第23話

 健一が息絶えた日の夕方、剣人は宇留美を呼び出した。

「所長には余計なコトば言わんでよか。しばらく職場に来んな」

「休んでどがんどうすると」

どがんかせろどうにかしろ。依頼人の諸石さんとこに顔ば出してもよかし、それこそ例の女子大生とキャッキャ言ってろ」

「よか。今、人と会いとぅなかけん。ってか佐野さんの顔も見たところで腹立つだけやし」

「おい青柳……」

 それから三日、宇留美はスーツを着たまま自宅に塞ぎ込んだ。状況把握というよりは自身の気持ちに整理がつかなかった。時間だけが流れ、ブレスレットと指輪をかたどるビーズの摩擦音に耳を傾けるのみ。やがてその音に導かれてスニーカーを履いた。

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