02.ウチ、真理に至る

 修行を始めてから二年が経った。

 今のウチは五歳。だけど、ジャンプして屋根に上ったり、グーパンで岩を砕いたりできる。元の世界だったら間違いなく最強だ。


 でも、この世界の基準だと雑魚。

 ウチは未熟。まだまだ修行が足りない。


 でもウチにはゲーム知識がある。

 イーロン・バーグの長所、短所、どちらも知り尽くしている。そのおかげかママから成長が早いと褒められることが多い。とても嬉しい。


 それはさておき。


 ウチは今、トイレに居る。

 個室でコトを終え、お尻を拭いている。


 この世界は色々とファンタジーだ。

 例えば魔法がある。貴族とか身分とかある。


 でもトイレは元居た世界と同じ。

 だからウチはトイレが好き。実家のような安心感がある。


 さて、本題に入ろう。

 ウチがやりたかったこと、そのいち。


 それはおちんちんに触ること。


 ウチは呼吸を整える。

 そして、これまでは意図的に目を背けてきたそれを見る。


「……これが、おちんちん」


 ウチには前世の記憶がほとんどない。

 それでも、強く印象に残ったこと、何度も繰り返したことは覚えている。


 そのひとつが、おちんちん。

 ウチと仲良くしてくれた人達が、頻繁におちんちんの話をしていた。


 前世のウチは、女。

 当然おちんちんは無い。


 だけど今のウチは、男!

 おちんちんが……ある!


「……はぁ、はぁ、おちん、ちん」


 何故だろう。

 今からこれに触れると考えたら、呼吸が乱れてしまう。


 ウチは修行をしている。激しい動きをしても全く息が乱れないのに、どうして今、こんなにも呼吸が苦しいのだろう。


「……さ、さわ、さわ」


 右手を伸ばす。

 咄嗟に左手が右手首を摑む。


「……さわ、っても、大丈夫?」


 分からない。爆発するかもしれない。

 ウチは、おちんちんについて何も知らない。


「……恐れることは、無い!」


 思い出す。宿敵、聖女ノエルの姿。

 あいつに比べたら、股の間に生えてる謎の物体なんて怖くない!


「……」


 ふにふに。


「……」


 ぷにぷに。


「痛った」


 強く握ったら痛かった。

 半端ない痛み。ふにふにした物体の中にある……なんだろ、骨かな? とにかく、硬い部分を強く握ってみたら悶絶する程に痛かった。


「強く握っちゃダメ」


 ウチのおちんちん知識がひとつ増えた。


「……引っ張ると、どうなる?」


 好奇心。後、即実行。

 

「……伸びた!?」


 これは、皮なのかな?

 痛くない。でも、なんか思ったより伸びる。


「……っ!?」


 その刹那、天啓。

 ウチは生命の真理に至った。


「……おちんちんは、生殖器」


 その役割は子供を作ること。

 即ち、種を存続させる役目を担っている。


 全てのおちんちんが滅べば、人類は滅ぶ。

 おちんちんは人類を支える最も重要な体組織のひとつ。


 それが、引っ張ると、伸びる。

 即ち──生命とは、外から与えられた力によって広がるということ。人は一人では生きられない……ってコト!


「……おちんちんは、人類の縮図」


 おちんちんは、ただそこにある。

 しかし、誰かが力を加えることでその在り方を変える。まさに、人類の縮図だ。

 

「……深い」


 この日、ウチは生命の真理に至った。

 ウチ一人が強くなるだけでは、目標を達成できない。


「……ありがとう」


 おちんちんが教えてくれた。

 ウチが長生きするために必要なこと、それは……!

 

「仲間を……増やす!」

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