椛の乱

陽菜花

プロローグ

現実の世界。

そこはつまらない世界だ。



強いものだけが上に立ち、弱いものを見下す。

自分さえ良ければ良い。

誰もがそう思っている。



そんな世界なんか滅んでしまったら良いのに。





真っ暗な街を銀色の月が照らしている。


そんな街を見下すようにそびえ立つ山。

今は秋なのか、よく見れば赤、黄色と色鮮やかな色だ。


山の真ん中に小さな穴が見える。

穴といっても、あれは丘。



丘には黒髪の少女が立っており、静かに目を開いた。

少女も山と同じように街を見下ろしている。



腰あたりまでの黒髪が夜風に揺れ、金色の月の髪飾りがきらりと輝く。

白いシャツに膝丈の黒のスカート、黒いハイソックス、そして淡い紫の羽織。

胸元には髪飾りと同じ、金色の月のブローチをつけている。


腰には紺色の鞘があり、手には鞘から抜いた剣を握りしめている。

鍔の色も金色、柄の色は羽織と同じ紫。



街を見ていた彼女は空を見上げ、月を見た。

月と同じ銀色の瞳。


しかし、なぜか少しずつ赤く染まっていく。

同時に空の月も赤く染まる。



ジジッ、ジジジッとノイズの音が微かに聞こえる。

謎の黒い影が街のあちこちに現れ始める。



月を眺めていた黒髪の少女の顔が歪み、赤い瞳がきらりと不気味に光る。

そして、持っていた剣を上に振り翳す。



「……共よ。れ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

椛の乱 陽菜花 @hn0612

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