第7話

ドンッ!!


 激しい衝撃音と地震のような揺れ。遅れて爆風が周囲に広がる。俺はちょうど体の大きなトカゲモンスターの影になり、爆風の直撃を受けずに済んだ。土煙が舞い上がって視界がとても悪い。見える範囲で辺りを見回すと、立っている者はモンスターを含めてもほとんどいなかった。まるで巨大な爆弾が落ちてきたようだ。

 ズズーンと大きな地響きを立てて、トカゲモンスターが横たわる。体の半分に瓦礫や岩がいくつもめり込み、絶命したようだ。おかげで爆心地の方が見える。

土煙の中、何かが落ちてきたところに何者かが立っている影が見えた。爆弾の正体。大きな蝙蝠のような翼を広げ、首としっぽの長い怪物の影が浮かんでいた。

徐々に視界が確保されていく。爆心地は半径10mぐらいのドーム状に地面が抉られていた。石畳にも大きな亀裂がいくつも入っている。

 怪物は宙に浮いていた。大きさは3mぐらいか?手には三叉の槍を持ち、黄金色の鱗が輝く体には渋い鈍色の鎧を身に着けている。角の生えた面長の顔は、俺でも知っている竜のそれ・・だ。

 ・・・ドラゴン。いや、人間と同じように二本足で垂直に立っているところを見ると「ドラゴニュート」と呼ぶべきか。威圧感といい存在感といい、間違いなくラスボス級の雰囲気を漂わせていた。


 派手な登場しやがって。まあいい。メインイベンターの俺の相手として、不足はないだろう。きっと、俺はこいつを倒すために現代日本から召喚されたのだから。

 強敵を目の前にして、俺の気合もテンションMAXだ。体の芯から「力」が漲ってくる・・・ように感じる。迸る「力」は俺の体から湯気のようなオーラとなり、可視化されているであろう。自分では見えないけど。

 俺のチート能力は、間違いなくコレ・・だ。溢れるエネルギー。魔力だか霊力だかオーラだか、とにかく何らかの眠れる力に目覚めたのだ。実は豊富な魔力を内に秘めていたものの、魔法のない現代日本では宝の持ち腐れだったのであろう。そのことに気付いた神か誰かが、俺をこの地に呼び寄せたのだ。でなけりゃ、タイミングよくラスボスの登場とは相成るまい。ならば期待に応えなければ。


 この体中に漲る「力」を放出するにはアレ・・しかない。日本人だけでなく世界中のオタクが知っていて、その誰もが一度は「できそう」と思って真似をした、あの大技を。


 俺は横たわったトカゲモンスターの上によじ登った。

 両手の平を開き手首でくっつける。全身の「力」を両手に集中させ、掌を敵に向けたまま右腰に貯める。

 敵はラスボス「ドラゴニュート」だ。

 エネルギー充填120%。セーフティロック解除。

 俺の殺気に気付いたものがいるようだ。何人かの視線を感じる。ドラゴニュートも気づいたか?俺のこと目を丸くしながら見てやがる。フフフ、一瞬で灰にしてやるよ。


 ・・・刮目せよ。


 「か~~〇~~は~~〇~~」


 叫びとともに思い切り両手をドラゴニュートに向けて突き出す。

 「!!!波~~!!!」




 ・・・何も起きなかった。


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