子供達と神々の神楽 ～月の章～

光天の守護者 鳳皇丸

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）、フォールダイブキック！」

　　ガッシャーン

　鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は太（たい）耀（よう）のこの命（めい）令（れい）と同（どう）時（じ）に、更（さら）に高（こう）度（ど）に飛（ひ）翔（しょう）し、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの胴（どう）体（たい）に上（うえ）の方（ほう）から蹴（け）りを入（い）れた。

「蹴（け）り飛（と）ばせない！」

「甘（あま）いわ！」

　しかし火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストは、身体（からだ）を大（おお）きく振（ふ）って鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）を吹（ふ）き飛（と）ばす。

「わっ！　スセリ、危（あぶ）ないから離（はな）れてろ」

　太（たい）耀（よう）がそう恵（え）理（り）花（か）に言（い）うと、恵（え）理（り）花（か）は心（しん）配（ぱい）そうに言（い）い返（かえ）す。

「でも……」

　そんな恵（え）理（り）花（か）に、スセリが念話（ねんわ）で言（こと）葉（ば）を続（つづ）ける。

（「大（だい）丈（じょう）夫（ぶ）よ、それに貴女（あなた）に何（なに）かあったら元（もと）も子（こ）もない」）

　そう言（い）われても納（なっ）得（とく）していない恵（え）理（り）花（か）の身体（からだ）を、スセリは強（ごう）引（いん）に鳳（ほう）凰（おう）丸（まる）と火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストから遠（とう）退（の）かせる。

　一（いっ）方（ぽう）鳳皇丸（ホウオウマル）と火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストは、互（たが）いを警（けい）戒（かい）しながら空（そら）を飛（ひ）行（こう）していた。

（天（てん）狗（ぐ）丸（まる）の力（ちから）が強（つよ）くなってる？　だったら……）

　そう考（かんが）えた太（たい）耀（よう）は、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）に命（めい）令（れい）をする。

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの翼（つばさ）を狙（ねら）え。言（い）くぞ、ソーラーカッター！」

「何（なに）をする気（き）か知（し）らんが、受（う）けてくれよう！」

　天（てん）狗（ぐ）丸（まる）がそう言（い）っている間（あいだ）に、両（りょう）翼（よく）に日（にっ）光（こう）エネルギーを込（こ）めた鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）の翼（つばさ）は、金（こん）色（じき）に輝（かがや）き、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの片（かた）方（ほう）の翼（つばさ）目（め）掛（が）けて突（つ）っ込（こ）んで行（い）く。

　　ガッシャーン

　そしてその金（こん）色（じき）の翼（つばさ）で、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの片（かた）方（ほう）の翼（つばさ）を切（せつ）断（だん）した。

「何（なん）と、翼（つばさ）が！」

　天（てん）狗（ぐ）丸（まる）は真面目（まじめ）に驚（おどろ）き考（かんが）える。

（日（ひ）の力（ちから）で儂（わし）の力（ちから）を祓（はら）うとは！　……いや流石（さすが）に考（かんが）え過（す）ぎか、とは言（い）え……）

　 鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は空（くう）中（ちゅう）でUターン。

　太（たい）耀（よう）は片（かた）方（ほう）の翼（つばさ）が切（き）り取（と）られた、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの姿（すがた）を確認（かくにん）して言（い）う。

「良（い）いぞ 鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）、もう一（いち）度（ど）！」

　そう言（い）って太（たい）耀（よう）はもう一（いち）度（ど）、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストに攻（こう）撃（げき）を仕（し）掛（か）けようとするが……

「なめるな、小（こ）僧（ぞう）！」

　　ガシャリ

　　　ドゴーン

　天（てん）狗（ぐ）丸（まる）にそう言（い）われて、今（こん）度（ど）の攻（こう）撃（げき）は火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストに躱（かわ）された上（うえ）で、更（さら）に足（あし）を嘴（くちばし）で捕（つか）まれ、カウンターで学（がっ）校（こう）の屋（おく）上（じょう）に再（さい）度（ど）鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は叩（たた）き付（つ）けられた。

