第6話 実技試験

 もう試験が始まってから30分が経過している。

 残りは20分しかないが問題のページ数も残りわずかだ。


 その後も僕は問題を余裕にこなしついに最終ページ最終問題。


 【あなたがこの学園に入り成し遂げること。そしてその未来、何をもって生きていくのか。自分の意見を書き記せ】


 問題にはそう書かれていた。

 学園に入り成し遂げることか。

 今のところ学園で成し遂げようと思っていることもない。


 でも僕の使命がこれに該当するとするなら…。


 僕は解答用紙に【人々を救う】、ただそれだけを書き記した。


 これで終わった。

 ミリーゼは大丈夫かな。


 僕は横をちらっと見た。


 どうやらミリーゼも既に問題を解き終えていたようだ。


 さすが僕のメイドは優秀ー。


 ◆◆◆


 その後基礎学力テストが終わり魔法基礎のテストが始まった。

 わかるところもあったがよくわからないところもいくつかはあった。

 でもこれくらいのミスでも恐らくだが大丈夫だ。


 なんせ基礎学力の方で点数を荒稼ぎしているからな。


 そしてついに魔法基礎のテストが終わった。


 なんだか魔法基礎は普通にテストを受けていた気分になった。

 ちょいムズ。


「これから実技試験を行う。私についてこい」


 そう言われ僕たちは順番に並んで先生の後をついていく。

 他のクラスからも人がたくさん出てきていた。


「レイル様、テストどうでした?」

「余裕だったよ」

「さすがレイル様ですね!」

「ミリーゼはどうだったんだ?」

「凄く簡単でしたよ!」


 そして僕達は大きな建物の中へと連れて行かれた。


「ここは特別訓練ルームだ。主に戦闘系はここで行われる」


 その建物の中は少し近未来っぽさのある感じをしていた。


「これからお前達にはこの魔物に攻撃をしてもらう。特に縛りはない」


 先生がそう説明するといきなり建物の中に大きな魔物が一体現れた。


 どうやらいきなり実戦的にやるみたいだ。


 それにしても魔物ってリアルで見るとこんなに気持ち悪いものなのか。


「それではまずお前からやれ」


 そして次々に人が呼ばれては魔法が魔物に放たれる。

 

 人の数が多いせいで自分の番まで順番が来るのにまだ時間がかかりそうだ。

 せめてもうちょっと分割してもよかったんじゃ。


 そんなことを思っていると見覚えのある姿をした人が呼ばれていた。

 

 あれはもしかしてこの間助けた女の子か。

 まさかあの子もこの学園の受験生だったとは。


 向こうもこっちに気づいてくれるだろうか。

 てか覚えてないか。


 その女の子は詠唱を始めた。


「我が命に従え、風の衝撃波よ。第一風属魔法詠唱。ウインドインパクト」


 すると魔物は突然弾き飛ばされ壁に激突した。


 一体今何が起こったんだ。

 何も見えなかったけど。


「今のは四大元素の風ですね! 風魔法は熟達すると派生魔法の雷も扱える様になるんですよ。特に風魔法の便利なところは目に見えないというところなんですよ! これロマンですよね! 私も使ってみ――」


