第49話 ギルドで絡まれる

 店に訪れていた客たちと騒いで飲み食いした翌日、朝食を作っているとエリーが部屋から出てきた。


「おはようエリー、つらそうだね」

「おはよう、ああ、流石に飲みすぎた」

「軽めのものを作ってるからもう少し待ってて。それとアデラインかラシャドはチェルシーちゃんを起こしてきてくれるかい?」

「アウ!」

「頭に響くから声を抑えてくれ」


 アデラインが声高々に任せろと答えたのか、チェルシーちゃんを起こしに行く。そしてその声で頭を抑えるエリー。

 エリーは別にお酒に弱いってわけでもないので本当にただ飲みすぎただけだ。


 チェルシーちゃんはそこまで強くなかったのか、家に連れ帰ったら吐いてそのまま寝てしまった。

 流石に吐いた子を抱くのは嫌だったので僕は大人しく一人で寝ることにしたのだった。


 僕はお酒に強いからエリーのように二日酔いになることすらない。


 アデラインに起こされたチェルシーちゃんが頭を抑えフラフラしながら部屋から出てきた。


「おはようチェルシーちゃん」

「おはようございます……」


 酔った勢いでマックスに対して溜まっていた愚痴を言いまくるくらいには飲んでたからなぁ。今回溜まってたものを吐き出したことで少しでも前向きになって早く出ていって欲しいものだ。


 二日酔いでダウンしている二人と朝食をとり、僕は一人で出かけようとしたらラシャドがついてきた。

 こいつ絶対エリーに確認もせずについてきてるだろ……。まあいいか、別についてきても困ることはないしね。


 僕はポーションなどのアイテムをいくつか買い、暇なので冒険者ギルドへ依頼の確認へ向かう。

 そういえばオーガジェネラルとクイーンはどうなったんだろう。聞いてみるか。


「すみません、先日報告したオーガの件はどうでした? 僕たちが討伐した以外にまだいましたか?」

「その件でしたら大丈夫だったみたいですよ」


 杞憂で終わってよかった。それに虚偽報告だと思われたりして悪印象は与えてなさそうだ。

 そう思いホッとしているとラシャドがつついてきて僕の後ろに顔を向ける。何かあるのかと思い僕も振り向くと冒険者が四人こちらへ向かってきていた。


「おい優男のにいちゃん、お前昨日の女の仲間だろ、ツラ貸せや!」

「あー昨日四人がかりで女一人にやられてた情けないチンピラか。話があるならここで聞くけど?」

「ああ? あの女といい、舐めやがって。死にたいらしいな」

「ねえ受付のお姉さん、これって今から僕がこいつらをボコボコにしてもギルドからの評価が下がることってあるの?」

「一応建物内での戦闘は正当防衛でなければ基本的に禁止です。もちろん破れば罰則があります」

「なるほどありがとう。だってさ、どうする?」


 面倒だから戦いたくないな。出来れば穏便に済ませたい。


「表に出ろ、その舐めた態度後悔させてやる」

「二つ条件がある。それを呑めるなら四人同時に相手してあげてもいいよ」

「あ? どこまで舐めてやがる。全員相手だと? いいぜ言ってみろ」

「一つ目、僕が勝てば今後そちらから【捕食者プレデター】へ絡んでくるな。二つ目、負けた方は勝った方へギルドに預けてあるお金を全て引き渡す。どう? 条件呑める?」

「呑んでやる。表に出やがれ、後悔させてやる」

「はいはい。ラシャドは危ないから大人しく見てるんだよ?」

「ホッホッ!」


 負けるなんて一切思ってないんだな。数的有利でしかも同じ冒険者ランクなら仕方ないか。

 ラシャドもBランク相手ならある程度戦えるだろうけど流石にテイマーでもない僕が魔物と一緒に町中で戦闘するのはマズいだろう。

 なので戦いたそうなラシャドには我慢してもらう事にする。


「死んでも恨むなよ?」

「死んだら恨めないよ。そういうのいいから来なよ」

「いいぜ、再起不能にしてやる!」


 一人が剣を抜き一気に距離を詰めてきた。仕方ない、相手は四人で武器も使うBランクパーティ。

 きっとデバフ対策はしてきているはずだ。

 ならやる事は簡単、デバフを使わなければいい。


「もう終わりか。じゃもう僕たちに絡まないでね。あっと、ギルドカード貸りるよ。お金ありがとうね」


 1分にも満たない瞬殺劇だった。デバフ解除した僕に勝てるようなBランク冒険者はそうそういないだろうから当然の結果だね。

 僕は彼らからギルドカードを借りて全て僕の口座へと振り込んだ。いやはや、流石Bランクパーティ、沢山お金をもってらっしゃる。


「泡銭が手に入ったから昼食は買って帰ろうか。ラシャドは何か食べたいものとかあるかい?」

「ホッホッ!」


 僕の質問にラシャドはあっちだと言ってるのか、右翼を広げて前方を指し示す。


「あっちであってる?」

「ホッホッ!」


 頷くラシャド。どうやら僕の考えは当たっていたようだ。

 ラシャドの案内に従って進むと精肉店に辿り着く。

 そんな気はしてたけどやっぱりか。


「どの肉がいいんだい?」


 僕の質問に一つの肉の手前を軽く突くラシャド。

 まったく、店で一番高い肉を選ぶとは贅沢な奴め。

 僕はついでに人間用とベンとアデライン用にもいくつか肉を買う。


 帰りにいくつかの屋台で気になったものを買って家に戻る。

 そこにはリビングに置いてあるソファでダウンしたエリーとチェルシーちゃんがいた。

 まったく飲み過ぎだ。当分エリーには酒を禁止させよう。


「お昼買ってきたからテーブルの上に置いておくね。好きな時に食べるといい」


 僕の言葉に辛うじて片手を挙げて答えるエリー。


 今日の外出は二人とも無理そうだ。

 そうだ、ココちゃんの様子でも見に行こうかな。幸い昨日全員を宿に送ってあげたから場所は分かる。

 いや、それより先に小さな家を借りようかな? チェルシーちゃんみたいに客人がいる時は今の家に連れ込みにくいからね。


 僕はまず商業ギルドへ行くことにした。

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