第42話

「あ、そうだ! 風呂。風呂に入りたいですよね」

「お、お風呂ですか?」

俺は気まずさのあまり、話題を変えてしまう。


「はい。もうしばらくメージスに戻ることは無いでしょう」

今まで風呂に入らなかったのは、急にさっぱりしてメージスの兵士に気づかれるとやっかいだったからだ。


「よし、風呂を作成しましょう」

「お風呂の作成?」

トヨワさんの疑問は最もだ。

しかし、見てもらった方が早いだろう。

「はい!! わかりました!!」

フェリスさんは元気いいな。

良いことだ。


ということで、俺は中央の台座へ向かう。


俺は『施設』をタップする。


トイレ Lv3 : 2000

風呂 Lv1 : 500

井戸 Lv2 : 300

調理場 Lv2 : 2000

訓練室(不可) Lv3 : 10000

魂兵作成室(不可) Lv3 : 10000

魂兵保管室 Lv3 : 5000

鍛冶場 Lv2 : 10000

転送室(不可) Lv2 : 30000


さらに『風呂』をタップ。


ガコッ!!

ガガガ……


いつものように、壁の一部がずり下がり、部屋が出てくる。

「よし、見に行きましょう」


内部は遺跡同様の石材で、浴槽も同様の石材だ。

1mくらいの立方体。

一人で入るにしてもやや狭いな。

浴室には壁に沿って溝がある。

これで排水できるってことだろう。

そして、浴槽の下に穴が空いており、狭い空洞になっている。

「この穴に木材を入れて風呂を沸かせってことですかね?」

「おそらくそうだと思います」


「しかし、この部屋は水が全くありません。

 井戸から水を持ってきて、それで沸かすしかありませんね」

「それなら私にお任せください」

トヨワさんが微笑む。


「ありがとうございます。

 その前にレベルを上げてみますね」

「レベル?」


「えぇ。施設にはそれぞれレベルがあるんです」

えっと……風呂のレベル2は……


風呂 Lv2 : 2000


仮に、石装備を全て揃えるとすると、14000の魂が必要になる。

その分を差し引いたとして、残りの魂は11315だ。

2000消費しても良いだろう。


俺は風呂をタップしレベル2にする。


ガコッ!!

ガガガ……


そして、中をもう一度見てみる。

「おぉ……広がっていますね」

浴室、浴槽共に少し広くなっている。


「勇者様、これ」

フェリスさんが浴槽の上部を指さす。

「穴……ですね」

穴が空いている。


見たところ、ここから水が出てくれれば嬉しいのだが。

「これか?」

穴のすぐそばに、出っ張った石がある。

それを押してみる。


ガコッ!!


ジャァー!!


出っ張りを押すと、浴槽上部の穴から勢いよく水が出てくる。


「おぉ……」

「これで水汲みの手間は無くなりましたね」

しかし、出てくるのはお湯ではなく水だ。

沸かす必要はある。


「では、木材をここに入れていきますね」

俺は木材を生成し、浴槽の下にある空間に入れていく。


「炎魔法をお願いします」

「はい!!」

フェリスさんに炎魔法を使ってもらい、風呂を沸かす。


□□□


久々に風呂に入った。

精神強化しているとはいえ、清潔にできると気分が良い。

フェリスさんと、トヨワさんから入ってもらいたかったのだが、どうしてもということで、俺が一番最初に風呂に入った。


もちろん、シャンプーや石鹸などは無い。

そして、洗面器もないため鍋を生成し、代用して使っている。

服もお湯で洗うわけだが、タオルはない。

自然乾燥しかないのだ。

施設のレベルアップができれば、素材も増えるはずだ。

素材に綿があるのだが、加工しなければ使えいない。

まだまだ不便なところが多い。


いくつか石材で装備を作ることができたが、まだまだ時間が必要だ。

「あ、あの!!」

「はい?」

フェリスさんが勢いよく声をかけてくる。


「時間がありますので、その……」

モジモジしている。

フェリスさんのモジモジはなんともムラムラくるのだ。

「えっと……あの、魂兵についてはトヨワさんもご存知なんですか?」

「ウフフ……」

トヨワさんは妖艶に笑う。


トヨワさんは俺の顔スレスレまで近づく。

「ちょ!! 危ないです!!」

「大丈夫……」

「ト、トヨワ!!」

俺もフェリスさんも慌てているが、トヨワさんはお構いなしだ。


「さぁ……どうでしょう……?」

トヨワさんは俺の耳元で呟く。

「あの……絶対知ってますよね?」

からかっているのか?


「あらあら、勇者様、お顔が真っ赤ですよ」

「勇者様ぁ!!」

「!!」

ク、クソ!!

いつもはフェリスさんが真っ赤なのに……俺としたことが……


「い、行きましょう!! 勇者様!!」

「え!? あ、はい!!」

「いってらっしゃぁ〜い」

トヨワさんはニコニコと微笑み手を振っている。

完全にからかわれたな……

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