 つい最近判明したことなどだがミリーゼは魔法のことになると異常に話し始めるのだ。

 確かに魔法いついて知ることが出来るから嬉しいのだが口が止まることがないのが一番の問題である。

 だからこうしてある程度聞いたら無視しているのだ。


「あれってそうだよな…」

「なんであいつがこんなとこにいるんだ?」


 あの子が魔法を使ってから何故か周りがざわついていた。

 唯一、魔物に大きなダメージを与えていたからざわついてるのだろうか。


 それでも僕は特にそれを気にすることなくまた次々と人が呼ばれていった。


「次はお前だ」


 長い時間、待機した末についにミリーゼの番がまわってきた。


「レイル様、行ってきます!」

「頑張れ」

「はい!!」


 失礼なことだけれどもミリーゼはあまり魔法が得意な方ではないと感じている。

 なぜなら練習の時もそうだがあまり魔法が強くないのだ。

 一番近くで見ているからわかることだ。


 でもミリーゼも一緒に頑張ってきたんだ。

 きっと行ける。


「我が命に従いて無尽の魔力が星の軌跡を辿り、煌めく星々の神秘を具現化せん。第二火属魔法詠唱。アストラルファイア」


 ミリーゼが詠唱しその魔法を放つと魔物は炎の大爆発に飲み込まれてしまった。

 次第にその炎が消えていく。

 するとその魔物の体は星型の穴があき、その場に倒れ込んでいた。


 ミリーゼの今の魔法は一体。

 なんであんなやばそうな魔法を使えるんだ。

 

 周りはやはりこの光景に驚きざわついていた。

 先生は何故か鼻で笑っていた。


「ミリーゼ今のは…。それに魔法は少しだけしか…」

「それは嘘ですよ! 初心者に教えるのにいきなりとんでもないのを見せたら自信をなくしてしまうかもしれないですし!」


 今まで僕の為に手を抜いていたというのか。

 でも手を抜いてもあの威力だったということはもしかしてミリーゼは僕より強いのかもしれない。


「あ! ちなみに今のアストラルファイアは中級魔法なんですよ! 中級魔法からは詠唱もちょっと違うてまたそれがかっこよかたりするんですよ! あと――」


 また長くなりそうな話しが始まったので先生に呼ばれるよりも先に魔物のところへ向かった。


 どうやらこの試験はいくつかの魔法の使用を許可されているとのことだったので今回は以下の4つの魔法を使うことにした。


・炎魔法のファイヤーボール

・水属性のウォータービーム

・土属性のソイルランサー

・風属性のエアースラッシュ


 これらはミリーゼが持ってきてくれた魔法書に書かれていた簡単そうなやつを選んでみた。

 実際どれだけの力を出せるかはわからないけど。


 僕は少し息を吸って吐いた。


 よし。


「ファイヤーボール」


 炎の弾は魔物に当たると大爆発を起こした。


「ウォータービーム」


 その硬い魔物の皮膚はいとも簡単に貫通した。

 さらには建物の壁も若干貫通してしまった。


「ソイルランサー」


 もはや土とかがあるからなども関係なく地面から鋭い槍が現れそれはボロボロの魔物の体に突き刺さった。


 ちょっと酷いかもしれないけどこれは試験だから仕方ない…。

 ちなみに最後のソイルランサーは中級魔法だ。

 

 魔法書を見ていたらこれがあり使ってみたかったから少し勉強したらすぐに出来るようになった。


「よし次」


 意外にもざわつきはしなかったなと思い自分がいた場所に戻ろうとした時に気づいたのだが全員口を開けて固まっていた。


「レイル様、少しやりすぎですよ!」

「え!?」

「ただでさえ全属性なんて希少中の希少なのにそのうえ無詠唱なんて。見てくださいよ。皆さんをうわ俺落ちたわ。絶対受からんやん。みたいな顔をしてますよ」


 それってどんな顔!?


◆◆◆


 その後特になにもなく試験が終わり今僕たちは家に帰ってきた。


 試験の合格は今日の夜に手紙が届くらしい。

 それでその次の日が入学式だそう。


 いや、色々と詰め込みすぎなのでは。

 それと制服とかはどうなるのかななんて思いながら家についたら母さんがニコニコしながら制服を持って「着て〜」なんて言ってきたのだ。


 どうして制服を持っているのか聞くとどうやら試験の応募の時に一緒に合格の有無関わらず制服を買わされるらしい。


 結構えぐいことをしていたのだ。


 そして僕は今、ミリーゼと一緒に制服を着せられた。


「可愛いわね〜! ふたりとも」


 でもなんで…なんで…。


「ミリーゼにはそっちを着せて…」

「どうしましたか。レイル様」

「僕は女子用のを着せられてるんだ!!」

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転生者の償い 〜転生した僕は罪を償うために人々の為に生きる〜 丸出音狐 @maruimarusann

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