喉のつっかえ

@4tai

(プロローグ)つっかえている

すぅ、と全身から血が引くような

脳が充血するような矛盾した感覚


息ができない。


「     」


声にならず目を覚まして這いずって薬を探す。

上体が速く脈打って酸素を欲する。


吸えない  吸えない  入って来ない


銀の遮光包装を開けてフィルムを剥がし両鎖骨の8センチ程下方に貼る。

仰向けに転がり数を数えて、待つ。


...40、41、42、43、45.....

入って、きた。


酸素が入ってきた。肺に、血管に巡る感覚。

こうやって狭心症の一種は一見健康そうな私の体に

未だ、いる。

首を絞められる夢で起きるときはだいたい これ のせい。別に眠って居なくても急にやってくる。


「心理的なものでしょう」

解らないことは総じて上記の言葉に集約される。

心理的な狭心症はかれこれ6年くらい私の後ろをトコトコと付いてくる。早いところどっかに行って欲しい。


おかげで定期的に首を絞められる。

自分に。



昨日の自分が、今日の自分を

いつぞやの自分が、一昨日の自分を

やつれた自分が、酒を飲む自分を

働けという自分が、寝ている自分を

病で痩せ細ったころの自分が、叱責する自分を


今日の自分は、 丈夫な体で息も絶え絶えな自分を



まわりまわって私はぐるりと自分の首を絞め、綺麗で大きな輪を作っている。

皆一様に締める相手に

頑張れ とか

大丈夫 とか

安い励ましの言葉をかけて。



ちっとも大丈夫じゃない









ちっとも大丈夫じゃないし、健全な考え方ができていない。やめよう。

漫画でも読むか、仕事でもしよう。

息が整ってきたのに天井しか見てないからこんなことを考えるんだ。

床からゆっくり起き上がり、のそのそと節電モードでぬるいウォーターサーバーの水を飲む。

生きているし、残念ながら朝もくる。



以下に書き記すのは

ネガティブな思考をどうにかこうにかしながら生きている三十半ばの私に起こってきた嘘みたいな馬鹿馬鹿しい出来事である。

半分以上は私の気晴らしだが、

誰かの気晴らしにでもなればそれは嬉しいと思う

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