　その衝（しょう）撃（げき）で、小（しょう）学（がっ）校（こう）の一（いち）部（ぶ）が崩（ほう）壊（かい）した。

（太（たい）耀（よう）君（くん）！）

　驚（おどろ）いた恵（え）理（り）花（か）は慌（あわ）てて鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）の所（ところ）へ向（む）かい、スセリも驚（おどろ）いて天（てん）狗（ぐ）丸（まる）に念（ねん）話（わ）で怒（ど）鳴（な）る。

（「やり過（す）ぎよサルタ！」）

　★★★★

　子（こ）供（ども）達（たち）が集（あつ）まっているグラウンド。

　鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）の落（らっ）下（か）の衝（しょう）撃（げき）で学（がっ）校（こう）が壊（こわ）れたのを見（み）て、葉（よう）司（じ）と北（ほく）斗（と）は結（けっ）界（かい）に駆（か）け寄（よ）って太（たい）耀（よう）に向（む）かって言（い）う。

「おい、大（だい）丈（じょう）夫（ぶ）か！」

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）！」

　叫（さけ）ぶ二（ふ）人（たり）を見（み）付（つ）けた渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）は言（い）う。

「二（ふ）人（たり）共（とも）、危（あぶ）ないから離（はな）れろ！」

　しかし葉（よう）司（じ）も北（ほく）斗（と）も渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）の言（こと）葉（ば）通（どお）り、結（けっ）界（かい）から離（はな）れる気（き）は更（さら）々（さら）無（な）い。

　６、７、８、９、10秒（びょう）経（た）っても鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は動（うご）く気（け）気配（はい）を見（み）せず、不（ふ）思（し）議（ぎ）に思（おも）った葉（よう）司（じ）はある事（こと）を考（かんが）え北（ほく）斗（と）に言（い）う。

「もしかしてアイツ、気（き）を失（うしな）ってんじゃ？」

「そんな、どうしよう！」

　北（ほく）斗（と）がそう言（こと）葉（ば）を返（かえ）しオドオドしていると、渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）が葉（よう）司（じ）と北（ほく）斗（と）に怒（ど）鳴（な）る。

「二（ふ）人（たり）共（とも）、離（はな）れろと……」

　そう言（い）って二（ふ）人（たり）の元（もと）にやって来（き）た渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）が、二（ふ）人（たり）を結（けっ）界（かい）から強（ごう）引（いん）に遠（とお）ざけようとすると、葉（よう）司（じ）がそれを振（ふ）り解（ほど）き慌（あわ）てながら言（い）う。

「今（いま）はそれ所（どころ）じゃねえ。た……鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）が気（き）を失（うし）なっているかも知（し）んねぇんだ！」

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）って、あの赤（あか）い鳥（とり）ロボットの事（こと）だよな？」

　渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）はそう言（い）って、葉（よう）司（じ）や北（ほく）斗（と）と共（とも）に鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）に目（め）を向（む）ける。

　鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストから攻（こう）撃（げき）を仕（し）掛（か）けられており、その攻（こう）撃（げき）から鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）を恵（え）理（り）花（か）が結（けっ）界（かい）を張（は）って護（まも）っていた。

（あのままだと恵（え）理（り）花（か）も不味（まず）い、早（はや）い所（ところ）太（たい）耀（よう）を起（お）こさねぇと……）

（あのままだと恵（え）理（り）花（か）ちゃんも危（あぶ）ない、早（はや）く太（たい）耀（よう）君（くん）を起（お）こさないと……）

　葉（よう）司（じ）と北（ほく）斗（と）はそう思（おも）い、ほぼ同（どう）時（じ）に渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）に言（い）う。

「「先（せん）生（せい）、手（て）伝（つだ）って！」」

　そう二（ふ）人（たり）同（どう）時（じ）に言（い）われた渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）は、驚（おどろ）いて反（はん）射（しゃ）的（てき）に質（しつ）問（もん）する。

「何（なに）をだ？」

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）を起（お）こすのをだよ！」

　葉（よう）司（じ）がそう言（い）うと、北（ほく）斗（と）も続（つづ）けて言（い）う。

「気（き）を失（うしな）ってるんなら、呼（よ）びかければ起（お）きるはず！」

　渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）は少（すこ）し考（かんが）えたが、葉（よう）司（じ）と北（ほく）斗（と）が余（あま）りに真（しん）剣（けん）な顔（かお）をしているので、覚（かく）悟（ご）を決（き）める。

