第7話

俺は『調理場 500:Lv1』をタップする。


ガコッ!!


何やら奥から大きな音がする。


ゴゴゴ……


石の壁が一部下りだし、奥に空間ができている。

これが『調理場』か?


「へ、部屋ができましたね……」

「ですね」

フェリスが驚いているが、俺は中へ入っていく。


4畳くらいの狭い空間に、腰くらいの高さの段差がある。

段差には窪みがある。

排水口のような穴が空いているので、これはおそらくシンクだろう。


そして、少し横には、穴が空いている。

これがコンロの役割か?

穴に薪を入れて調理しろってことか。


薪なんて無いが、もしかしてあれか?

段差の横には、真っ黒い台座がある。

もともとあった部屋の台座に比べると、小さなものだ。

縦横40cmくらい、高さ1mくらいの台座だ。


俺は『調理場』にある台座に手を伸ばす。

台座は淡い光を放つ。


『水 1』

『薪 3』

『まな板 5』

『おたま 10』

『包丁 10』

『鍋 20』

『フライパン 20』


すげぇ……

なんでも揃うな。

まぁ全てにおいて魂が消費されるが……


そして、『食糧』については、先ほどの部屋のほかに、ここでも選択できるようだ。

『水』『米』『鍋』『薪』だな。

魂44の消費で残りは950だ。


「これは……素晴らしい……」

フェリスが目を大きく開き、驚いている。


「しかし、兵士を待たせたまま米を炊くわけにはいきませんよね」

「そうですね……今日まだゲート破壊に駆り出されそうですから」

だよな。

腹が減っているが仕方ない。


「次は『魂兵』について確認したいと思います」

「は、はい……」

フェリスはなぜかモジモジしている。


「あの、『魂兵』について、何かご存知なんですか?」

「え!? えぇ、まぁ……」

やっぱりな。

さっきから『魂兵』についてのリアクションがおかしい。


「『魂兵』って兵士のことなんですよね?」

「はい……あの、作成するのであれば、きょ、協力させていただきます」

あぁ、確か『魂兵』の作成には、『魂兵作成室』と魂100、それからエルフの協力が必要とかってあったよな。


「そうですね。まずは『魂兵作成室』が必要なようです。まずは作成してみますか」

「あ、あの……『魂兵』の作成にはある程度時間がかかると思います。一度許可をもらったほうがよろしいかと……」

時間がかかるのか。


まぁとりあえず言う通りにしておくか。

「わかりました。兵士のところにイモを持っていきましょう。あ、その前に……」


俺は台座をタップする。

『トイレ 100:Lv1』をタップ。


ガコッ……

ゴゴゴ……


また壁の一部がずれていき、中に空間ができる。

「あの、今度は何を作成なさったんですか?」

「トイレですね」


「まぁ!! 助かります!!」

フェリスが顔を明るくする。


俺はトイレに入り、中を確認する。

まぁあれだ。

少し窪みがあって、穴があるだけだ。

最低限用をたせるだけだな。

今までよりはマシだろうが、日本人の俺にとってはまだまだ厳しい。


そして俺たちは用をたして、部屋を出る。


「イモをお持ちしました」

「よし、農民たちに配っておこう」


▫︎▫︎▫︎


それから俺たちはさらに2つのゲートを破壊する。

ひとつひとつのゲートが遺跡から離れてきた。


そろそろ日が暮れてきた頃だ。

「よし、まだ一つは破壊できるな」

兵士が言う。

いや、ちょっと待て。


「時間が経っていますので、新たにイモを生産できる可能性があります。

 いかがいたしましょう」

俺は兵士に言う。

そろそろ拠点に帰りたい。

というのは、米を炊く時間が欲しいのと、『魂兵』を作成する時間が欲しいからだ。


このままゲート破壊を続ければ、魂獲得量が上がるが、こいつらは俺を奴隷のように使うからな。

放っておいたら、寝る時間以外は全てゲート破壊に使われる。

現状魂獲得も重宝しているが、その間に魂でできることを全て確認しておきたい。


「ダメだ。ゲート破壊を優先しろ。一刻も早くボーダー様の領地を広げるのだ」

「はい……」

クソ、ダメか。

種イモや麦を作成するときに、できるだけ時間を稼ぐしかないな。


その後俺たちはゲートを一つ破壊し、泥のように眠った。


『魂 1650 / 毎時魂 110 / ゲート破壊数 11』

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