第2話 ♣の11

 パスタマンの噂。

 白ウサギの間で、広まる。


 不敵な笑い。

 その乙女は、クラブの11。


 透明感溢れるその魅力と、サラサラの黒髪。

 あどけないタレ目の中に、涙の国の悲しい海と同じ色の瞳。

 


 次々と、若い男子をアリスに捧げた成長著しい、女子高生オッチャンゴロシ

 いや、元、女子高生。


 パスタマン、タレ目に弱く、

 ピンチ!



 あの戦争で、

 不毛な、あの戦争で、

 初恋の幼なじみを失い。


 茫然自失。

 引きこもる事、三年。

 アリスの力。

 その忘却の力にて、

 復活の女子高生。

 いや、元、女子高生。


 引きこもりの三年間に、積み上げた初恋喪失のパワー。

 その力で、パスタマン探索、

 開始。


 ハートが、パスタマンに遭遇した街を訪れたクラブの11。


 三年の引きこもり期間。

 もちろんクラブの11の身体にも平等に時間が通り過ぎ、

 年齢的に、それはどうでしょう?

 の、セーラー服のスカートを翻し、若き男子を狩り始める。


 スーパーマーケットのドアから、ひとりの若きイケメン登場。


 パスタマンをあっさり見つける?

 クラブの11。


『見つける迄の展開が、面白くないので、消去しました』

        m(_ _)mサクシャ


 クラブの11。

 ハイクラスのカード。


 これほどのイケメン、

 アリスに捧ぐ。

 クラスアップ確実。

 イケメンの心奪うため、動き始める。


 何故か、

 胸が、少し痛む。


『小さいからか?』

     m(_ _)mサクシャ


 自らの三つ編みの髪を切り落とし、編んだムチ、

 をその手に。


 若きイケメンを捕獲しようと、ムチを伸ばす。


 光るイケメン。

 変わるその姿。


 赤いキツネの……

     m( _ _ )mサクシャ

…… 仮面。


 パスタマン登場。


 風を切り裂き迫るムチを軽々とかわす。

 手首より放たれるペペロンチーノアタック。


 しかし、クラブの11。

 引きこもりパワー全開。

 三つ編みのムチから髪一本が、飛び出し、ペペロンチーノアタックに絡みつき、

 パスタを地に落下させる。

 

 ピンチの赤いキツネの仮面。


 しかし、

 

 ペペロンチーノアタックの連射。

 クラブの11を襲う。

 ムチからも髪の毛が、無数に飛び出しパスタを地に落とす。


 しかし、パスタの中にカペッリーニが、紛れる。

 ムチの髪、その細き麺を捉え損なう。


 元女子高生クラブの11の口に侵入するパスタ。


 初恋の記憶、蘇らせる。

 見たくないと、

 思い出したくないと、

 叫ぶ、


 元、引きこもり女子。


『同感』

     (^_^;)サクシャ


 しかし、パスタマンは、容赦しない。

 マスカルポーネチーズとココアの香り。

 ティラミスキック。


 思い出すクラブの11。

 高校生のあの頃。

 初々しい、ショートカットのボーイッシュな女子高生。

 

 幼なじみで恋人の男子。

 楽しく嬉しい学園生活を突然地獄に落とす、あの戦争。

 美しき存在の争い。


 の、終盤戦。


 初恋の幼なじみ、

 担任の女性の教師ミソジと、手に手を取り、いけない恋の逃避行。

 三十路のひとり勝ち時代。


 ボーイッシュな女子高生。

 自分の思い、

 大切な恋が、

 去っていく。


『ふられたのね』

      (^_^;)サクシャ


 この恋は、

 勘違いだと、

 人違いだったと、思い込み、涙を流し、

 自分の心を守る。

 しかし、耐えられず。


 引きこもりの日々の始まり。

 時が、

 心の歪を埋めていく、

 埋めてくれるものは、嫉妬と憎しみと涙。

 涙の尽きた頃。

 忘却のアリス現れる。


 薄れていく記憶と、膨らむ復讐心。

 いつの間にか腰まで、伸びた髪を切る時、

 ショッカー


 『間違いました』

      (^_^;)サクシャ


 白ウサギの戦士として、蘇る、

 元、女子高生。


 パスタマンに向けた顔には、血の涙。

 活動時間限界。

 パスタマンの変身が解けたオッチャン。

 若者の姿へ。


 若者。

 クラブの11の失った初恋相手に、

 その姿似ている。

 

 若者男子に近づきハグ。

 涙を流し、

 謝罪と恨みと、

 会いたかったの言葉、連発。

 混乱のクラブの11、

 いや、元女子高生。

 ベネチアンマスク落ち、

 クラブのミニスカワンピとクラブのカード消える。

 同時に、若者姿の活動時間限界。


 ポンッ!


 お腹が元のポッコリへ。

 その勢い。

 彼方へ飛ばされる女子高生。


 慌てて、初恋男子の面影を探し、駆け戻るその場所。

 その姿見当たらず。


 そこには、ただオッチャンの姿のみ。


「私の初恋相手をみかけませんでしたか?」


 オッチャンは、自分を指差す。


「私の初恋相手は、若者。そしてイケメン」


 オッチャン、元女子高生に、自分の上着を渡し、黙ってその場を去る。


 その背中には、

 あの戦争の終わりの悲しみが、蘇り、哀愁と孤独の漂う。


 女子高生。

 いや、元女子高生。


 その背中から、目が離せなくなるが、自分の初恋相手は、ポッコリお腹のオッチャンではないと思い直し、その場を去る。


 大切な思い出という、永遠に見つからない宝物を探す悲しい旅。


 元、女子高生旅立つ。


       (^_^)/~イッテラッシャ~イ




 

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