extra track

 ハシバさんは、城の前の広場で、騎士達に何をしていたのか聞かれていた。観光客らしい、当たり障りのない応対をするうちに、騎士達は気が済んだらしく、元の警備に戻っていく。

 やれやれ、とキャリーバッグを見下ろせば、バッグの口は開いている。中身がいない。

「やられた」

 逃げたのだ。中身の魔女の生首は。別に、ここで別れても問題はないのだが、猫に頼まれた手前、無事かどうかは心配ではある。

「まぁうまくやるだろう、魔女なんだし」

 気を取り直したハシバさんは、その日のうちに、いなくなった魔女マルメイソンが散らした伝令魔法で結果を知ったし、数日後、猫のところでマルメイソン本人にも出会った。無事に胴体と再開した生首は、にこやかにお礼を言って、よく分からないキラキラした小さな瓶詰めをくれた。

 不思議がるハシバさんを、猫はつついた。

「ピスラピスラだ、大事にしろよ」

「何なの、それ」

「よく分からんが珍しいんだ。フロレンスは、命とか光とか呼んでいたな」

「ふうん」

 魔女薬みたいなものかなと思い、ハシバさんはそれをキャリーバッグにしまい込んだ。後日、迷いの森などで妖精などと交渉するときに威力を発揮して、ハシバさんはとても感謝することになった。

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魔女マルメイソンと騎士と生首 せらひかり @hswelt

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