第6話 暴食


 『マキナ』に襲われそうになっていた民間人二人は、片方が幼子で、片方が二十代と思しき青年だった。てっきり兄妹なのかと思ったが、二人は似ていなかった。


 ――『魂』の輪郭が全然違う。

 ――遠縁でもなさそうだし、本当に赤の他人?


 リハナが立っている場所は、正確には地上ではなく地下へ繋がる階段を覆う天井だった。

 青年は彼女を見上げていた。警戒しているのか、まだ恐怖が消えていないのか。身構えるような格好で固まっていた。


 ――まあ、眼前のピンチから脱しただけで、今ここで安心されても困るんだけど。

 ――もしかして、この人も『異世界人否定派』なのかな?


 海を渡った先の国の人を拒絶気味になる日本人がいるように、当然ながら、地球人全員が異世界人を歓迎しているわけではなかった。地球人にとっての異世界人とは、おおむねが『マキナ』のイメージへと変換され、自動的に辛く険しい感情もよみがえってしまう。それもあって、他の世界に対して良い印象を持たない地球人のほうが多かった。今でこそ、異世界人が日本に永住する法律は作られていないが、だからこそ、作られる前に反対を強く訴える連中も少なくなかった。


 人類と大差ないはずのリハナも、そうした非難に曝される経験はあった。最大の特徴である耳と尻尾を出して街を歩こうものなら、露骨に罵声や害を与えてくる者は少ないものの、やはり一歩引いた眼で見られるのは避けられない。助けた青年も、異世界人である自分に恨み辛みを向けてくるのかもしれない、と思い、彼の口が開くのを待った。


「おい」青年が口を開いた。「下から来てるぞ! 早く逃げろ!」


 直後、背後から『マキナ』の足先が振り下ろされた。リハナは地面を蹴るように横へ避けた。ただ、その逃げた先にいつの間にか『マキナ』が潜んでいた。


 ――読み通りだよ!


 リハナは最初に振り下ろされた『マキナ』の足を掴んで回避の勢いを殺し、そのまま手足を使って『マキナ』の身体を這い上がった。その途中で、動きの邪魔になるハーネスは脱ぐように外していた。

 天井よりもより高い位置に登った彼女は、一瞬のうちに周囲を一瞥すると、地上に降り立った『マキナ』の何匹かが自分を見つけ向かってきていることを悟った。


 ――完全に登ってきたのは三体。

 ――壁を登る途中なのは二体、といったところか。


 合計で五体。


 ――この場にいるのはランクC『ソルジャー』。

 ――最低でも三体は巻き込める……!


 リハナは『マキナ』の上でクルリとひるがえった。丸い胴体の上で器用に足を動かし、近くにいた別個体の『マキナ』へと飛び移る。当然、奴らも己の頭上で飛び回る獲物をそのままにするはずもなく、鋭い足先を彼女へと突き出していく。

 しかし、動きそのものが単純としかいいようがなく、実戦経験の多い彼女ならば避けるのは容易かった。三匹の『マキナ』の身体を伝って、彼女は天井から飛び降りた。転がるように着地した先は、先ほど助けた幼子と青年がいる渋谷駅の入り口前だった。


 その直後――彼女がさっきまでいた天井で、オレンジ色の閃光が巻き起こる。爆音とそれをまともに食らった『マキナ』の破片が飛び散った。ハーネスを脱ぎ捨てたときにピンを抜いていた手榴弾が爆発したのだ。幸運にも、壁を登り切ったばかりの別個体もその余波をモロに受けていた。


 手榴弾ひとつを消費して、四匹の『マキナ』を仕留めることができたのだから、成果としては重畳だった。


 リハナは窮地を脱してからも警戒を解かなかった。未だに状況は最悪と言ってもいい。


 人の死体が転がっていた。お腹や心臓の辺りに大きな穴を開け、大量の血を流している。惨劇の他にならない。だが、それならまだマシかもしれない。さらに酷く惨たらしいものは、『マキナ』が移動するときに踏み潰していき、顔や四肢が破損しているものまであった。


