異世界帰りの男は知っていた、何事も力で解決した方が手っ取り早い～容赦しない事を覚えて来た男の蹂躙伝～

第1話 帰還した意識不明の男

　何を馬鹿げた話。と思われるかもしれないが、ついさっき目を覚ました俺は実のところ別の世界に居た。

「う、うぅん……」

　今ここに居る場所。どうやら病院のベッドみたいだな。

　どうしてこうなったかはわかる。

　何故なら俺は、本来ならば死んでいたはずの人間だからだ。

　この世界での俺の最後の記憶は、道端を歩いてる時に頭に強い衝撃を受けたことだ。

　痛みを感じる間もなく意識を失い、目を覚ました時は何もかもが景色が変わっていた

　テレビで見た日本の田舎の風景に近いようなそんな雰囲気を受けるが、そこに住む人間は明らかに日本人ではなかった。

　ある日俺は異世界の寂れた村に飛ばされたのである。

　よくある小説のような始まりだったが、それが現実に自分の目に怒れば残念なことに冷静に対処することはできない。強い焦りと不安感に駆られ、意味もなくわめき散らしていたそんな自分が懐かしい、そう懐かしいんだ。

　本来ならあれは二年ほど前の記憶、たまたまそこに居た勇者を名乗る少年が俺が目の前に現れるの目撃していた。

　歳も近いし、もっと言えば俺よりも顔のいい男に醜態を晒すなんて本来なら恥でしかないが、そんな恥を感じるよりも自分の身の安全、そして置かれた状況を把握することが何よりも優先順位が上だった。

　俺がどういう理由で現れたのか。それは分からないが、魔王を倒すために世界中を旅しているという彼の事情、それに同行すれば何かしらの手がかりがつかめる可能性がある、という話を聞かされた。

　命の取り合いをするような旅に喧嘩の一つもしたことがない俺が同行すれば最悪命を落とすことになりかねない。しかしだ、他に手がかりが無く、知人の一人もいない村で生きていくにはあまりにも心細かった。

　俺なりに何かしらの役に立つかもしれないし、そういう理由で旅に同行することになった。無論最初は足手まといもいいところだったが。

　それでも修羅場をいくつも潜り抜け、仲間を増やし、その仲間たちに助けられながらも、なんと俺は俺だけにしかできない能力に目覚めたのだ。

　死力を尽くして仲間たちと共に魔王打倒という目標をクリアした俺たち。結局俺が元の世界に戻る方法を見つけることはできなかったが、その頃になるともうこっちで生きていくのも悪くないかなとか思っていたんだ。

　そんなことを考えていたんだけれど、魔王打倒を成した際、女神を名乗る人物が現れ、これまでの功績を称え俺のいた地球との次元をつないでくれるとのこと。

　名残惜しかったが、やはり向こうでの人間関係等をないがしろにしたままこちらに残るというのも人としてどうかとも思い、情を残すことになったが勇者たちと別れをつけ女神の手を取った。

　その瞬間光が溢れ……。

　そして今病院のベッドで目を覚ました。

「波乱万丈の人生だな。自分で言うこっちゃねえが」

　誰かに言ったところで信じてくれるはずも無し、意識不明の間に見た夢として片付けられるだけだろう。

　だったらこの体験を元に小説でも書くか？　なんて考えも一瞬浮かんだが、こっちの世界じゃありふれたファンタジーとして見向きもされないだろうな。

「め、目が覚めたの？　……先生、今すぐ来てください！！　203号室の患者さんが目を覚ましました！！！」

　部屋に入ってきたナースが驚き、すぐさまナースコールに連絡。その迅速な行動に思わず感心してしまう俺は、当事者のくせして他人事のようだ。修羅場を潜り過ぎたせいだろうか？

　それからは目まぐるしかった。

　まず先生がやってきた。そして病院から連絡が行ったのだろう、親がすっとんで来た。母親に泣きつかれた時はさすがに焦った。この経験は初めてだし何より申し訳がなかったし。

　それから検査を受け、筋肉の固まった体をまともに動かすためにリハビリを受けた。

　そういえばこっちだと、事故に遭ってからまだ一ヶ月しか経ってないらしいな。

　事故の原因は取り替え中に落ちた看板だったらしい。

　まあ何にせよ、リハビリを開始して今日で一ヶ月。思ったように体が動くようになった。

　そんなこんなで今は退院して一週間後。

　ものすごく久しぶりに腕を通した制服。懐かしい着心地だ。意外と悪くないな。

「それじゃあ行ってきます」

「大丈夫？　別にもっとリハビリしてからでも……」

「いいって。それにもし体調が悪くなったら早退するからさ、じゃ」

　心配性になってしまった母を振り切って、家を飛び出した。

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