data006...超科学×超能力

 ボクが、蜘蛛型メタリアルにメタリアルバスターを放つ数分前……。

 マリンと行った短い作戦会議の中で、もしもの時の作戦も立てておいた。


――「ゼロハチは、どんな機能があるの?」


 ジュドーを助けるために、ボクとマリンはお互いに出来ることについて話し合っていた。


『ボクも、あんまりわかってないんだけど……』


 そう言いながら搭載AIへ語りかけると、すぐに返答が返って来た。


[ 機能一覧は、以下になります ]

 ・メタリアルバスター

 ・アクセラレーター

 ・サイレントステルス

 ・ライトサークル

 ・バディドローン

 ・滅びのバースト床掃除

 ・アルティメット窓掃除

 ・マイナスイオン放出

 ・星座占い

 ・タロット占い

――next


 なんかいっぱい出て来た。ボクの視界に収まりきらないらしくて次のページまであるけど、とりあえずこの中で気になった機能があった。


 サイレントステルス


 これはボクも知らない機能だ。


 《ステルス》なんてどう見ても、家庭用ロボットには必要のなさそうな単語に見える。AIに機能詳細を尋ねると、答えが返って来た。


========

[ サイレントステルス ]

 自分の周囲に音波の反射や測距レーザー波などを逆反射するシールドを生成し、検知されにくくする。

 また駆動音なども最小モードへと切り替わる。当該機能を利用中は、アクセラレーターなど移動系の機能は制限されます。

========


 これがあれば蜘蛛型メタリアルに気付かれずに近寄って、メタリアルバスターをお見舞いできる。


『マリン。これ、どうかな?』


「いいわね。こっそり近づいて、ゼロハチのメタリアルバスターをダブルヒットさせましょう」


『じゃあ、マリンはここで隠れていてね』


「ダメよ。私も行くわ」


 そう言いながら、ボクの背中に乗ったマリンは退こうとしない。


『え、でも危ないよ? ジュドーに何を言われるか……』


「なら余計によ。私一人置いて行ったら、過保護のジュドーはどう思うかしら?」


『それは――』


 ジュドーの事だ。「マリンを置いて来ただと?! テメェ! ポンコツ! マリンを危険に晒すとはどーいうことだ!」って怒鳴られそうだ……。


「それに私がいれば、万が一メタリアルバスターを外してもリカバリー出来るわよ」


『え、それって……』



――仕留め損ねた。


 思ったよりも蜘蛛型メタリアルの動きが速かった。


 ボクのメタリアルバスターから逃れた蜘蛛型メタリアルは、その態勢のままボクらに向けてレーザーを発射。


[ 警告 敵弾接近 ]


『マリン!』

「ゼロハチ! 行くよ! テレポート!」


 シュン!


 メタリアルバスターを放出したまま、ボクは蜘蛛型メタリアルの背後へと短距離転移テレポートした。


 ボカーン!!と、出始めよりメタリアルバスターの出力は弱まっていたが、直撃を受けた蜘蛛型メタリアルは、黒煙を上げて爆発した。


[ 敵性対象消滅を確認 ]


 次の瞬間、ボクは足腰に力が入らなくなり、ガクッと膝を折った。


[ 警告 エネルギー残量不足 ]


「やったわね!」

『うん! マリンのおかげだよ』


 マリンがボクの背中から降りて、ボクとハイタッチをして喜んでいると、側面からジュドーの蹴りが飛んできてボクは吹き飛んだ。


『わっ!』


 エネルギーが不足しているため、自律制御装置が上手く動かず派手に倒れると、視界の先ではジュドーが握り拳を作っていた。


「おいこら! ポンコツ! テメェ……マリンを危険に晒すとはどーいうことだ! 逃げろって言っただろうがよ! これだからメタリアルは信用ならねぇんだよ!」


 うぅ……。結局、マリンを置いてきても怒られるし、連れて来ても怒られる。どうやっても、ボクは怒られる運命だったみたいだ。


『あの、ごめんなさ……』

「ゼロハチが謝ることないよ」


 ボクが謝ろうとしたら、マリンが怒った声で手を広げて一歩前に前に出た。


「ジュドー。貴方がメタリアルを恨んでることはわかってるけど、ゼロハチに罪はないわ」


「う……」


「私は逃げようとしたけど、ゼロハチはジュドーを助けたいと言ってくれたのよ。貴方を幸せにしたいと」


 どうやら力関係はマリンの方が上らしい。ジュドーがバツの悪そうな顔をしているのを見て、ボクから声をかけた。


『ジュドー。ボクは家庭用ロボットのゼロハチ。ボクの知らない1330年の歴史を教えてよ』


「ふん。仕方がねぇな……。俺は貸は作らねえ主義だ。ポンコツの知りてぇ事、なんでも答えてやるよ」


 ボクはジュドーの差し出した左手を力強く握った。

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