第45話

再びシドル村へやってきた。


「勇者様、あれは……」

「!!」

人が増えている。

おいおい、10人以上いるんじゃないか?


「おぉ!! 来たぞ!!」

エイハンや兵士たちがやってくる。


「どういうことです?」

「あぁ、あいつが家族を連れてきたんだが村が想定以上に悪い状況でな」

「すまない……」

エイハンが説明し、家族を連れてきた兵士が謝罪をする。


「悪い状況というのは?」

「あのまま村に住んでいても、生きていける保証がないのだ。

 だから……」

だから連れてきたってわけか。


「とりあえず、今回も食糧を持ってきました。

 食べる分には問題ないと思います。

 しかし……」

全員で移動となると厳しい。

何しろ、村からやってきた人たちは、子供や女性、戦えない人に見える。


「エイハンさんの見立てではどうですか?」

「正直厳しいと思っていた……」


「思っていた?」

「あぁ、だが今のニッコマを見ていけると思ったよ。

 何しろまた兵士を連れてきてくれたんだからな」

「ホ!!」

魂兵が誇らしげだ。


そうだ。

今回追加で8体も魂兵を連れてきた。

さらに装備もできるだけ揃えた。


「あの、これを……」

元奴隷の人々だ。

植物で背負えるカゴを作ったようだ。

「ありがとうございます。これで食糧や物資を運ぶことができますね」


そして、馬車が一つと馬が8匹いる。

「子供は馬車に乗ってもらいましょう。

 戦えない人も。

 そして、荷物を持ってもらいます」

「もちろんだ」


「では出発しようか」

エイハンを先頭に廃村を出発する。


□□□


「ガルルゥ!!」

魔物だ。

1時間もしないうちに黒紫色をした獣が増えてくる。


「ホ!! ホホー!!」

「戦いはできるだけ魂兵に任せましょう」

魂兵には疲労がないからな。

しかし、『魔法兵(炎)』については温存してある。

どれくらい魔法を撃てるかわからないからだ。

ここぞというときに使ってもらいたい。


しかし、レベル2の魂兵は優秀だ。

魔物を倒しつつ少しずつ進むことができている。


□□□


進めば進むほど魔物が増えるな。

まだ魂兵だけで進むことはできている。


「ニッコマ、そろそろ俺たちも戦ったほうがいい。

 進軍速度を上げるぞ」

「はい。わかりました」

「私も行きます」

俺やトヨワさん、兵士たちも戦闘に参加する。


ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!


あっという間に殲滅が終わるが、すぐに魔物が出現する。

馬車や馬を守りながら進むため、徒歩よりもやや遅い。


「また魔物が増えてきましたね」

「だな。もう少し進んだら交代で休もう」


「!!」

ドドド……

魔物が群れでやってくる。


「休んでいる暇はないようですね」

「そうだな!!」


「ガルルゥ」

ズシャッ!

ガキンッ!


戦闘が激化する。

マジかよまだ5kmも進んでないぞ。


「ゲートだ!! ゲートがあるぞ!!」

確かに、声の方を見るとゲートがある。

しかし破壊はできない。

魔物の増加はこいつのせいだ。


「よし、進軍速度を上げるぞ!! さきに馬車を行かせるんだ!!」

馬車を守りつつ進軍。

ゲート付近を通り抜けるまでは馬車を先に行かせ、それから俺たちが離脱。

最後に魂兵があとを追ってくる。


「はぁ……はぁ……」

一般兵や元奴隷の人々に疲れが見え始める。

「交代で休むんだ!!」

エイハンが的確に支持をだす。


□□□


きついな……


ガキン!!

ズシャッ!!

ドスッ!!


戦闘音が響き続ける。

交代で休みつつも進軍はできているが、徐々に進軍速度も落ちている。


「おいニッコマ、お前はそろそろ休むんだ」

「いや、まだいけます!!」

「私もまだまだいけますよ」

俺とトヨワさんが答える。


「わかった!! しかし、この先のスクシン村はゲートが複数ある。

 そこには万全の状態でいきたい」

「複数あるんですか!?」


「確信は持てんが、シドル村がそうだったろう?」

「なるほど」

魔法兵もそのときまで温存しておいた方が良さそうだ。


□□□


ガキン!!

ズシャッ!!

ドスッ!!


さらに戦闘が激化する。

交代で休む暇などない。

戦えるもの全員が戦い続けている。


「はぁ……はぁ……」

「ぐあぁ!!」

「おい!! 大丈夫か!?」

「負傷した人は、馬車へ行ってください!!」

まずいな。

今戦力が減ると穴ができる。

「ホ!!」

20体近くいる魂兵でも殲滅が追いつかない。


クソ……

ゲートが破壊できれば、簡単に進めるのに……


「おい!! ニッコマ!! エルフ殿!! もう少しでスクシン村だ!!

 さきに行ってゲートを破壊してくれ!!」

「わかりました!!」

トヨワさんと俺は顔合わせてうなずく。


「よし!! 魔法兵!! ついてきてくれ!!」

「ホホー!!」


ダッダッダ!!


俺とトヨワさんは魔物の群れを突き進む。


「はっ!!」

ズシャッ!!


邪魔な雑魚は斬り伏せながらどんどん進む。


「グオゥ!! グオオォゥ!!」

デカイ魔物の声で、地響きが起きる。

やばいやつだ。


「村だ!! 廃村が見えます!!」

「勇者様!! ミノタウロスです!!」

廃村にはミノタウロスと雑魚モンスターが大量にいる。


「グオオォゥ!!」

マジかよ!!

もう一体いるぞ!!

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