 まるで、子供が興味を失くした玩具のように、そこらじゅうに汚れた抜け殻が散らかされていた。


「……っ!」リハナは奥歯を噛み締めた。


 ――これ以上の狼藉は許さない。


 腰にしまっていた短機関銃サブマシンガンを手に取った。


「おい」後ろから声をかけられた。


 見てみると、例の青年が幼子を抱えたまま佇んでいた。


「アンタ、『獣人デュミオン』か?」


「……はい。そうですが」


「まあ、この際アンタがなにじんでもいいんだが、とにかく大丈夫なのか。この数をまさか、一人で相手するつもりなのか?」


 青年の発言にリハナは少なからず困惑した。そんな言葉を吐かれたのは、過去を見通しても数えるぐらいもなかった。


 ――もしかして、心配してくれてる?


 自然と笑みがこぼれた。「……はい。問題ありません。貴方はその子を連れて、安全な場所に避難してください」


 力が湧いてくるような気がした。ただの言葉。そんなものに実用的な効果があるはずもない、とは解っているが――少なくとも地球人を守りたい思いは強化された。


 リハナは瞳だけを動かして、周囲の状況を分析する。


 ――数はおよそ20。そのうち、こちらを視認しているのが七体。


 次に、自身の装備に眼を落とした。


 ――短機関銃サブマシンガンのマガジンは残り三つ。

 ――手榴弾は今使って後ひとつ。

 ――装填されたハンドガンはあるけど、これは威力も低いし、弱点を正確に撃ち抜くでもしない限り、『マキナ』を破壊することはできない。

 ――他に戦闘に使えるとしたらナイフぐらいだけど、これに関してはハンドガン以下だ。

 ――後は妨害用の閃光手榴弾。

 ――……『秘密兵器』はまだ使いたくない。


 自身が可能とする行動と武器の攻撃力を総合し、頭の中で計算式を作る。20匹の『ソルジャー』を倒すのに、一体どれくらいの時間がかかるのか。


 ――逃げた民間人を追いかけている個体もいるだろうし、こいつらにあまり時間をかけたくない。十分で片を付けたいところ……!


 見通しはできた。温存すべき武器、使用する弾の量、立ち回り方――すべての準備が整った。


「………………」リハナは眼を瞑り、神経を研ぎ澄ました。左足を後ろに下げ、右足の膝を折り、クラウチングのようなポーズを取った。息を長く吸い込み、長く吐き出した。


 そして、一気に地面を蹴る。


 まず狙うのはこちらに向かってくる七体――ではない。


 リハナが接近を図ったのは、民間人を襲おうとしている個体だった。周囲を観察してみて、察するに逃げ遅れた民間人は駅へ殺到しているようだった。それを追いかけて、20匹のうちの何匹かが構内に潜り込もうとしているのが見えた。


 何より優先すべきは人命の救助。いくら相手が異世界人こちらを嫌っていようと、それは折り曲げられない。それがリハナの信念だった。


 ――それに、入り組んだ屋内でバラバラに行動されたら厄介だ。


 そうした判断の下、渋谷駅構内へ急ぐリハナだったが、その前に二匹の『ソルジャー』が立ちはだかった。リハナに狙いをつけていた、七匹のうちの二匹だ。『マキナ』に仲間意識があるのかは不明だが、他生物を襲うことが彼らにとっての生命活動に等しく、それを邪魔されないように行動するのは至って自然だった。


 しかし、それは彼女も織り込み済みだった。過去の戦闘経験からしても、敵の行動は予想内だった。


 リハナは迫ってくる『ソルジャー』に対し、落ち着いた動作で銃口を向けた。


 『ソルジャー』の装甲は、見た目こそ硬そうな外殻をしているが、その実は体内に流れている『魔力マナ』による恩恵だった。

 この『魔力マナ』は、『魔法』を使うのに必須な要素のひとつなのだが、『獣人デュミオン』はおよそ魔法と呼べるものを殆ど使わない。飽くまで体内に流れる『魔力マナ』による身体強化で戦うのが基本だった。


