新・砂漠の賢者

みかみ

解説

本作と史実の相違。興味のある方は覗いてみてください

浅識なので、実際はもっとあるかもしれません。投稿に伴って、こちらの内容も増えてゆきます。


【第3王子プレヒルウォンメフ】

第3王子プレヒルウォンメフは、史実でも早世しているようですが(カエムワセトの前に皇太子になるまでには亡くなっている)、本作よりも長生きです。カエムワセトを助けて溺死した、というのは私の創作です。

御本人様が知ったらどついてきそうな創作ですが、王子様の広い心でお許し頂きたいゴメンナサイ!!


【ペル・ラムセス】

ラムセス二世がテーベからぺル・ラムセスに移ったのは、史実では、即位とともに遷都したとか、治世15年だとか、治世20年目だとか、諸説あります。ただし、ヒッタイトと和平条約を交わした時には、ラムセス二世はペル・ラムセスにいたことは確かだそうです。

本作は、ラムセス二世治世12年目(大体)。既に遷都済みの設定です。ご了承ください。



【巨石の運搬について】

古王国時代に巨石などの運搬でソリが使われていたというのは、事実です。水撒きで砂を固めていたという事実も、資料にありました。しかし、新王国時代のペル・ラムセスでソリが使われなくなり、水撒きの目的が誤認されるようになったというのは、私の勝手な創作です。新王国時代あたりのエジプトを描いた絵に、車輪付きの運搬台が描かれていたので、そこから着想を得ました。


【魔術師について】

実際、古代エジプトは、魔術大国だったそうです。

葬儀や神事だけでなく、医療、日常生活にまで魔術は欠かせなかったとか。

日本にもお守りとかお札とかありますが、そんな感覚だったのかな? と私なりに解釈しています。多分、現代日本よりは、魔術や呪術が人々にとって身近な存在だったのでしょう。

でも、魔術師一人が一個師団をぶっ潰せたなんてのは、私が作り出したデタラメです。発見されたパピルス(ウェストカー・パピルス?)には、ジェディという大魔術師が人の首をとってまたくっつけて生き返らせたとか、とんでもないお話が書かれてあるらしいですが、これがホントなわけ……ないですよね。


【神殿と葬儀について】

 メンフィスのプタハ大神殿は、メンフィス最大の神殿でした。また、メンフィスには他にも数多くの神様を祭った神殿がありました。

本作では、神殿の大小で葬儀費用も異なる事にしておりますが、これは私の勝手な想像です。実際のところは、すみません。調べてみたのですが、分りませんでした。ミイラを作る時には、どれだけお金を出せるかでランク分けされていたのは確かです。

神殿の力の大きさと葬儀費用が比例するのは、現代日本の仏教寺院事情を参考に設定しました。戒名料とかはお寺によっても違いますし。檀家制度もありますし。


【お金について】

この時代、貨幣制度はまだありませんでした。基本は物々交換です。金や銀や銅などのメタリアルと交換する事もあったそうですが、大抵はヤギなどの家畜や布、装飾品やパピルス紙などで支払っていました。本作にはまとめて『路銀』と書いてありますが、カエムワセトが持っている袋の中には、物々交換用の適当な装飾品などが入っていると考えて頂けたらと思います。


【第13王子メルエンプタハ】

メルエンプタハは大変強い運命を持った王子には違いありません。

しかし、産まれた時に占星術師から『あんたファラオになりまっせ』というような啓示を受けたかどうかは分かりません。

しかしもし、うっかり占星術師がこんな事言おうもんなら大騒ぎになります。

当時のエジプトの皇位継承権は、長男から順番に回ってきます。つまり、13番目の王子がファラオになると言うことは、12番目までの王子の死を意味します。

まさか親父が長生きし過ぎて息子達の方が待てないなんて、誰も思わないでしょう。大きな戦争や皇位争いなどの不吉な予言だと、皆が想像してしまうんじゃないでしょうか。


【死者蘇生について】

古代エジプトでは、人は五つの要素で成っていると考えられていたようです。

バー(魂)、カー(生命力または精神)、レン(名前)、シュウ(影)、ハー(体)もしくはイブ(心臓)。

ちなみにカーは墓の中の体に依存し、墓に捧げられた供物の生命力をエネルギーとして力を維持すると考えられていました。

死んでも栄養が欲しいって、古代エジプト人は大変ですね。日本でもお供えはしますが、古代エジプトの様に栄養を与える目的ではないですし。


さて、死者蘇生ですが、エジプトの神話や古典では死人が生き返るエピソードは幾つも見られます。オシリスは、ばらんばらんにされた体を嫁のイシスに集めてもらい、復活しています。ウエストカー・パピルスに出てくる大魔術師は、人間の頭をちょん切って、またそれを元に戻して蘇らせるという、ワケの分らん事をしているそうです。『カエムワセトとミイラ』という古典でも、ネフェルカプタハという魔術使いの王子が【トトの書】を用い、死んだ息子を一時的ではありますが蘇らせています(完全な蘇りではなく、すぐに遺体に戻りました)。

5つの要素がどれだけ集まっているかで、蘇生のクオリティーにも違いが出るってことなのかな? と私なりに解釈しているのですが。さてその考え方が合っているかどうかは分りません。なにせ、神話やおとぎ話ですし。

で、本作では「冥界の神オシリスの許しなしに生き返ると、次に死んだら来世(天国での生活)は望めないんだよ、永遠に暗黒を彷徨うんだよ」と魔術師リラが言っています。これは、私が勝手に作った設定なので、古代エジプトの資料のどこにもないお話です。

ちょっとヤヤコシイですが、本作の死者蘇生には、私なりの解釈と設定が盛り込まれている事を御承知下さい。


【神官と体毛】

本作では、フイ最高司祭は毎日全身の体毛を剃っているという設定です。

神官が体毛剃るのは、ひとえに清潔を保つ為でした。不浄を嫌っていたんです。基本的に、神官は禿頭が推奨されていたようです。

けれども、全ての神官が髪をはじめとした体毛を剃っていたわけではありませんでした。

その証拠に、デルエルメディーナのセンネジェムという人の墓には髭を生やした神官が描かれていますし、テーベの貴族の墓にも同じく髭を生やした神官や、髪をお下げに結った神官が描かれています。勿論、禿頭の神官もおりすが。他にも、アブシンベル大神殿にも、髪のある神官が描かれているそうです。

体毛を剃るか剃らないか、その違いに何があるのか私も勉強不足で分りません。スミマセン!




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