第3話

「勇者の力?」

「はい。その力を獲得するためにここへ来ました」

確かにこの部屋は、俺とこのエルフしか入れなかった。

特殊な場所なのだろうか。


「あの台座を見てください」

「はい」

ここへ来てようやく周囲を確認する。


確かに彼女の言うとおり、部屋の中央には真っ黒な台座がある。

高さは腰くらい、縦1m、横2mくらいある。

俺たちは、台座の方へ向かう。


「あの、そういえば自己紹介もしていませんでしたね」

「そ、そうでした!! 私は、フェリス。フェリスと申します」


「俺はニッコマです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

フェリスは頭を下げる。

申し訳ないと思っているのだろう。

まぁ、確かにやってくれたなとは思っている。


「それで、この台座をどうすれば?」

「わかりません……」


「え?」

「この台座は勇者様しか扱えないとの言い伝えです」

マジかよ。


とりあえず俺は台座の上に手を置いてみる。


すると、台座が淡い光を放つ。


「おぉ?」


画面だ。

光る文字、それも日本語が出てくる。

まるでタブレットを大きくしたような画面だな。


こんの変換』

中央に文字が出ている。


それから、右上に

『魂 120 / 毎時魂 10 / ゲート破壊数 1』

というのもある。


「魂の変換?」

どういうことだ?

「魂ですか!? それは聞いたことがあります。ゲートを破壊することによって得られるエネルギーです」


「なるほど。それじゃその魂ってのを変換すればいいのか」

「勇者様には、それが読めるのですか?」


「読めます。俺たちの世界の文字ですね」

「勇者様の世界……」


俺は『こんの変換』をタップしてみる。

すると、項目がいくつか出てくる。


『強化』

『食糧』

『施設』

『素材』

魂兵こんぺい


だいたいの意味はわかる。

だけどこれは何だ?


「魂兵というのは知っていますか?」

「は、はい……」

彼女はなぜか恥ずかしそうに顔を俯ける。


「へ、兵士です……勇者様の、兵士を魂兵と呼ぶと伝えられています」

「おぉ!! これで魂兵を作成すれば、あいらを倒せるかもしれない!!」


「いやしかし、肉体強化も必要だな。現状だとヤツらに合わせて移動するだけでヘトヘトになってしまうからな」

さてどうしようか。


「すみません、この部屋に入るためにエフランには最低限の説明はしてしまいました」

「え!?」

マジかよ。


「はい。ただし、最低限です。この遺跡では、ゲートを破壊した際に得られるエネルギーで恩恵を受けることができる。そのことだけを伝えてあります。ですから、エフランを納得させるために、何か成果を持ち帰る必要があります」

「そうですか……」

クソ……面倒だな。


「すみません、この世界のことはほとんどわからないのですが、食料は不足していたりしますか?」

「はい……困窮している平民は多くいます。戦争がありますからね」


なるほど。

それじゃ、食料は必要だよな。


俺は『食料』の項目をタップする。


『水 1』

『イモ 5』

『とうもろこし 10』

『卵 10』

『小麦 20』

『米 20』


!!

水がある。

喉がカラカラなのだ。

といあえず水をタップしてみる。


すると、台座の上に、水がプカプカと浮き上がってくる。


「「おぉ……」」


俺とフェリスは声を揃えて驚く。


しかし、これどうするんだ?


台座をもう一度見ると

『排出』

という文字が出ている。


俺は『排出』をタップする。


ジョロジョロジョロ……


すると浮き上がった水が少しずつ排出される。


おぉ!!

ゴクゴク……


俺は水を飲み、乾きを癒す。


しかし、一度で飲み切れる量ではない。

「余った水、何かに入れていきます?」

「はい、ではこちらに」

フェリスが革製の水筒を出す。


水を全て水筒に入れると、再び先ほどの項目が出てくる。


この食料の横の数字は必要な魂だろう。

右上の表示が変わっている。

『魂 119 / 毎時魂 10 / ゲート破壊 1』

魂が1減っているのだ。

他は変わっていない。

毎時魂10というのは、一時間ごとに魂を産出するということか?

だとすれば、自動で魂が得られるわけだよな……


「う―ん……小麦って需要ありますよね?」

「はい。貴族や兵士は、基本的にパンを食べています」


「じゃあ、小麦を持ち帰りましょう」

「ありがとうございます」

俺は『小麦』をタップする。


ドサッ……


すると、小麦が一束台座に落ちる。


「これをエフランに渡せば納得するかな?」

「はい。ただ……量が少ないと言われるかもしれません」


俺は台座の右上を確認する。

『 魂 99 / 毎時魂 10 / ゲート破壊数 1 』

魂が20減っている。

やはり項目の横の数字は、消費される魂のようだ。


「そうですね。魂を得るためには時間が必要なようです」

「なるほど。それで納得してもらうしか無いですね」

はじめに多くの小麦を渡してしまったら、さらに要求されるだろうな。

多少殴られても、少なめに渡しておいた方がいいだろう。


次は『強化』だな……

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