第2話

勇者?


「あの、すみません……どういうことですか?」

「はい、私がこの世界に勇者様を召喚しました」

フェリスと呼ばれていたエルフが、土下座をしたまま答える。


「マジか……勇者の割に待遇最悪じゃない?」

「ほ、本当に申し訳ございません!」

さらに頭を下げたまま謝罪をしている。


「あ、あの……とりあえず事情を説明してもらえませんか?」

「わかりました」

彼女は頭をさげたままだ。


「頭を上げていただいて……」

「はい……」

彼女は返事をすると、目を伏せたまま申し訳なさそうに顔を上げる。


「勇者様……我々エルフは、この世界を救っていただくために勇者様を召喚しました」

「あぁ〜なるほど」

なんか、よくあるパターンだよな。

待遇は最悪だったけど。

けど、あの兵士たちは世界を救ってくれみたいな感じも無かったよな。


「今この世界にはゲートと呼ばれるものが出現し続けています」

「あぁ、さっき俺が斬らされていたものですね」

あの黒紫色の球体のことだろう。


「そうです。あのゲートは無限にモンスターを出現させるのです」

「モンスターというのは、さっき兵士たちが倒していた黒紫色の獣のことですか?」


「はい。ゲートの大きさなどによって、出現するモンスターの強さや種類などは異なるのですが、どれも無条件で人間を攻撃してきます」

無条件ってそれはきついな。


「ゲートが出現した地域は、例外なく人間が住めなくなります」

「あれ? さっきみたいにゲートを破壊すれば良いのでは?」


「いえ、ゲートは勇者様にしか破壊できません。人間がいくら攻撃しようともすり抜けてしまうのです」

「マジか……それで俺が攻撃させられていたんだな」


「はい。現在、徐々にではありますがゲートが各地に出現しています。本来ならば、私たちは一丸となり勇者様にお願いし、協力しなければならないのです。それなのに……」

「確かに、お願いされるって感じではあませんでしたね」

クソ……思い出すと腹が立ってくる。

わけもわからず殴られ、あいつらに使われていたわけだ。


「人間たちは、世界の危機に気づいていません。それどころか、互いの領地を巡って争いを続けています」

なるほど、さっきのやつらも戦争中ってわけか。


「私たちエルフ族も、ゲートから逃げるように、人間から隠れるように移動してきました。しかし、お告げがあったのです」

「お告げ……」


「勇者様を召喚し、世界を救うのです。そして、その召喚はこの遺跡で行われ、成功しました」

マジかよ。

俺って勇者なわけ?


「そして、この遺跡付近の土地はエフランが支配しています。私はエフランに謁見し、ゲートを破壊するものを召喚したいと話しました」

「それで今に至るってことですね」


「そうです。人間たちにとって、ゲートの無い領地は魅力的です。ゲートを破壊することができれば、戦争して領地を奪うよりも効率的ですから」

「なるほど、だいたい状況はわかりました」

とんださいなんじゃねぇかよ。


「はぁ……」

俺は大きなため息をつく。

マジでやばいぞ。

こんな首輪まで着けられて。

あのエフランとかいうやつにゲート破壊をさせ続けられるってことだろ。


「も、申し訳ございません! 人間たちが、まさか勇者様をあのように扱うとは思っていませんでした。聞いてはいましたが、我々エルフも通常見つかれば奴隷にされるとか……」

「うわ……よく無事でしたね」


「はい。私の話が本当であれば、ゲートが破壊できますから……ただ、もし召喚が失敗していたら奴隷にされていたでしょうね」

彼女もある意味命懸けだったわけだな。

まぁ、俺が巻き込まれてしまったことには変わりないが。


「あの、じゃあ俺はこのまま奴らの命令に従ってゲートを破壊し続けるしか生きる道はないんですか?」

「世界を救うという意味では、ゲートを破壊し続けていただきたです」

終わった……最悪だ。

異世界召喚奴隷だ。


「ただ……あのものたちの命令に従う必要は無くなると思います」

「マジで!?」

俺は大きな声をだす。


「はい、この部屋でゲートから得たエネルギーを勇者様の力に変えるのです」

「勇者の力?」

希望が見えてきたか?

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