（……恥（はず）かしくない、恥（はず）かしくない）

　そう心（こころ）の中（なか）で自（じ）分（ぶん）に言（い）い聞（き）かせた渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）は、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）に向（む）かって言（い）う。

「起（お）きろ鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）！」

　その声（こえ）はかなり大（おお）きく、他（た）の生（せい）徒（と）や先（せん）生（せい）達（たち）の注（ちゅう）目（もく）を集（あつ）めた。

「起（お）きろ鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）！」

「目（め）を覚（さ）まして！」

　続（つづ）けて葉（よう）司（じ）と北（ほく）斗（と）も大（おお）声（ごえ）で叫（さけ）ぶと、それと見（み）ていた子（こ）供（ども）達（たち）がざわめき出（だ）す。

「渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）、コ（・）レ（・）は一（いっ）体（たい）？」

　一（ひと）人（り）の先（せん）生（せい）が、渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）に近（ちか）寄（よ）って来（き）てそう聞（き）くと、渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）は少（すこ）し恥（は）ずかしそうに答（こた）える。

「生（せい）徒（と）に頼（たの）まれまして。あの鳥（とり）型（がた）ロボット気（き）を失（うし）なってるみたいなので、目（め）を覚（さ）ますようにと……」

　　ざわざわ

　　　ざわざわ

　渡（わた）辺（なべ）先（せん）生（せい）の説（せつ）明（めい）で、子（こ）供（ども）達（たち）は更（さら）にざわめいて……

　★★★★

（……頭（あたま）がくらくらする）

　太（たい）耀（よう）は気（き）が付（つ）きそう思（おも）うと、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は恵（え）理（り）花（か）に結（けっ）界（かい）で護（まも）られていて、更（さら）に離（はな）れた所（ところ）から声（こえ）が聞（き）こえている。

　それは、大人（おとな）と子（こ）供（ども）の入（い）り混（ま）じった声（こえ）。

「起（お）きて！」

「戦（たたか）え！」

「ガンバって！」

　不（ふ）思（し）議（ぎ）に思（おも）った太（たい）耀（よう）は、スセリに聞（き）く。

「スセリ、一（いっ）体（たい）何（なに）が起（お）きたんだ？」

「良（よ）かった……気（き）が付（つ）いて、怪（け）我（が）は無（な）い？」

　その声（こえ）は、本（ほん）当（とう）に心（しん）配（ぱい）そう。

「怪（け）我（が）しないって言（い）ったのは、スセリだけど？」

　そう返（かえ）した太（たい）耀（よう）に、スセリは少（すこ）し嬉（うれ）しそうに言（い）い返（かえ）す。

「ゴメンなさい、そうだったわね……　鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）、コ（・）レ（・）は貴方（あなた）への応（おう）援（えん）よ」

　太（たい）耀（よう）はそう言（い）われ、嬉（うれ）しさが込（こ）み上（あ）げて来（く）る。

「学（がっ）校（こう）壊（こわ）す奴（やつ）なんてやっつけろ！」

「鳥（とり）さんガンバレ！」

「悪（わる）い奴（やつ）に負（ま）けんな！」

　学（がっ）校（こう）の皆（みんな）の声（せい）援（えん）に耳を傾（かたむ）けながら、スセリは思（おも）う。

（サルタが加（か）減（げん）を失（しっ）敗（ぱい）した時（とき）は本（ほん）当（とう）に心（しん）配（ぱい）したけど、良（い）い方（ほう）に転（ころ）んだみたいね）

「皆（みんな）、貴方（あなた）が負（ま）けるとは思（おも）ってはいないわよ？」

　スセリにそう言（い）われ、太（たい）耀（よう）は自（じ）信（しん）満（まん）々（まん）に言（い）う。

「当（あ）たり前（まえ）さ、まぁ見（み）ててくれ」

（とは言（い）え、どうする……　翼（つばさ）を片（かた）方（ほう）切（き）り落（お）とされても飛（と）んでるって事（こと）は、本（ほん）体（たい）をバラバラにでもしないと動（うご）きは止（と）められない。でもさっきみたいにカウンターを喰（く）らったら…………　そうだ目（め）眩（くら）まし！）