 なので、リハナの身体が弱いのは、『魔力マナ』の内包量が普通より少ないから、だと彼女自身が推測していた。


 そして、それは『ソルジャー』とて同じこと。彼らは『魔力マナ』の量が極端に少ない。だから攻撃方法も至極シンプルだった。『魔力マナ量に応じて固くなる装甲も、ナイフを刺しても通じるぐらいに柔らかかった。


 予想通り、短機関銃サブマシンガンの引き金を一瞬ひいただけだったが効果覿面だったようで、弾の温存をしながら二匹を屠ることに成功した。


 ――『ソルジャー』の恐ろしいところは、その尋常じゃない数と、脚部そのものが武器になっていること。

 ――ランクB以上と違って、魔法も使わないし、知能も高くない。

 ――私でもなんとかできる!


 悲鳴が聞こえた。駅に避難していた民間人が、一匹の『ソルジャー』に襲われそうになっていた。


 すかさず彼女は銃弾を発射した。空になったマガジンを捨て、携帯していた新しいマガジンに取り替える。


 経験の為せる見事な素早い作業だったが――その一瞬の隙が命取りになることもある。


 マガジンを装填し直している間に、ずっと彼女を付け狙っていた『ソルジャー』が背後に接近していた。

 隙をついた、というわけではなく、近くに来れたタイミングが、偶々そのときだったというだけだが、その偶然が彼女に不運を、そしてその『ソルジャー』に幸運をもたらした。


 『ソルジャー』は変わらぬ表情で淡々と足先を振り下ろし――――


 リハナが後ろ向きに構えたナイフによって防がれる。


 彼女は一度も振り返らなかった。交換したマガジンの調子を確かめながら、振り下ろされた攻撃の矛先を予知していたかのようにナイフの側面を直撃させ、滑り落とすように受け流した。今度こそ振り返ったときには、振り向きざまにナイフの先端を『ソルジャー』の大きな瞳に突き刺した。


 流石にそれだけで命は奪えなかったが、敵が攻撃を仕掛ける前に、刺したままナイフを捻り、柔らかい装甲を正面から後ろまで思いっきり切り裂くと、胴体に流れていた『魔力マナ』の線も色を失くした。


 リハナは身体能力が劣る分、知覚能力に長けていた。その大きな耳は、僅かな物音も聞き拾い、気配という曖昧な輪郭も手に取るように聞き分けることができた。


「みんなにはあるのに私はないとか、落ちこぼれとか、そんなことは関係ない――私は、自分のやれることをやるだけ」


 いつの間にか、残りの『ソルジャー』が余りなくこちらを注目していることに気が付いた。


「やっと理解しましたか」リハナはあえて敬語で呟いた。「そうです。貴方がたは弱者を蹂躙する強者ではない。私達に狩られる、淘汰されるべき滑稽な害獣だということを……!」


 民間人を追いかけることをやめ、同郷の仲間を殺しまわることで目立つ強敵に、しもの彼らも命の危険を感じたのだろう。

 戦地の敵兵全員の注意を惹きつけた。非常に好都合だ。ならば、もう、狭くて不意打ちされやすい駅構内にいる必要もない。


 かかってこい。マーダー小隊のみんなが追い付くまでに、全員血祭りにあげてやる。


 人を殺した報いを受けろ。


 リハナは短機関銃サブマシンガンを携え、駅の構内を出た。




【淘汰されるべき……なんだって?】




 その光景は、リハナの眼にスローモーションのように映った。

 渋谷駅の構内からでは死角の位置。その身ひとつを完全に屋外へ飛び出すまで気付かなかった。先述の通り、リハナは人並み外れた知覚能力を持つ。足音を立てていなかろうが、息を殺していようが、生き物にはその個体特有の気配がある。それを彼女は『魂』と呼んでいた。


