第19話 うんざりするパーティ

 ホープside


「ホープさん、デバッファーなのにどうやってBランクになれたんすか?」


 うわ、うざい奴がいるパーティと一緒になってしまったな。


「逆に聞くけどデバッファーがBランクになるにはどうしたらいいと思う?」

「そりゃ金なんじゃないっすか?」


 こいつ本人に対してよくもまあはっきり言えるな。


「じゃあそうなのかも知れないね。でもそれが仮に事実だったとしてもギルド内で言わない方がいいよ」

「なんでっすか? 本当のことを言ってるだけじゃないっすか」

「何でって、間接的にギルドが不正してると言ってるのと同義だからだ。そんな事がギルマスたちの耳に入ればギルドカードを没収されて二度と冒険者になることが出来なくなるからだよ」

「それって逆に不正を隠蔽するためだと思われないんすか? 俺ならそう思うっすよ?」


 うーん、ダメだこいつ、よくこんなのとパーティ組んでるな。これじゃCランクに上がるのは当分先だろうな。それ以前に問題を起こして他の冒険者からボコボコにされそうだ。


「まあ取り敢えずギルド内で言わない方がいいって事だけ覚えておくといいよ。度が過ぎると本当に冒険者を続ける事が出来なくなるからね。そんな事になれば君だけじゃなくて仲間にも迷惑がかかるよ」

「うーん、納得いかないけど分かったっす。確かに冒険者を続けられないのは嫌ですし、仲間にも迷惑はかけたくないっすから」


 はあ、なんでこんな奴の相手をしないといけないんだ。依頼中かつ馬車内じゃなければ一発殴ってやるのに。


「はあ、しかしホープさんって羨ましいっすね。あんな美人とペアでパーティなんてマジ羨ましいっす。俺も強気そうな美人を力尽くでヤリてー。実際夜はどうなんすか? 意外としおらしくなったりするんすか?」

「君みたいな奴によく羨ましいって言われるよ。でも僕とエリーは別に恋仲でもなんでもないからその質問には答えられないかな。それにそう言うことは普通に聞かない方がいいよ」


 こいつ一回死んだ方がいいんじゃないか?


「あんな美人とずっと一緒なのに手を出して無いんすか!? はー、これだからデバッファーはダメだって言われるんすよ。じゃあ俺がエリーさんとヤッても問題ないんすね?」

「そこは僕が関与するところじゃないよ。ただ出来れば依頼中はやめてもらえると助かるかな」

「言ったっすよ? 絶対エリーさんと一発ハメるっす」


 はあ、死ねばいいのに。デリカシーもクソもなさ過ぎるだろ。

 ここまで酷いのは久しぶりだな。


「ところで君たちのパーティにも女の子が一人いるけど彼女とは恋仲じゃないのかい?」

「あー、アイツは一度ハメようとしたらリーダーに殴られたんすよね」

「もしかして彼女と君たちのリーダーが付き合ってたのかい?」

「いや、まだ付き合ってないっすね。確か俺が無理やりハメようとしたから殴ったって言われたんで。でも側から見れば相思相愛って感じっす。だからくっつく前に一発ハメたかったんすけど失敗したっす」


 うわ、こいつ最悪だな。相思相愛の相手がいるって分かってて、しかもパーティメンバーだろ? 絶対問題になって近い将来解散するのは目に見えてるだろ。そんな事も分からないのか。


「やっぱ俺としては浮気は良くないと思うんすよ。だから二人が付き合うと手を出せないじゃないっすか? もう少しだったんすけど、やっぱもう一度狙うべきっすかね?」


 僕に聞くな! 一回死んでこい!


「浮気が良くないと言う点においては僕も同意見だ。でもな、無理やり襲おうとするのはやめておけ。普通に犯罪だぞ。二人が付き合う前に君のことを好きになってもらえるように努力して君が彼女と付き合えばいいじゃないか。そして合意の元でそう言う行為をするのなら問題はないはずだ。ただパーティを解散する事になるかもしれないけどね」

「そういえば犯罪だって言われたっす。今回は見逃すけど次はないぞって。でも俺は誰とも付き合いたくないんすよね。縛られたくないっていうか、それだと他の女とヤレないじゃないっすか。やっぱ一応浮気はダメっすから、それなら一人の女って決めずに沢山の女を抱いてまわりたい派っすね。だから安心してください、エリーさんとはハメるっすけど付き合ったりはしないっすから」


 こいつ終わってるな。こいつのリーダーも好きな女を犯そうとした奴をパーティに残してるなんて相当なお人好しだな。彼女も彼女だ、何で犯されそうになった奴と普通にパーティを組んでるんだ。


 ここまで理解出来ないパーティは初めてだ。


「そう言えばもう一人の男の子はどうなんだい? あの子も彼女が好きとか狙ったりはしてないのかい?」

「好きだとは言ってたっすね。でも自分よりリーダーの方がお似合いだから諦めてるそうっす。まあ俺ほどイケメンってわけでもないし話もつまらないんで諦めて正解っすよ」


 別にお前はイケメンじゃないだろ。普通だよ普通。どうやったらそんな自信が出てくるんだよ。


 確かにあっちの子は平均より少し劣るとは思うが卑屈になる程でもないと思う。

 ただリーダーはイケメンの部類に入るからそのせいで卑屈になってしまっているのかも知れないな。


 それと話がつまらないのはお前だよ。昼休憩になったら一発ぶん殴ってやろうか。


 その後もクソみたいな話を聞かされうんざりしていると昼休憩になった。


「ホープ、お前も大変だな」

「大変過ぎて何度も殴りたくなったよ」


 多分全員に聞こえていたんだろうな。僕の声は抑えていたので聞こえてはないだろうが、バカの声は大きかったからね。ある程度僕がなんて言ったかは推察されてるんだろうな。

 まったくウンザリする。


 僕は昼食の準備を始め、エリーは燃えやすそうな枝を探しに行く。

 すると速攻でエリーについていきながらこちらにウィンクをするバカがいた。


 あいつ殺されるんじゃないか? まあいいか、もう知らん。


「申し訳ありませんホープさん、うちのバカが失礼な事を言ったようで」

「そうだね、あそこまで失礼な奴は久しぶりだったよ」

「パーティリーダーとしてもう一度謝らせて下さい。本当に申し訳ありませんでした」

「その謝罪受け取るよ。ただ一つ忠告をしておく。これでも僕はBランク冒険者で、君たちが全員でかかってきても魔法を使わずに1分もかからず返り討ちにして殺す事が可能だ。もしもここにいるのが僕でなく、短気なBランク冒険者だったら彼は間違いなく殺されていたよ」


 リーダーなら会話が聞こえてきた時点で止めてほしいものだ。


 Bランク冒険者にもなれば正当性が認められれば多少の殺しは免責になり罪に問われない。信用されなければBランクにはなれないので高確率でこちらの言い分が通るのだ。


 準備も終わり、後は火を焚くだけなのだがエリーたちがなかなか帰ってこない。

 そう思っていると僅かに足元を軽く叩かれる。

 ベンだ、この叩き方はエリーが呼んでいる時の合図だ。


「すまない、エリーたちが遅いので僕が見てくる。この辺は強い魔物もいないはずだから君たちはここで依頼主のジャスパーさんを守っててくれるかい?」

「分かりました。こちらは任せてください」


 ベンに誘導され真っ直ぐにエリーの元へ向かう。

 しかしこんなところで僕を呼ぶとは何があったのだろうか。

 嫌な予感を振り払い僕は走った。

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