奇妙な独白

グカルチ

第1話

一家殺人事件の犯人が捕まらない。そのまま時効がすぎた。奇跡的な息残りが一人の息子次男であり。彼ら兄と姉は死に弟も死に、父と母も死んだ。


 叔父叔母に引き取られたが、貧乏な家庭だったので彼は高校をでてから必死で働いて叔父叔母の生活を支える。そして、なんと25歳の若さでこの世を去る。


しかし、その数年後に弟と名乗る人物ががその事件の概要と犯人に対する本をだした。それは飛ぶように売れた。弟曰く、犯人は兄であるというのだ。そこにはことこまかな事件のトリックと、兄の同期についてかかれていた。兄は誰より甘やかされて育ったため、わがままで乱暴になったというのだ。そしてその画像には、兄にやられたとされる様々な暴力の傷跡の写真が張り付けてあった。



そのまた五十数年後

 その本に対するインタビューが行われた。相手は弟と自称する作者のものだ。

「どうして、あなただけが生き残ったのです?この本の目線はずっと兄のものだ、そして兄があなたを見たときの描写がすっぽりぬけおちている、唐突にあなただけ見過ごしたように、どうしてあなたは惨殺から生き延びたのです?」

「何がいいたいのです?」

「要するに世間では、これはあなたの創作で、あなたは本当の弟ではないという噂がたっているのですよ、つまりね、だからこんなに、兄の目線でかかれてもいるし、あなたは兄に憎まれているという描写があるにもかかわらず、生き延びるはずのない状況で生き延びているのではないかと」

「ああ、兄の目線をなぜ知っているのかって?そして、この話が作り話ではないかって?そうですね、その方があなた方にはよかったかもしれません……それは、その時生き延びたのがたまたまではなかったからさ、いや、そういう事になっているが、もはや死期が近いため真実をいおう、弟の俺こそが兄のしたことにしてすべてをおしつけて、兄を脅した張本人だからさ、つまりあの本の最大のウソとは、そこではなく、本当の犯人が俺だということだったのだ、まあ、状況的には"共犯"になるか。奇妙だとはおもわなかったか、犯人は大人だとおもわれていた、俺たちは肩車をして、二人で犯行をしたが、ほとんどの犯行は俺が兄を脅してやってやったのさ、動機?俺の家族は兄を甘やかしまくって俺をほったらかしにして、ましてや兄や姉は俺をぶったり虐待をしたりした、俺は兄のものをほとんど盗んだりぶんどったりしたが、それでも愛が足りなかったのさ」

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奇妙な独白 グカルチ @yumieimaru

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