解答と解説「消えた腕時計」

【答】

榊が一連の『』を基に旅館から金銭を受け取る詐欺行為、または盗難保険による保険金詐欺行為に及ぼうとしていると気付いたため。


【説】

なぜ榊が詐欺師なのかというと、腕時計は最初から消えてなどいないからです。

ではなぜ、樹一は腕時計は消えていないと気付いたのかというと、その答えは榊自身の言動にあります。

若女将は樹一が行った『時計が消えた時間』についての質問に対し、「入浴を終えて午後九時半過ぎに部屋に戻って金庫を確認したところ、腕時計とけいくなっていたと榊さんがはっきりと答えられている」と答えています。

榊は『腕時計が消えた時間』を若女将に『と答えている』のです。これはおかしいですよね?

なぜならこの旅館の館内にはテレビや時計がなく、時計類の持ち込みも『まで』という規則きまりがあるので、腕時計が消える前はともかく消えた時点での時間を榊がわかる筈がないのです。

自らの入浴時間は経過時間の目安にはなりますが、それでも『はっきり』と答えるのはおかしいです。尚且つ榊にとってこの旅館は普段入浴している家ではなく出先であり経過時間がいつもよりも曖昧になるというのは間違いないと言えます。

しかし榊は、テレビも時計もない出先で腕時計をくしたにも拘わらず、金庫を確認した時間が『午後九時半過ぎ』であると若女将に『はっきり』と言っているのです。

この事から榊は時間を確認する方法を有していたと考えられるため、『腕時計が消えた』という出来事そのものが榊の狂言、つまり嘘であると判明します。

そして、詐欺行為については、館内で盗難事件が起きたという評判はその顛末を問わず『悪評』となり得るので大事おおごとにしたくない(揉み消したい)と考える経営者も多く、榊はそんな経営者を狙っていたのです。強請ゆすりによる恐喝行為ではないのは、榊が旅館側に自ら望んで揉み消そうとする様に仕向けている為です。(脅していない)

また、保険金詐欺はそのままの意味です。時計そのものに盗難保険などを掛けていなくても火災保険の(盗難補償の)対象となるケースもある様ですよ。

そもそも、数百万円から一千万円程度の価値がある腕時計がくなったら『出来るだけ早く通報』したい筈なのに直接受付に行かず、内線で連絡して責任者(若女将)と話し合いをしている時点で榊はが出ていましたね。


経営者の皆さん、弱気に出たら付け上がる、強気に出たらネットに曝す、そんな人として異常おかしい輩が昨今、独善主義のクレーマーにはくれぐれも注意しましょう。

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【更新無期停止】非日常と日常のミステリー 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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