　太（たい）耀（よう）の頭（あたま）の中（なか）に、少（しょう）年（ねん）漫（まん）画（が）のある技（わざ）が浮（うか）び上（あ）がり、太（たい）耀（よう）は鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）に命（めい）令（れい）する。

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）。スセリの結（けっ）界（かい）が消（き）えたら、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの首（くび）にソーラーカッター。ただし攻（こう）撃（げき）前（まえ）に協（きょう）力（りょく）な光（ひかり）の目（め）眩（くら）まし。それから……」

　そこまで言（い）って太（たい）耀（よう）は、今（こん）度（ど）は恵（え）理（り）花（か）に向（む）かって恥（はず）かしそうに言（い）う。

「さっきは危（あぶ）ないから離（はな）れてろ何（なん）て、偉（えら）そうな事（こと）言（い）ってゴメン。ありがとうスセリ、今（こん）度（ど）こそ危（あぶ）ないから退（ど）いてくれ」

　太（たい）耀（よう）の今（いま）の言（こと）葉（ば）が、自（じ）分（ぶん）へ向（む）けたモノだと理（り）解（かい）した恵（え）理（り）花（か）は、太（たい）耀（よう）に見（み）える様（よう）に頷（うなず）きその場（ば）を離（はな）れる。

　一（いっ）方（ぽう）で鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）への目（め）眩（くら）ましの命（めい）令（れい）は、天（てん）狗（ぐ）丸（まる）にも聞（き）こえていた為（ため）、天（てん）狗（ぐ）丸（まる）は考（かんが）えている。

（成（な）る程（ほど）、目（め）眩（くら）ましを受（う）けても防（ふせ）いでも相（あい）手（て）を見（み）失（うしな）う。そろそろ引（ひ）き際（きわ）だな……）

　鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は体（たい）勢（せい）を立（た）て直（なお）し、恵（え）理（り）花（か）が結（けっ）界（かい）を解（と）くと同（どう）時（じ）に、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストに突（つ）っ込（こ）んで行（い）く。

　次（つぎ）の瞬（しゅん）間（かん）、一（いっ）瞬（しゅん）火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストは光（ひか）りに包（つつ）まれた。

「くっ、彼奴（あいつ）は何所（どこ）に！」

　光（ひか）りが消（き）えると、慌（あわ）てふためいた様（さま）に天（てん）狗（ぐ）丸（まる）がそう言（い）い、次（つぎ）の瞬（しゅん）間（かん）火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの首（くび）は、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）のソーラーカッターにより本（ほん）体（たい）と切（き）り離（はな）される。

　　ガッシャーン

　その首（くび）を、両（りょう）足（あし）で掴（つ）んだ鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は屋（おく）上（じょう）の出（で）入（い）り口（ぐち）近（ちか）くに居（い）る、恵（え）理（り）花（か）の元（もと）へと運（はこ）んだ。

　屋（おく）上（じょう）に火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの首（くび）を置（お）くと、太（たい）耀（よう）は恵（え）理（り）花（か）に言（い）う。

「スセリ、校（こう）長（ちょう）先（せん）生（せい）を！」

　太（たい）耀（よう）の言（こと）葉（ば）の後（あと）、スセリは恵（え）理（り）花（か）に念（ねん）話（わ）で言（い）う。

（「恵（え）理（り）花（か）、私（わたし）の言（い）う呪（じゅ）文（もん）を唱（とな）えて」）

「オーリゴー、アニムス、アエテルヌス、プラエタリタ、レディーレ！」

　恵（え）理（り）花（か）がスセリの言（い）う呪（じゅ）文（もん）を続（つづ）けて唱（とな）えると、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの首（くび）は校（こう）長（ちょう）先（せん）生（せい）へと戻（もど）って行（い）く。

「良（よ）かった、後（あと）は……」

　そう太（たい）耀（よう）が言（い）って、振（ふ）り向（む）いた鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）の視（し）界（かい）、役（やく）40メートル程（ほど）先（さき）には火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストが居（い）る。

