おやゆび姫は四季折々の色を歌う

春は花

春は風だと あなたは笑う

春は花だと 私は怒る


なにも私は彩りで

なにも私は香りだけで


可憐と愛でるわけじゃない

乙女を気どるわけじゃない


後ろを向いて 話し歩むあなたの

かかとにかすって傷つく一輪も

脇目の雑多と決めつけた緑のひと房も


知らなければ 花じゃない


肩を寄せ合う そこの黄色も

草の色をしたまま散る花弁も


きっとずっと ここに居た


羨ましいとは思わない

でも 羨ましいと口にする


私のちいさな一歩より

遠くに散って飛んでいく


きめ細やかな 花弁ひとひら

うんと準備した 種の一粒


歩む私より不自由で

でもいつかはずっと彼方へ


春は風だと あなたはいう

春は花だと 私は怒る


なんだか物憂げで暖かい

でも飛ばされたくはないから


また一歩 少し後ろで



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