第3話 赤い内政チート

 ☆☆☆王太子主宰。政策・領地経営研究会


「皆の者。良く集まってくれた。着席してくれ」

「「「御意!」」


 私はこの王国の王太子、

 数年前から、王国に、不可解な現象が起きた。


「これが、銀貨50枚だと、平民でも、無理をすれば、買える値段だ。これは」

「はい。ナギル領産です。金融業と提携して、金利と合わせて、銀貨60枚で売っています」


「う~む。通常、銀貨200から300枚、他の工房では太刀打ち出来ないな。どういった理屈だ」


「分りません。しかも、品質は中の上、確認した限りバラツキはありません。不良品は気前良く交換します」


「うむ」


 机の上に、腕の形の魔道具がおいてあった。

 腕にはめて使うと、

 切り株を成年男子なら、一人で排除出来る。

 ビアの入った大樽を一人で持ち上げられる。


「しかし、これ、一点なので、他のゴーレム工房は、他の商品に活路を見出しています」


「内政チートか」

「いえ。既知の技術です」


「カゲからの報告は?」


「それが、何か精神干渉を受けたようで、平民でも知っている情報しか入って来ません。魔導師のバリアを突き抜ける・・・しかも、神レベルの、精神干渉が行われていると、宮廷魔導師からの報告でございます」


 ナギル男爵の、領地経営手腕ランキングは、F級、しかも、代官をおいて、王都で遊び暮らしている。

 そやつの器とはどうしても思えない。

中には、労働しなくても暮らしていける市民までいるそうだ。


「領行政府が、市民にお金を配っている?」


「代官の名は?」


「それが、書記長サリアが指示を出しているようですが、書記長です。板書係りに権限があるとは思えません。他にも、民政委員会長や、平民内務委員会など、さまざまな委員長がいます」


「ふむ。やりおるか。ロメリオに、トランダ男爵の田舎娘が、ぞっこんか。これは策を講じなければならない」


「ミランダ嬢は、学園内では、ワガママに振る舞っているそうです」


「ロメリオ、やってくれるか?」


「はい、兄上」


 そして、私、ロメリオが、イザベラを危険にさらす策を講じてまで、あのブタの婚約者になる計画が練られた。


 私が、ナギル男爵領の秘密を暴くのだ。


「邪教?!もしや、禁断の民主主義ではないか?」


「その危険はあるぞ」


民主主義、異世界人が持ち込むものは、良いものだけとは限らない。

世界の秩序を破壊するといわれている制度だ。


だから、転移勇者の扱いは最大の注意が必要だ。


「殿下、発言の許可を求めます」


会議アドバイザーの異世界アカデミーのザウク・ヨシダ氏が発言の許可を求めた。


「民主主義というよりは、資本主義かもしれませんね」


彼の先祖は、異世界で通学中に転移した。おかげで、先祖伝来の平民学校の教科書を家伝として持っている希有な存在だ。


正直、ここからの話は、良く理解出来ない。


市民に、財産を供出させて、カブ券なるものを配り。

この領、唯一の、ゴーレム工房に、資金を集中し、工場を作り。

農業をやめさせ。労働者を確保し、物を多量生産をする。

すると、安い物が作れる。


理屈にかなっているが、それは、どこの商会もやっていなかった。


「市民に、商会のスポンサーになってもらうことか。それも、領民全員」


「ええ、その理解で間違っていません」


「しかし、書記長・・との言葉が出ましたが・・資本主義に書記長はあり得ません」


「どういうことか?」


「はい。書記長は、資本主義の対極、社会主義の最高の役職だからです。もっとも、私のご先祖様は、40年前に来られましたから、

 今の異世界はどうなっているか分りません」


これは、やはり、見に行くしかない。


「ロメリオ、陛下に言って策を講じる。頼むぞ」


「はい、兄上」


そうして、学園で茶番劇を演じることになった。








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