第5話 政治犯収容所

「お断りします。男爵家に渡すお金は、あくまでも、株式の配当と、一般的な男爵家にふさわしい生活費をお送りしてましたが」


 何と、サリアは、もう、これ以上、お金は出せないと言うのよ。

 王子からも何か言ってよ。


「株式?配当・・・・」


 ダメだ。頼りにならない。

 父上は短気だわ。


「サリアよ。この仕事は、お前にしか出来ないか?」


「いえ」


「そうか。なら、貴様は拘束だ。護衛騎士よ。奴を捕まえろ!」


「「「畏まりました!」」」


 すると、サリアは、ため息をつきながら、


「はあ、これから、成長限界を迎えます。これからは、どう生活を維持するかにかかっています。

 あれほど、言ったのに、誰も私の話を聞かない。貴方も領民たちも、ハピアちゃん。私を連れて行って!」


 すると、どこから、ともなく、声が響いたの。


【よし、分った。その願い叶えてやろう】


 ドカン!ドシャ、ドカーーーン


 天井が割れ、大きな・・赤いドラゴンが顔を出したのよ!


 サリアはドラゴンの背中に飛び乗って、飛び去っていった。


 ・・・・・・


 サリアの向かった先は、政治犯収容所だ。

 独裁政治に、政治犯はつきものだ。


 もっとも、この領の収容所は、遺棄された村に柵で囲み。家に住まわせているだけだ。

 サリアの指示を聞かず。農業で暮らしている者たちである。


「ヒィ、五年前のドラゴン!」

「死ぬ、処刑される!」


 サリアは、皆を集め宣言する。


「布告!審議の結果!貴方たち全員の無罪が確定しました。よって、補償金と、ナギル市民への株式配当四年分を小切手で渡すものとする。

 解放されたら、速やかに、換金すること。この領は、長く持ちません」


「書記長、一体、どのような意図で」


 フ、反対派の方が、私の話を良く聞く。


「貴方は執事長のセバンですね。これに、今後、領で起こることが書かれています。被害を最小限にする方法も書かれていますわ。

 王国と連携すること。王子が来てますが、あの王子はスパイでしょう。あの王子に接触しなさい」


 サリアは冊子を手渡すと、


 そのまま、赤いドラゴンと共に、飛び立った。


「なあ、サリアよ。いいのかのう。もったいないのう。初めこそ、我を使って、威嚇したが、それ以降、我の力を使ってないぞ」


「ええ、この世界の貴族制は、不完全な独裁制、だから、私の世界で、最も、独裁に適した政治形態、社会主義を導入しました」


 この世界は、貴族が完全支配をしているわけではない。教会勢力やギルド、領地内に治外法権のように、領地を持っている配下の貴族がいる。


「そんなものかね」


「私の世界の市場経済が導入された独裁国家を真似ました」


「わからんのじゃ!」


「フフフ、ハピアちゃんと同じやり方です。他者の不幸の上に、幸福がある。投資って、失敗する人がいるから、成り立つのです」


「次は、どこに行くのじゃ」


「辺境に行って、農民専用の互助組織でも立ち上げます。地道にね」


 赤いドラゴンは、西の方に飛び立ち。二度と姿を見た者はいなかった。


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