第22話

3日後


俺たちは以前よりもさらに大人数で移動をしている。

前回の野営は練習のようなものだったのだろう。


今回は前回の倍以上の人数、100人近くいるかもしれない。

すでに8つのゲートを破壊している。


「魔物だ!! 整列せよ!!」

ザザザ……

魔物が現れると、盾を持った重戦士が横一列に並び前線へ出る。


「弓部隊!! 構え!!」

数対の魔物がやってくる。

これまでとは違い群だ。


「射てぇ!!」

ビュビュン!!


魔物の数が多いため、剣ではなく弓矢ベースで進んでいる。

そして、大量に放たれた弓矢により、魔物はあっという間に数を減らす。


「剣兵!! 突撃ィ!!」

弓兵のあとに剣兵が突進し、残りの魔物を殲滅する。


単純だが、消費が少なく無駄のない戦法だ。


いずれ俺が魂兵を使うときには参考にしたい。


「ほら!! さっさと行け!!」

「はい」

そして、俺はというと、基本的に矢を拾ってくる係だ。

ゲートがあればもちろん破壊をしなければならないが、そうでなければ戦うこともない。

奴らとしては、俺に負傷されても困るからな。


魔物は倒されると霧のように散っていく。

このため、矢を引き抜く作業はなく、ただ拾ってくるだけだ。


しかし、木や地面に刺さったものは丁寧に抜かなければならない。

そして、俺は両手いっぱいに矢を抱え、弓兵のところへ持っていく。


100本近い矢を持っていくのは俺一人ではない。

他にも矢を集めている人間がいる。

おそらく奴隷だろう。


私語は禁止されているので、確認はできないが身なりからして奴隷だろうな。

食事も俺と同じものだ。

硬いパンと水。


遺跡に帰って米を食いたいところだ。

空腹にはなれたのか、そこまで苦ではない。

もしかしたら肉体強化レベル20や精神強化の影響かもしれない。

食べたいは食べたいが、猛烈な空腹感は無い。


フェリスさんは召喚士として扱われているようで、矢を集めることもなく、馬車に待機している。

時折こちらと目が合い、申し訳なさそうにしている。


しかし、それほど疲労はない。

肉体強化のおかげである。

むしろ、矢を拾うだけでゲート周辺の魔物を討伐してくれるわけだ。

せいぜいこいつらを利用させてもらおう。


□□□


あれから徐々に魔物が増えるものの、ゲートがない。

ゲートの位置は、はっきりわかるわけではなく、魔物が多い方に進軍をしているのだ。

しかも魔物は増えるだけでなく、大きく、強力になっている。


「やれやれ、私が出るか」

ヘンサッチだ。


「どけ!」

ヘンサッチは兵を退けると、前線へ出る。


「はあぁぁぁ!!」

ヘンサッチは合掌したあと、両手を前へ伸ばす。


渦を巻く火の玉が出現し、徐々に大きくなっていく。

直径が50cm程度になっただろうか。


「はっ!!」

ヘンサッチの掛け声と共に、火の玉が発射される。


ドガ!!

バコーン!!


爆発音とともに、遠方で魔物が吹っ飛ぶ。


「ほれ、まだいくぞ!!」


ドガ!!

バコーン!!

ドガ!!

バコーン!!


それから同様に二発大きな魔法を撃つと、ヘンサッチは馬車へと帰っていく。


「整列!!」

ここからは先程と同じように重戦士と弓兵、そして剣兵の突撃だ。


ほどなくして、魔物が殲滅される。

そして、弓矢の回収だ。


「ありました!! ゲートです!!」

マジか!

声の方に、剣兵たちが集まっていく。


魔物がいるが、先程殲滅したのでそこまで多くない。

ヘンサッチは馬車から出てこない。


「ほら!! さっさと行け!!」

「はい」

こいつらは、俺が勝手に動けばぶん殴ってくるくせに、行動させるときは必ずさっさと行けと言う。


俺はひたすらゲートを攻撃する。

その間にも魔物が発生するので、周囲には剣兵たちがおり、すぐに発生した魔物に対処している。


ザシュッ!!

ザシュッ!!

ザシュッ!!


数十回とゲートに攻撃すると、ゲートは消えていく。

これで9つ目だ。


「シドル村は近い。今日はここで野営だ」

ヘンサッチが言う。

今更だが、目的地が村だということがわかる。

例によって、俺は何も聞かされていないので、どこに向かっているか、どれくらい時間がかかるのかわからないのだ。


そして、ゲートが破壊されると魔物が出現することはない。

ゲートを破壊した直後、その周辺は安全なのだ。

だからここで野営なのだろう。


一旦帰還して魂を消費したいところだが、どうやら目的地はこの先シドル村というところらしい。

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