ローデリアダンジョン①
ローデリアダンジョン 地下3階は ごつごつした洞窟の中を歩むような構造になっていた.
俺はたびたび襲い掛かる大型の狼型モンスター グレイウルフを一刀で切り伏せていた。
頭部から臀部までを、一刀で両断し、床にべちゃりと倒れ込むグレイウルフ。
両断された断面からは血が流れるも、数秒で地面に沸騰するように吸い込まれていった。
手にはあの鬼凛丸。
気を流し込んで切っているため、だたでさえ凄まじい切れ味が向上していた。
レイジがすっと気の流れを断つと、刀身に血はついておらずコーティング的な要素もあるようだ。
このため刀は刃こぼれのリスクを極限まで減らした状態で使用できることになる。
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「レイジ、調子良さそうだね きりんちゃん」
「手応えを感じないほどの切れ味だからな、さすがに怖くなるほどだ」
シルメリアが床に転がったグレイウルフの魔石を拾い上げると、まじまじとその刀をみつめて言った。
「しかし不思議よね。この剣からはまるで魔力というものを感じないの。前にレイジが使ってたあのナマクラオンボロの長剣でさえ僅かに魔力はあったのよ」
「もしかしたら、魔力がないから気の伝導率がいいのかな」
「あるかもね」
俺たちは地下4階を目指す。
グレイウルフ、シャドウスネーク、アルミラージなどが出現した3階とは違い、このローデリアダンジョンは4階からが本番だと言われているそうだ。
「これは、嫌な気配がするな」
「もしかしてレイジはアンデッドの気配に敏感なのかしら?」
シルメリアの問いに、頷く。
「地下2階にいたゴブリンや他の魔物よりも、気配がというより嫌な感覚を刺激されるな」
「さっそくおいでなすったわよ」
古代遺跡を思わせるような、重厚な石造りの壁や床、天井が圧迫感を加速させる。
ダンジョンというものは、壁や天井がうっすらと光を放っており松明などの照明がなくても、行動が可能だ。
なにより夜目の利くフィオが正面からやってくる魔物の正体を教えてくれた。
「魔法力は温存してくれ、ここは俺が行く」
正面からやってくるのは腐った死体ことゾンビが3体。噛まれたらゾンビになるのか訊いたところ、ないとシルメリアが即答。
俺は鬼凛丸と左手から流れる力がいつもより強いことを意識できた。
やはり、不浄なるモノどもに対して強く働く力なのかもしれない。
滑るように踏み込みながら右袈裟一刀。
ずるりと3体の上半身が滑り落ちながら灰化していく。
「すごいわね、下手なプリーストのターンアンデッド以上の力です」
シルメリアが感心しているが、気功術とアンデッドの相性が良いだけだろう。
「特効というやつか。フィオ、シルメリア、案内と援護を頼む」
「はいな」
「よいですわ」
かび臭くどこか気持ちをどんよりとさせるこの地下4階。
入口で売っていたマップを参考に、順調に地下5階への階段を目指す。
都市部にあるダンジョンなのでこういった情報が共有されやすいのは助かる。
スケルトンやゾンビを難なく倒して先を進むと、フィオとシルメリアが「あっ」と小さく叫んだ。
もちろん俺も気配は察知していたが、どうにも背筋が寒い。
半透明の亡霊のようなものが曲がり角から現れるやいなや、猛烈な憎悪をむき出しにこちらへ襲い掛かってきた。
アンデッドが持つ共通の特徴として、生者への凄まじい敵意があげられる。
苦悶の金切声を上げながら、レイスと呼ばれた亡霊タイプのモンスターが不規則な動きで宙を移動してくる。
「は、外した!」
フィオの魔法矢が不規則な動きに対応しきれず天井に突き刺さる。
「間に合わない!」
シルメリアの呪文も不意をつかれたたため詠唱が間に合わない。
「下がって」
俺は鬼凛丸を抜かないまま、拳に気を集中させる。
一歩前へ出たことで、レイスが俺をターゲットとして選んだのが分かる。
『キギャアアアアアアアアアア!』
耳をつんざくような悲鳴に魂を持っていかれそうになるのを堪えながら、俺はレイスに向けて発勁を放った。
近距離での、ほぼゼロ距離発射。
発勁によって吹き飛ばされたレイスは、影も形も残らずただ煙となって消滅した。
コロンっと、床に落ちたのはやけに透き通った翡翠色の魔石。
拾い上げた魔石を見てシルメリアがこぼす。
「あんなに悍ましい化け物なのに、魔石だけは綺麗」
そしてとうとう地下5階へと足を踏み入れたのだった。
5階は中級クラスであり、気を抜けば全滅もありうると呼ばれる今回の山場である。
出現するモンスターは、オーク。
いわゆる豚人間的な魔物としてファンタジーでは存在感を示してはいるが、5階ではただのオークだけではなく、魔法を使うオークメイジ、屈強な肉体に武具を身に着けたオークファイタ―が出没する危険地帯となる。
ここを乗り越えないと目当てのファントムクロースのいる6階にはたどり着けない。
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