 そんな彼女が『魂』を察知できなかった。


 『魂』は生物の大きさと比例していた。

 にも拘らず、駅の外で待っていた個体は、低く見積もっても二十メートルはあった。だが、輪郭はそこまで大きくなく、全体的にスマートな体形をしていた。長い腕に反し、足と思われるパーツが極端に短い。巨大な鎌状の刃物が幾つも生えた六つの翼で飛んでいた。背中側が少し曲がり、瞳のように発光する部分は竜の顔のような形をしていて、地球人が見れば『恐竜』を彷彿とさせるような姿形をしていた。


 ただ、リハナが愕然としたのは、その荒々しいデザインからではなかった。


 ――『マキナ』が!?


 『マキナ』が人語を介す、という話は聞いたことがなかったし、そういった個体にこれまで出会ったこともなかった。


 ランクCでも、ランクBでも、ランクAでもない。


 未知の個体。


【それじゃあエラくふんぞり返りながら、俺様のことも淘汰してくれ人間様よォ!】


 威勢のいい朗らかな声が電話の音声のように響き渡ると同時に、未知の『マキナ』が右腕を彼女に向けて振り下ろした。


 コンクリートが砕け、破片が飛び散る。


 ――あの細長い腕でなんという威力! それだけ『魔力マナ』が緻密……!


 その個体にも『ソルジャー』と同様、青く発光した線がいくつも装甲を走っていた。アレが『魔力マナ』の回路なのだろう。


 リハナは地面に刺さったままの右腕に足をかけた。


【お?】


 そして、勢いをつけるように次の足をより高い位置に引っ掛け、その要領を繰り返し――未知の『マキナ』の右腕を駆け上がっていく。


【ほォ! おもしれェ。やってみろや!】


 『魔力マナ』の量によって装甲の硬さを変化させる『マキナ』だが、ランクに関係なく硬さが同列の箇所が実はひとつだけある。


 それは、発光する瞳のような部分である。


 これらの情報は、すべて地球人の研究班が、死んだ『マキナ』や抵抗力がない『マキナ』を調べた結果で判明したことだ。発光する瞳のような部分は、流れる『魔力マナ』の終着点。人間にとっての心臓に近い部分だという。『魔力マナ』で駆動する彼らにとって、その部分は周囲の地形や生物の温度などを分析する役割も果たしているのではないか、と研究班は考察していた。


 確たる結論ではないが、リハナはその推測に従う他なかった。


 右腕を登り、瞳のある竜頭の部分を目指す。敵もその狙いに気付いたようで、刀のような翼を操って妨害してきた。正面、背面、側面、どこからかいつ迫りくるか解らない刃が両足を切り裂くように水平に薙ぎ払われる。


 ――こいつ、図体はデカいのにかなり素早い!

 ――集中しないと『魂』が察知できない……!


 リハナは感覚を研ぎ澄ますことによって、視覚の追いつかない攻撃をギリギリのところで躱していた。動きに身体が追いつかず、結んだ髪の先が数ミリだけ切られることもあった。


