第11話 証拠

■ □ ■ □ ■


 エリーside


 ミラとか言ったか。あの少女は時間の問題だろうな。ホープの使う<魅了チャーム>をルーキーが耐える事など不可能だ。

 Bランクの私ですら使われれば抗うことは不可能だろう。


 そもそもホープは魔法に頼らなくてもその辺の女なら堕とす事など訳ない。

 絶世の美男子ではないが不細工でもない。ただイケメンなのだ。それも絶妙に手が届くか届かないかというイケメン。


 そして外面がいい。しかし八方美人という訳ではない。

 ここぞと言うタイミングを絶対に見逃さない事によって女へ好印象を植え付ける。


 ホープが私を紹介してくれと男に頼まれるのと同様に、私にホープを紹介してくれと言ってくる女は多い。

 さらにはホープ目当ての女がパーティに入れろと絡んでくる事まである。

 正直うんざりしてしまう。


 だが私は今後もホープとパーティを組み続けるだろう。

 何故ならホープほど私の趣味を理解してくれる者はいないだろうからだ。


 私の趣味は、っと、いかんいかん、ミラの仲間とやらの監視をするのだった。


 しかし先程からアイツらはミラに対しての愚痴ばかりだな。そこまで文句があるならパーティを解消してしまえばいいものを、たった一つのくだらない理由だけで解消しないとはバカな奴らだ。

 冒険者をやるなら自分の命より優先するものなんて無いだろうに。


「くそ、ミラも大人しくヤラせればいいのにな」

「まったくだね。まあいいじゃないか、どうせ明日ダンジョンで犯すんだ。後は逆らえないように躾ければいつでも楽しめる玩具の出来上がりさ」

「はあ、少し顔が良くて胸も同年代より大きいからって調子に乗ってるよな」

「顔が良いって言っても普通より少しだけどね。でも確かに体はいいね。犯されるために生まれてきたって感じだ」


 なるほど、二人で狙っていた訳か。このまま明日ダンジョンに潜れば確実にミラは犯されるな。よくあることだ。

 私も昔組んでいた仲間に犯されそうになったしな。その時は誰にも存在を教えていなかったベンと共に返り討ちにして殺してやったが。


 昔のことを思い出しているとベンが顔だけを出して私のズボンを引っ張ってきた。


「ベンか、そろそろいいのか?」

「ワフ!」

「そうか、既に堕としてヤッてるのか」


 しかし手の早い男だ。まったく感心してしまうな。

 後はバカを釣れば最高に楽しい事になるだろう。


「おい、お前ら二人がミラの仲間で間違いないか?」

「ん? おおさっきの偽物野郎と一緒にいた姉ちゃんじゃん。そうだ、俺たちがミラの仲間だが何か用か?」

「いや何、ミラがお前ら二人と話したい事があると言っててな、代わりに呼びに来たのだ。頬を染めていたからどちらかに想いを寄せてるのかも知れんぞ?」


 想いを寄せてると聞いてバカ二人は妙にテンションを上げた。どちらも自分が選ばれたのだと思っているとは頭の中は本当にお花畑だな。今のうちに期待をどんどん高めておけ。


 私は二人をホープとミラが交わっているテントへと案内する


◇ ◇ ◇ ◇


 熱に浮かされた先程まで穢れを知らなかった乙女は闇に侵食され溶かされていた。

 愛を初めて知る事が出来た。今自分は光の寵愛を一身に受けているのだと確信し、また自分の愛を受け止め応えてもらえていると脳が教えていた。


 そこに寵愛などあらず、あるのはひたすらに沈みゆく毒沼。ハマってしまえば心を奪っていく猛毒の沼のみ。


 乙女の中へ今まさに白い猛毒が注がれる。


◇ ◇ ◇ ◇


 なんとまあタイミングが良いのだろうか。

 私がバカ二人を連れてテントへ入った時だった。


 ホープがミラの中へ出し、ミラは恍惚の表情でホープに抱きつきそれを感じていた。


「な、な、なんでミラが偽物野郎とヤッてんだよ!」

「何でって、君に関係無いだろ? そもそも人のテントに勝手に入らないでくれ。服を着ているとはいえ今のミラちゃんを見ないでくれるかい? 今彼女を見て良いのは僕だけだ」


 ホープが言い終わると見せつけるようにミラの方からホープにキスをした。それも明らかに舌を絡ませてだ。

 まったくいい性格をしている娘だな。


「やめろミラ! 脅されて無理矢理なんだろ? なあそう言ってくれよ!」

「そ、そうだ! じゃなければこんな事ありえない!」


 受け入れる事が出来ずにバカたちはその場から動けず、ただひたすらに声を荒げているがうるさい。近くに私がいるのだからもう少し大人しくしてくれ。


「そんな事ある訳ないじゃない。見てわからない? 私が大好きなホープさんに抱きついて今も離れたくないの。キスも私からしてたの見てたでしょ。大体そっちが私を無理矢理犯そうとしていたくせに!」

「嘘だ、ミラがそんな事言うはずがない。それに無理矢理犯そうだなんて思った事なんてない」


「何を言っている。さっきまでお前たち二人で明日ダンジョンに潜ったらミラを犯して逆らえないように躾けると言っていたではないか」

「な! 俺達の会話を聞いてたのか!? あ、いや、そんな事言った覚えはない! 嘘を吐くな!」

「お前たちの会話はこの魔石に記憶させているのだが、聞くか?」


 私は二人の会話を記憶させておいた魔石をポケットから取り出す。

 すると二人は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「これでどちらが嘘つきか分かったな。明日これは証拠としてギルドに提出する。最低でもギルドカードの剥奪と追放は免れないだろうな」

「くそ、オーウェンやるぞ! ここであの魔石を奪って証拠を消すんだ!」

「分かった!」


 バカどもめ、ルーキーが私に勝てるはずがないだろうが。レベル差がありすぎて話にならないな。


「身の程を知れ。ルーキー二人なんてテイマーの私でも素手で倒せる」

「が!」「ぐ!」


 たった一撃ずつ殴っただけで二人は意識を失ってしまった。明日はコイツらも証拠と共にギルドへ引き渡そう。


「まったく、私たちがBランク冒険者だと信じてなかったとは愚かな奴らだ。なあホープ……はあ、私はコイツらのテントを使う事にする」

「気を使わせてごめん」

「いいさ、では明日な」


 人がバカどもに制裁を加えていたにもかかわらず、ミラはホープに腕を回し、胡座に収まり一心不乱に動いていた。

 コイツは大物だな。怒りよりも感心しかない。


 私はバカ二人を持ち上げテントから出て行った。


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