第10話 相談事

 トイレから戻るとテントの中にエリー以外にも人がいた。


「ただいま、ってお客さんなんて珍しい。さっきぶりだねミラちゃん」

「相談事があるようだから招き入れたのだ」

「すみません、お邪魔してます」


 相談事ね。絶対パーティメンバーと仲違いして来たんだろうな。

 だって魔法で仲間に対してヘイトが溜まる<不満フラストレーション>をかけて感情が逆撫でられやすくしていたからね。


「すまんが私は少し出てくる。ホープが相談に乗ってやってくれ」

「それは構わないけど気をつけてね」

「ああ、任せておけ。そういう事でミラよ、悪いが私は席を外すが構わないか?」

「はい、こちらがお願いして相談を持ちかけたのでお気になさらないでください」


 ミラちゃんの返事を聞くとエリーは少し頷きテントから出て行った。

 多分ミラちゃんのパーティメンバーの情報収集だろうな。そう時間も経ってないから今頃愚痴の一つでも言ってることだろう。


「相談事みたいだけどどうしたんだい? もしかして仲間と喧嘩でもしたのかな?」

「はい、実はこの町に来る道中から少しづつパーティの空気が悪くなっていたんですが、ホープさん達のことで言い争いになってしまって」


 へえ、それは好都合だな。それに男と二人きりなのに一切気にしてない所を見る限り、男たちにナンパされてる間に<魅了チャーム>をかけて術者である僕に好意を向けやすくしていたのが効いてるみたいた。


「そうだったんだね。僕たちのせいで悪い事をしてしまった」

「そんな、ホープさんが謝ることなんてありません。悪いのはカーターとそれに流されたオーウェンです」

「そう言ってもらえると助かるよ。ミラちゃんは優しいんだね」


 <魅了チャーム>がどんどん効いていってるな。術者に近い方が効果が高いのでテントというそれほど広くない空間だとそれが顕著だ。

 実際に今、ミラちゃんは頬を染めてこちらを見ている。


「それで話の続きを聞かせてもらえるかい?」

「はい、実は道中から空気が悪くなった理由なんですけど、カーターがオーウェンに聞こえないようにえ、エッチな事をさせろってずっと言ってきてて……」

「ああ、そういう事か。男女がいるパーティだと起こりやすいトラブルだね。実際それが原因で解散してしまったパーティは幾つも見てきた」


 このトラブルはしょっちゅう起こっている。ダンジョン内で仲間に無理矢理犯されたなんて事もよくある話だ。


「経験談という訳ではないけれど、そういう時は断った方がいい。一度させてしまうと二度目三度目と流されていきやすくなる」

「そうなんですね。一応今の所はずっと断ってるんです。だから空気が悪いんですけど……」

「オーウェン君に相談したりはしてないのかい?」

「一度相談したんですけど、カーターがそんな事言う訳ないって言われてしまって、もうどうしたらいいか分からなくなってしまいました」


 ふむ、オーウェン君はミラちゃんよりカーターを信じてるのか。それとも……。


「これは僕の考えで、今後ミラちゃんに起きるかもしれない事を教える。多分だけど近いうちにダンジョン内か宿でカーターに犯されるだろう」

「そ、そんな……それは本当ですか?」

「絶対とは言わない。でも過去に沢山のパーティが同じ事を女性に対して行って問題になっている」

「明日私たちはダンジョンに潜る予定なんです。そんな事を言われてしまうと怖くて無理ですよ……」


 そりゃそうだ。仲間に犯されるなんて想像もしてなかったといった感じだな。冒険者に女が少ない理由の一つなのだが知らなかったのだろう。


「僕としては無理だと言うのであればパーティを抜ける事をお勧めする。冒険者を続けたいなら新しいパーティを探すのがいいだろう。やめるなら大人しく故郷に帰るか、少なくとも今のパーティがいない町に行った方がいい」

「ホープさん、私どうしたら」


 実は先程から僕はミラちゃんの手を握りながら話しているのだが、一切の抵抗を見せないどころか近付いて来ていた。

 今も隣で頬を染め僕を見上げながら問うてきている。


「これはミラちゃんが決める事だ。でも僕はミラちゃんが決めたならそれを応援するよ」


 そう言って僕は近くまで来ていたミラちゃんの肩を抱き、反対の手でミラちゃんの手を握り絡ませる。そしてそのまま少し顔を近付けるとミラちゃんは目を瞑った。


 堕ちたな。ここまでくれば押すだけだな。

 しかしいつも思うが<魅了チャーム>の力って凄いな。


 僕はミラちゃんの希望に応え唇を重ねた。


「ありがとうミラちゃん」

「私こそです。その、もっと、ダメです、か」


 これは完全にエリーの事を忘れてるな。

 まあいいか。そっちの方が都合がいいしね。


 何度か重ねるとミラちゃんの方から重ねてくるようになり、こちらもそろそろ我慢出来なくなったので舌を入れ、絡ませ、そして脳をドロドロに溶かしていく。

 <魅了チャーム>は既に切れているはずだけど、恍惚の表情を見る限りこの子は流されやすいのだろう。それに一気に好感度が下がるわけではないのでここまで効いていたのなら効果が切れていようが関係ない。


 後は先程から影に潜み、ミラちゃんが気付かぬように魔石をセットしてくれたベンに合図をする。

 そして僕はミラちゃんを優しく押し倒した。

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