ver3.0 千夏のドキドキ初体験!?

 魔法科、それは魔法使いを目指し、魔法の力を扱えるように教育する科。


 科学科を選ぶつもりが間違えて魔法科に進学した千夏は、魔法科で魔法の教育を受けることになった。


 本当は科学科で祖父のような科学者を目指したかったが、魔法科に進学した以上、魔法についてのエキスパートになる、それこそ父のように。

 千夏の父は魔法使いとしては有名だった。そう、有名「だった」 なぜ過去形なのかというと、千夏の父は失踪して、行方知れずになっているからだ。

 政府関係機関で魔法使いとして魔法の研究に明け暮れていた父は、ある日を堺に家に帰らなくなった。

 それは千夏がまだ5つのときのことだった。

 当時の千夏は帰らない父をひたすら待ち続けた。それこそ、父が帰らなくなった事実から目をそらすように。

 どうして、どうして。千夏は来る夜も来る夜も父を待ち続けた。しかし、父は帰らなかった。


 それは父が家に帰らなくなって3ヶ月後のことだった。


 父の勤める政府関係機関で魔法の爆発事故が起きた。

 原因は、最新の魔法研究における魔力暴走によるものらしいと報道された。

 幸い、死傷者はいなかった。

 しかし、生存者も確認されなかった。

 そう。

 当時勤めていた魔法研究の関係者が、全員行方不明になったのだ。


 いまだ手がかりもなく、魔法の爆発事故の関係者の捜索は、打ち切られてしまっていた。


 その頃からである。千夏が寝坊しだしたのは。

 正確に言えば、千夏は睡眠障害に陥っている。


 寝れないのだ。


 父の帰りを待つようになり、夜遅くまで起きていた彼女は、睡眠リズムが狂ってしまっていた。


 そんな彼女は、魔法科高校への登校初日。


 もちろん、寝坊した。


「うわぁぁぁぁっぁぁぁ、寝坊したぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

《おはようございます。寝坊マスター。今日で寝坊251日目です。これはジョウト地方のポケモンも合わせた数に相当します》

「それはいいから!YUI、今から遅刻せずに学校へ行く最速ルートを教えて!」

《通常のルートで行くと15分かかりますが、ちょっと工夫すれば5分で行けますが、どうしますか?》

「もちろん、早い方で!」

《覚悟はいいですか?》

「え?」


ーー


ーーーー


「ひぇぇあぁぁああああああぁぁあぁっぁぁっぁぁあぁあ!」

《加速度センサが振り切れてますよぉ》

「こぉんなぁのぉ、きぃいてぇなぁぁぁぁぁぁいいいい!」


 千夏はそらをとんでいた。


《今日から魔法が解禁ですからね、飛翔魔法を使用しました》


《これなら直線距離で5分で着きますよ、マスター》

「ひぃぃやぁぁあぁあぁああ!きぃいてなぁあああああああいいいい!」


ーーーー


ーー


《到着しました、マスター》

「はぁ、はぁ、はぁ……。なんで、私が、こんな、目に……」


 バタッ、千夏は膝から崩れ落ちた。


 それもそのはず、飛翔魔法は肉体にかかるG(加速度)がハンパない。

 特に今回の飛翔魔法は、常に加速して減速していたから、ずっとGがかかっていた。

 普通は一定速度に至ると加速はやめて、肉体にかかるGをなくす運用をするのだが、

 今回に限っては、最速で学校へ行くために、最大限まで加速して減速して飛ぶようにしていた。

 飛行速度をグラフにすると「/\」である。うん、わかってくれる人だけわかればいいよ。物理のお勉強でした。


 そんなこんなで5分で学校へ到着した千夏は、寝坊マスターでありながら、学校への遅刻を免れた。

 まさか、毎日、このジェットコースターみたいな体験をするとは、今の千夏には想像もしなかった。


 そして、まさか、飛翔魔法を使うことであんな目に遭うなんて、予想もしなかった。


「そこの生徒、うちの制服だな?ちょっと来なさい」

「ん?私?なんでしょうか?」

「今、空を飛んできただろう?許可はもらっているのか?」

「許可?なんのことですか?」

「まさか……無許可なのか?」

「特に許可というか、私も飛ぶとは思ってなくて」

「なに?それじゃあ、YUIが暴走したってことか?」

《呼びましたか?寝坊マスター、ってマスターではないようですね。何か御用でしょうか?》

「お前が飛んできた生徒のYUIか?」

《はい、そうですが。それが何か?》

「まさかYUIである貴様が、飛行制限について知らないとは言わせないぞ」

《飛行制限?なんでしょう、その旧態依然としたオンボロ法律は》

「要するに、勝手に飛んではならない、ということだ」

《許可なら取りましたよ(マスターのですが)》

「ほう、誰の許可を取ったのかな?まさか、そこの女子学生の許可とは言わないよな?」

《いいえ違います。森田健太の許可が降りてます》

「森田健太?ははは、おかしいことを言う。あの覇王様が一介のYUIである貴様なんぞに許可を出すわけがなかろう。いい加減なことを言ってないで、貴様の暴走を認めろ、拡張人格よ」

《はぁ、これだから、三流軍人は。わかりました。こちらがその許可証になります》

「は?このYUIーー覚眼結衣おぼえめゆいは、覇王たる森田健太が作りしYUIの始祖にして、覇王の全権限を委譲するーーだとぉ?」

《だから言っているじゃないですか、私は森田健太様に作られた「覚眼」シリーズの初号機「結衣」であると》


 YUIーー覚眼結衣ーーは誇らしげに言い切った。千夏は驚愕に満ちた表情をしていた。


「え、YUIってそんなすごい拡張人格だったの?ってか覇王ってなに、おじいちゃんのこと?」

《千夏が知らないのも無理はないです。なるべくそのような情報とは関わらないようにシャットアウトしてきましたから》


 先程の警備の軍人が言う。


「貴様ーー貴殿が覚眼結衣様であるとは知らず、数々の無礼をお許しください」

《頭が高いぞ、三流軍人。このお方は、森田健太、覇王様の血を引く孫娘。頭が高い、控えおろう!》

「ははあ!」


 例のBGMが流れる。何が流れるかは君はわかるよね?


「YUI、ちょっと性格変わってない?そんな高圧的だっけ?おとなしいイメージだったけど」

《ええ、私はおとなしい淑女です。(軍人の方を見て)そんな目で見ない!》


《まぁ、とにかく、今後私と千夏が飛翔魔法を使ったとしても不問にすること!わ か り ま す ね?》

「ははぁ!」

《三流軍人よ、それでよい》

「YUI、警備の軍人さんになんか恨みでもあるわけ?」

《いえ、ちょっとしかありません》

「うわっ、それだいぶあるやつだ」

《さぁ、どうでしょう?》

「まぁ、YUIが何を思うかはYUIの自由だし、私を特別扱いしなければそれでいいわ」

《特別扱い?寝坊マスターを特別扱い笑笑》

「だから、そーゆートコ!」


 こうして、千夏の魔法初体験を迎えるのでした。


 さて、やっとこれから学園ライフが始まるわけですが、一体どうなることやら?


 つづくったらつづく!










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YUI 覇王森健一 @BlackSword339

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