第8話 前世の記憶
会議は再開される。
「えー・・・シェミールちゃんにレーオくんの前世の記憶をプライベートの事を抜きにして
そう言った瞬間に扉は開かれ騎士の人たちが3冊のあの分厚い本を持って会議室に入ってきた。
「あれが
「随分分厚いですな」
「もう宰相殿は読まれたので?」
1人の貴族の人がそう聞けばそれに答えたのは国王陛下だった。
「あいつは2日で読んだぞ」
その答えに驚きざわつく会議室。
「俺のことはいい。それよりもあの中身についてだ。レーオくんの前世は我々のこの世界とは全く別だと考えた方がいい。より発展した世界だ。鉄の塊が空を飛び、星の裏側にいる人物と話す事ができ、自動で掃除をしてくれる物がある」
そうゲイズさんが言った瞬間ざわざわが大きくなった。
「・・・それは・・・冗談・・・ですかな?」
「俺は冗談は言った事がない」
「・・・そんなの・・・一体どういった魔法を使えば可能なんだ・・・」
「あの世界には魔法も相獣も存在しない」
さらにざわつきが大きくなる。みんな普通に話してる感じの声量で隣の人と話し合う。
ダン!
突然にして机を叩く国王陛下。
「まだゲイズの説明は終わっておらん」
すると、さっきまで騒がしかったのが国王陛下が机を叩いた事で一瞬にしてざわざわは無くなり静かになった。
「・・・ギーグに船内で聞かれた再現は可能か?という問いに俺は無理だと断じた。だが、それは間違いだ。正しくは全く一緒の物を作る必要が無いという事だ」
「どういう事だ?もっと分かるように言え」
意味が理解できなかったのか国王陛下が再度問いかける。
「先ほども言った通り地球には魔法も相獣もない。さらに魔物も存在しない。科学を追求した結果の世界だ」
「かがくとはなんだ?」
「科学はなぜを追求するモノだ。なぜ人は生きていけるのか?どうやって歩いているのか?なぜ魚は水の中でも息が出来るのか?などのなぜを考え続け謎を明らかにして行き世界を発展させる。それが科学だ」
「・・・なるほど・・・我々は魔法という便利なモノがあるせいでそこが疎かということか・・・」
「ああ、だがこの世界にはレーオくんの世界とは違い魔法がある。魔物もいる。みんなが魔力を持っている。だからこそ同じ物を作るのではなくこの魔法や魔力や魔物を使ったこの世界オリジナルの物を作っていけばいい」
科学しか無い世界の物を魔法や魔物が存在する世界で再現するのではなく魔法や魔物を使ったこの世界ならではの物を作ろうと提案したゲイズさん。
「(それって魔道具って事?逆に言えば今まで無かったのか?)」
魔道具が無かったことに驚いていた俺だったがそれを見抜かれたのかゲイズさんに指されてしまった。
「レーオくん。なにか気になることでもあるのか?」
「へ?い、いやその・・・今まで魔力で動く物とか作ったりしなかったんですか?」
「ふっ。魔道具の事だろう?君はそういった作品が好きだったみたいだからな?」
「(おいおい!プライベートの事は抜きなんじゃ無かったのか!)」
「君の知識には小説よりもライトノベルの情報が多かったからな。そう予測したんだが合ってたようだ」
どうやらあくまで予測だったらしい。俺がどんな作品を読んでいたとか好みの作品とかは分からないようだ。
「話を戻すが魔力で物を動かす魔道具自体は存在した。それを研究する者も少ないながらも存在する。だが、我々は魔法がある。何をするにも魔法を使えば済むんだ」
洗濯機に似た魔道具もあるしコンロに似た魔道具もある。だが、魔法で
「だが、この魔道具の研究に力を入れればより良い未来に出来る。そして俺はその方法を理解した」
「おお!さすがはゲイズだ!ターロス国の頭脳!」
国王陛下がゲイズさんを褒める。理解したと言っているが俺の知識でどの程度理解できたんだろう?
すると、今まで黙っていたビーラッド王子が発言をした。
「でもゲイズさん。問題がいくつかあります」
「ほう?その問題とは?」
「いろいろありますが大きいところで言えばその知識が正しいかというのと、この世界でも通用するのかというのは慎重に実験と検証をして行った方がいいでしょう」
そう大人顔負けに喋りだしたビーラッド王子。彼はまだ10歳だというのに年齢を感じさせない喋りを披露した。
「(なるほど。今のだけでも10歳とは思えない賢さがあるのが分かる)」
そのビーラッド王子の言葉にゲイズさんは表情を変えずに想定していたかのように答えた。
「もちろんだ。だからこそギーグ」
ゲイズさんは国王陛下に向き直った。
「俺は飛行機の作り方も携帯電話の作り方もロケットの打ち上げ方も理解した。あとはそれらが実際にこの世界で可能なのかの検証が必要となる。その検証に2年欲しい」
「・・・その間の宰相としての仕事は?」
「必要最小限に留めて科学の開発に注力したい」
ゲイズさんのまさかのその言葉にシーンと静まり返る会議室。
「宰相殿、この科学がどれだけ我が国にとって有益かは理解しましたがなにもそこまで「いいだろう」ッ国王陛下!?」
半ば宰相の仕事の放棄という宣言に貴族の人は止めようとするも国王陛下の鶴の一声で許可が下りた。
こうしていろいろあったものの科学についての会議は終わった。
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