第9話 解決(未解決)
「……はぁ」
家に帰ってきた俺は、早速自分の部屋の勉強机に四枚の反省文とシャーペンを置いた。
「一枚だったらまだしも、四枚って……」
そこで、俺は思わず自分の言葉に対して首を振った。
一枚だったらまだしもじゃない、一枚でも十分におかしい。
大体、最後の四つ目以外は全部俺の問題じゃなくてあの人の性格に大きく影響している部分だ、それなのにどうして俺が反省文を出さないといけないんだ?
「でも、何も出さなかったら今度は反省文を期日までに出さなかったことを反省した反省文を書いて来いとか言われそうだ」
本当に厄介かつ面倒なことになってしまった。
とりあえず、俺が反省すべき四つ目の点の名前を間違ってしまったことから反省文を書いていくことにした。
シャーペンを握り、字を書いていく。
『この度は一学年上の尊敬すべき先輩の名前を間違えてしまってすみませんでした、以後同じことが無いように気をつけます』
……よく考えたら紙の全部を埋めて来いとは言われていないし、とりあえずこの文章で良いだろう。
ということで、後の四枚も名前を間違えた、というところだけそれぞれの無いように変えて反省文を書いた。
「よし」
俺はその紙四枚を学校用の鞄に入れて、今日の課題を始めることにした。
そして、その次の日の朝。
いち早くあの人との関係を断ち切るべく、俺はあの人の居るという三年Aクラスに足を運んだ。
すると、その教室は、一人の人を中心にしてすごい人が集まっていた。
「
「えぇ、誘われたから出るつもり」
「今年も絶対一位取れるよ!」
「ありがとう」
よくわからないが、何やら盛り上がっているようだ。
だが、あの人はああいう盛り上がりには乗らなさそうだったから、きっとあの盛り上がってる場所とは別の場所に……
「居ない?」
まだ登校してないのか?
俺があの人のことを探していると、盛り上がってる場所に居た一人の女子生徒が俺に近づいてきた。
「君、下級生?何か用事かな?」
「はい、紅色の髪の毛を一括りにしてる人がこのクラスだって聞いたんですけど、まだ登校して無いですか?」
「え?美色さんなら、もう登校してるよ?」
「美色さん……?」
その人が目を向けた先にはさっきの盛り上がっている場所があり、そしてさらにその奥────中心に居たのは、俺が探している紅色の髪を一括りにしているあの人だった。
「とりあえず、美色さんに用事があるなら呼んできてあげるね」
そう言うと、三年生の女子生徒はその盛り上がりの中心の方に走って行った……確かに見た目だけで言うなら綺麗な人だったけど、あの性格でまさかここまで人気が高いとは。
驚きながらも俺があの人……美色さんのことを待っていると、美色さんは俺のところまで歩いてきた。
「反省文を持ってきたのね?」
「はい」
俺は四枚の反省文を渡す。
「じゃあ、失礼します」
「えぇ」
俺は後ろを振り返って、階段を降りて行く。
色々とあったが、とにかく美色さんと関わるのは今度こそ終わりだ。
俺は清々しい気分で、自分の教室の自分の席に向かった。
すると……
「先輩!遅いですよ!何してたんですか!」
俺のことを待っていたらしい春花が、俺の席に座って怒っていた。
「悪い、用事があって」
「もう〜!せっかくこんなに可愛い私が会いに来たのに先輩居ないってどういうことですか〜!」
「だから悪かったって言ってるだろ?」
「許してあげます!それより、そろそろミスコンなので私と一緒に私の可愛いところ十個あげていきません?ランキング形式で」
「十個も思いつかない」
「一つなら思いつくってことですか?」
「直したほうが良いところなら」
「バカ!」
そうして、俺は今日の朝で、美色さんとの問題も解決して、今日からはまた自由な日常を送ることができるようになった。
学校に居ると春花が俺のところに来るから自由と言って良いのかはわからないが、それでもこの日常を、俺は意外と嫌いでは無かった。
────そして、次の日の朝。
学校に登校すると、美色さんが俺の席の前に立っていた。
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