「これで終（お）わりだ天（てん）狗（ぐ）丸（まる）！」

　太（たい）耀（よう）がそう言（い）うと、天（てん）狗（ぐ）丸（まる）が言（こと）葉（ば）を返（かえ）す。

「人（ひと）質（じち）が居（い）無（な）くなったから勝（か）てると……――」

　しかし天（てん）狗（ぐ）丸（まる）の言（こと）葉（ば）を無（む）視（し）し、太（たい）耀（よう）は鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）に命（めい）令（れい）する。

「目（もく）標（ひょう）は火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイスト。鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）、サンライトレイ！」

　太（たい）耀（よう）の言（こと）葉（ば）と共（とも）に、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストは集（しゅう）約（やく）された太（たい）陽（よう）光（こう）の光（ひか）りの柱（はしら）に包（つつ）まれた。

　校（こう）舎（しゃ）のサンライトレイの当（あ）たっている部（ぶ）文（ぶん）は、ミシミシ音（おと）を立（た）てながら壊（こわ）れて行（い）く。

「ぬっわぁぁぁ！」

　天（てん）狗（ぐ）丸（まる）は光（ひか）りに見（み）を焼（や）かれながら、そう叫（さけ）び思（おも）う。

（収（しゅう）穫（かく）は上（じょう）々（じょう）か。加（か）減（げん）を誤（あやま）った事（こと）は詫（わ）びよう少（しょう）年（ねん））

　サンライトレイが消（き）えると、火（カ）流（ル）羅（ラ）ガイストの姿（すがた）は無（な）い。

「勝（か）ったのか？」

　翔（かける）の問（と）いに答（こた）える様（よう）に、鎮（しずめ）守（まもり）の結（けっ）界（かい）が消（き）えていき、壊（こわ）れた校（こう）舎（しゃ）が元（もと）に戻（もど）って行（い）く。

　スセリは太（たい）耀（よう）に言（い）う。

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）、勝（しょう）者（しゃ）の名（な）乗（の）りを上（あ）げなさい。応（おう）援（えん）してくれた皆（みんな）の為（ため）にも」

　そう言（い）われた太（たい）耀（よう）は、スセリの言（こと）葉（ば）を不（ふ）思（し）議（ぎ）に思（おも）うが、天（てん）狗（ぐ）丸（まる）の言（こと）葉（ば）を思（おも）い出（だ）し納（なっ）得（とく）した。

「鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）、皆（みんな）の前（まえ）に行（い）くぞ！」

　鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は太（たい）耀（よう）の言（こと）葉（ば）を聞（き）くと、グラウンド上（じょう）空（くう）に移（い）動（どう）し、高（こう）度（ど）を落（お）として生（せい）徒（と）や先（せん）生（せい）達（たち）に近（ちか）付（づ）く。

　生（せい）徒（と）や先（せん）生（せい）達（たち）は、壊（こわ）れた学（がっ）校（こう）が元（もと）に戻（もど）ったので驚（おどろ）いている。

　太（たい）耀（よう）は、なるべく声（こわ）色（いろ）を変（か）えて言（い）う。

「ありがとう皆（みんな）、天（てん）狗（ぐ）丸（まる）は僕（ぼく）がやっつけた。もう心（しん）配（ぱい）しなくてもいい」

　それを聞（き）いた生（せい）徒（と）や先（せん）生（せい）達（たち）は一斉（いっせい）に喜（よろこ）ぶ。

　　わー

　　　わー

　太（たい）耀（よう）は更（さら）に続（つづ）ける。

「多（た）分（ぶん）、アイツ等（ら）はまた現（あら）われるだろう。……でも安（あん）心（しん）してくれ、僕（ぼく）等（ら）が君（きみ）達（たち）を必（かなら）ず護（まも）って見（み）せる」

「鳥（とり）さん、名（な）前（まえ）は？」

　一（ひと）人（り）の女（おんな）の子（こ）が鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）にそう聞（き）くと、太（たい）耀（よう）は少（すこ）し考（かんが）えて言（い）う。

「僕（ぼく）の名（な）前（まえ）は光（こう）天（てん）の守（しゅ）護（ご）者（しゃ）、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）！」

　そう言（い）い終（お）わると、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）は光（ひか）りの珠（たま）に成（な）り、そのまま消（き）えていった。