 ただ、対象が小さいのと、下手をすれば自身の腕すら切り落としかねない環境も相まったのだろう、攻撃の勢いは思ったよりも弱かった。


 腕を登り切ると、反撃はついに失くなった。肩を伝って、装甲の凹凸を掴みながら、敵の正面に陣取った。


【うお。いきなり真ん前にクンじゃねえよ。ビックリするじゃねえか】


 まるで、本物の人間かのように。

 まるで、感情があるかのように。


【つーか、姉ちゃん結構カワイイじゃねェーの】


 自然な反応。

 自然な言い回し。


 リハナはその声を聞く度に、心に忌々しさが湧いて出て仕方がなかった。


【こりゃ姉ちゃんからは相当に綺麗な断末魔が聞こえてきそうで楽しみだなァ!?】


「黙れえええぇぇええぇえええぇぇえ!!!」


 これまで何人もの罪なき人々を殺してきた人類の敵。

 生きるためなのか、人を見かけては淡々と殺してまわるシステムのような生物。


 リハナは彼らに殺される地球人を何人も見てきた。

 元々、強くもなく、『マキナ』との戦闘にしても経験で得たノウハウを活かして今の状態が出来上がっていった。


 ここまで至るのに、何人もの人間が犠牲となったことを考えると、悔しくて悔しくて仕方がなかった。


 『マキナ』に慈悲はない。それがリハナの出した結論だった。


 彼女はスカート下の太股に巻き付けていたレッグホルスターから、『秘密兵器』を取り出した。

 『秘密兵器』の正体とは、ブロークンバタフライと呼ばれるマグナム銃だった。


 某ゾンビゲームで最強の武器とされるマグナム銃。しかし、正確には、拳銃そのものが強いのではなく、装填できる弾薬が他よりも火薬量が多いために威力が高かった。


 銃の種類にもよるが、その威力はコンクリートブロックも容易に貫くことができる。


 彼女の装備品の中で最も殺傷力の高いそれを、未知の個体の瞳に押し付けるように密着させた。


 迷わず引き金をひいた。


 片手で撃ったためか、持っていたほうの手が痺れた。反動が大きく、衝撃に耐え切れなかったリハナの手が、掴んでいた『マキナ』の身体を手放してしまった。後ろに跳ね返される力に従うように、彼女が落下していく。


 しかし、彼女は慌てず、落ちながら秘密兵器を撃った結果を確認した。


【んーん。なーんか痒かったなー、イマ】


 結果は少し部分的にヒビが入ったぐらいで、本体の意識は痛くも痒くもない様子だった。


【ザーンネーンだったな。どうやら最後の切り札だったようだが、俺様はうんともすんとも言わなかったぞ。哀れな奴め。お前はこのまま落ちて死ぬだけだ。犬死にとはこのことだなア】


 彼女の秘密兵器は不発に終わった。ただ今の状態でぶつけた最高威力の武器も、奴にとっては蚊ほどにも思っていない。


 彼女の行動は徒労に終わった。


 ここで終わればの話だが────


「まだだ……!」


 刹那、未知の個体の眼前に何かが落ちてきた。


 黒い塊だった。


 それは――それこそが、彼女が最後に仕掛けた最後の切り札。


 彼女はこの瞬間だけは外してならない、と全神経を注ぎながら、ハンドガンをその黒い塊に向けて撃った。


 見事命中。


 その瞬間────


 物凄い爆音と爆炎が奴の顔の前で破裂した。その風圧がこちらにも届き、彼女の落下速度はさらに増す。


【うガアああァア!? な、なんじゃこりゃア!?】


 マグナム銃によって吹き飛ばされる直前、リハナは残りひとつの手榴弾を頭上に投げ飛ばしていた。

 それを起爆させることによって、マグナムで付けた傷に、ダメ押しとばかりに、文字通り爆発力の衝撃を食らわせようとしたのだ。 


 それで相手を仕留めしきる確証はなかった。寧ろ、不可能としか思っていなかった。投げた手榴弾が敵に当たる保証もないし、ましてやハンドガンで起爆させる自信もなかった。


 それでもやり遂げようという意識があったのは、忌々しい軽口を吐き続ける人類の敵に一矢報いたかったからだ。


 ざまあみろ、と。


 【ガアアァァア!!! 小娘ェ! よくもやりやがったなア!】


 爆破の煙で見えない向こう側で、未知の個体が感情任せに恨み言を連ねる。


 そして、今も落下しているであろう小娘に向かって、怒りに任せて右腕を横にいだ。まるで、邪魔な羽虫を払いのけるような動作だったが、それを直撃した彼女は砲弾のようなスピードでとなりのビルの窓を貫通した。


 それでも、彼女は勝ち誇った笑みを止めなかった。

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