番外編第10話 ルプレヒトにも春が来る?
元々本編で閑話1として公開していたものです。コンテストの字数制限に引っ掛かりそうになって引っ込めていました。
時系列的には、本編第12話『絡み合う思惑』に続きます。
https://kakuyomu.jp/works/16817330665632681055/episodes/16817330665913645031
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ジークフリートは、夜会から自室に帰って正装も解かずにソファの上にドサッと身を投げて寝転がった。会場から付いてきたルプレヒトが向い側のソファに座っていてもお構いなしだ。
夜会の前にエスコートの事で母ヘルミネと口論してしまい、パオラもそれに便乗してジークフリートにべったりくっついてきてジークフリートは精神的にも肉体的にもぐったりだった。
「あーあ、美形の遊び人王子様が台無しですよ」
「何だよ、ルプレヒト。そんなの僕のことじゃない」
「もちろんジークフリート王太子殿下のことです。今日は殿下らしくなかった。どうしてパオラと2人きりで易々とテラスに出たんですか?万一あの女が殿下に襲われたとか嘘を吐いたら、大スキャンダルでしたよ。最悪、アマーリエ様との婚約を破棄されて彼女と婚約しなくちゃいけなかったかもしれません」
「そのぐらいでパオラなんぞと婚約しなきゃいけなくなるわけがない。僕の悪い噂なんてもうとっくに流れてる」
「それにしても不用心です。今まで2人きりになったのは男性同士か、女性だったら未亡人か既婚夫人、未婚でも阿婆擦れだと有名な女だけだったのに」
「お前、何気に僕のことを落としてるな。不敬極まりないぞ」
「今更ですよ。それより今日の失態はいったいどうしたんですか?」
「ツヴァイフェル伯爵家への潜入のためのお茶会がまだだからな。パオラをまだ誤魔化して伯爵を油断させないといけない。それに僕はお前に合図を送っただろう?それだけお前のことを信用してるんだ。感謝してくれ」
「本当ですか。とってつけた言い訳みたいに感じます」
「正直言えば、疲れててうまい言い訳が思いつけなかったんだよ。アマーリエの侍女、わざと知り合いの令嬢を5人続けて送り込んできやがって…意趣返しだな」
「そりゃわざとだな……やるなあ、その侍女。トロイ子爵令嬢でしたっけ?」
「なんだ?興味があるのか? 僕はああいう強気の女性は好みじゃないけど、お前は好きなんだな」
「ち、違います! 面白いと思っただけで……強いのはアマーリエ様も同じでしょう?」
「アマーリエはあんなんじゃない。かわいいよ」
ルプレヒトは、ジークフリートの目は曇っていると思った。アマーリエはまだ13歳なのに芯が強い。後2、3年も経ったらジルヴィアみたいになるんではとボソッと呟いたが、ジークフリートには聞こえなかったようだ。
「トロイ子爵令嬢は確かまだ独身で婚約者もいないぞ。20歳ぐらいだと思うな。26のお前にピッタリじゃないか?これを聞いたらお前の母上が喜ぶだろう」
「絶対に余計なことを言わないで下さい!うちの母が聞いたら次の日には相手の実家に突撃しますから」
「はいはい、言い訳はいいから」
ルプレヒトは、今まで我儘な王太子の補佐をするので精一杯だからと言って両親の勧める縁談をいつも断ってきた。ルプレヒトがそもそも特定の女性に興味を持つのが珍しい。ジークフリートは潜入調査が終わったらお節介を焼いてやろうと決意した。
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他にも番外編の構想はあるのですが、ここで一旦終わりとして完結表示にさせていただきます。他サイトで公開予定のR18改稿版ができたら、こちらでも新たな番外編を投稿します(もちろんカクヨムの制限の範囲での描写です)。気長に待っていただけると嬉しいです。(2024/2/29)
公爵令嬢は悲運の王子様を救いたい 田鶴 @Tazu_Apple
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