正を懐にしまい。その場で立ちすくむ。
「諦めたのか! 無能にはお似合いの最後だなぁ!」
"奏多!どうしたん?"
"マジ?これ負ける?"
"かなたああああああああああ"
"三島になんて負けるなよ!"
"にげろおおおおおおおおお"
"ぎゃあああああああああああ"
「おらああああああああああああああああああああああ」
三島の剣先が首元にかかると同時にその刀を指で受け止める。
「なっ! クッソ!」
三島は体勢を立て直そうとするが、もう遅い――。
「俺に勝てないのに『無能』『無能』うるさいなこの『無能』!」
俺は捨て台詞を吐きながら三島の顔面目がけて、右ストレートをくりだした。
「ぐぼぎゃああああああああああああああああああああああああ」
空中で五回程回転したあと、三島はその場で倒れた。
歯は折れ、鼻血で顔がめちゃくちゃになっている。
ずっと言われっぱなしだったから、たまには言い返してもいいよな。
「力の半分以下で殴ったつもりだったんだけど、ごめん……」
三島に向かって謝罪する。まぁ一応正当防衛でなんとかなるよな……。
師匠からスキルに頼らない戦い方を叩き込まれたおかげか打撃には多少自信がある。
「俺を倒したいんだったら、打撃無効化もしておくんだったな」
三島に向かって告げる。
"いや強すぎて草、村正とスキルがなくてもカナタは無敵"
"もうスキルいらんやん!"
"三島の顔大丈夫かこれ……"
"無能ストレートキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!"
"名言出たな"
"無能にはお似合いの最後だな"
"やっぱ奏多最強だな"
"三島ざまぁ"
"切り抜き班頼む!"
"『【朗報】無能三島、奏多の右ストレートによって戦闘不能』"
三島を蔑むコメントが勢いよく流れだす。
「おみゃえ! くしょが! しゅね! しゅね! むにょう! むにょう!」
涙を流しながら必死の思いで俺に訴えかける三島。
だが、歯が折れているせいで何を言っているのかさっぱり分からない。
「とりあえず、病院だなこりゃ……」
その後、配信を見ていた視聴者が、警察に通報。三島は傷害罪で逮捕された。顔の怪我は全治半年で、しばらくはまともに喋ることができないらしい。まぁ、自業自得だな。
伊原本部長は、迷惑をかけて申し訳ないと深く頭を下げてくれた。
ダンジョン委員会の度重なる不祥事によってまた色々めんどくさいことになりそうだと言っていたけど、まぁなんとか立て直すだろう。
こうして三島の復讐劇はあっけなく幕を閉じたのだった。
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