第15話

「これで、今日の授業はお終いですね」


「むぅ……ありがとうございました」


「はい、ありがとうございました」


 僕はそう告げてから部屋を出た。すると待っていたのか、部屋の前にセレスがいた。


「サフェトさん、帰りましょう」


「そうだね」


 僕らはザイン様に一言挨拶をしてからノティス家を出た。すると──



「──サフェトさん」


「……行こっか」


 

 セレスはそれ以降何も言わずに静かに僕の後をついて行った。





防御シールド


「っ!?」


「さて」


 路地裏に入った僕は、斜め上から放たれたナイフを防御シールドで防いだ。それに驚いた男らは動きを止め──


「っ!?」


 僕らが奴らを仕留めようとしたその時、奴らの奥から更に数本のナイフが飛んできた。


 僕は咄嗟に防御シールドでそれらを防いだが……。


「私のスキルに引っ掛からなかった……?」


「お主のスキルに関しては、下々の輩を使って把握している」


 そして奥から一人の老人が現れた。その気配は凪のように澄んでいるが奥に潜むであろう虎のような殺気を僅かに感じた。


 明らかに達人の域に達している。


 なるほど。どうやら僕らが盗賊狩りをしたことは間違っていなかったようだ。


「お主ら、儂らの下々をよく狩尽くしてくれたのぉ……まぁそれで儂らに何かあるかと言われたらそうでもないが……だがまぁ、儂のストレス発散には丁度ええ」


 そう言って老人は腰に佩ていた刀を抜いた。


「儂らの悲願のため、お主らには死んでもらう」


「……こんな狭いところで刀ねぇ」


 普通だったら馬鹿だと一蹴するが、この老人から放たれる圧がそれを否定してくる。

 

 それにこの老人をここで殺すと……嫌なことが起こりそうな気がしてならない。狭いここでは僕の魔法もあまり展開できないからね。


「サフェトさん。あの人の奥に嫌な気配を感じました」


「確定だね」


 だとしたら、取る手段は一つ。


「セレス」


「はい」


「ついてきて」


「えっ!?」


 僕はセレスにそう言ってから路地裏の奥に向かって走り出した。実はザイン様にお願いしてとある場所の使用許可を得ているのだ。


 その場所は──




「──ふむ。なるほど……どうやら儂らはまんまと罠に嵌ったというわけか。儂らの気配に気づいていなかったというのに」


「ま、ルイナ様を連れ去った場所も街中だったと言うしね。そろそろだと思ったんだ。仕掛けてくるの」


「はぁ……だろうな。ったく、儂は散々言ったぞ。小僧め」


 小僧……きっとそいつが暁のリーダーなのだろう。成程ねぇ……この老人の年齢はおそらく70くらいだろう。そんな奴が小僧というとなると……大体が小僧だな。あんまヒントにはならないか。


「だが……元々こんな困難に遭うことは百も承知。おいお主ら、ここで死ぬ覚悟をしろよ」


「だが爺さん、こいつら、どうせ銅等級冒険者くらいだぜ?死ぬってことはねぇだろ」


「ふん、お主らから見てそうならここまで盗賊が狩られてないだろうよ。と言うことはお主らの穴は節穴だってことだ」


「なっ!?おいクソジジイ!」


「だったら、お主らだけで戦ったらどうだ。儂はここから逃げてもいいんだぞ?」


「うっ……」


「だったら最初からそんなことを言うな」


 そう言って彼は刀を構える。それを見て僕は静かに防御シールドを手のひらに出した。

 セレスも片手剣を構える。


「ここなら、好きなだけ暴れられるから、セレス。防御シールドを沢山張るから、足場にしてね」


 そう言って僕は空中に数多の防御シールドを出した。こんな量を出したのは姉さんと一緒に戦って以来だ。

 姉さんも僕の防御シールドを足場にして戦ったことが何度もある。


 セレスは姉さん以上の俊敏性を持っているから上手く使ってくれるだろう。


「ザイン様にあとで礼を言わないと」


 ノティス家が所有するこの土地を使わせてくれたんだ。ちゃんと目の前の敵を捕まえて恩返しをしないとね。


「っ!?」


「だからそれはもう知ってる」


 そしてセレスが老人に攻撃しようと走り出そうとしたその時、セレスに向かってナイフが飛んできた。だがそれはセレスは知っていた上に僕に目で防御シールドを張るよう頼んできたので僕はそれに従った。


 今は彼女に存分に暴れてもらった方が一番いいからだ。


「さて、僕は隠れてる人を相手取った方が良さそうだね」


「任せます」


 そして僕がいると思われる場所にいつもとは違う防御シールドを張った。


反射防御リフレクトシールド


「っ!?がはっ!?」


 奥から苦しむ声が聞こえた。まぁこうされれば何もできなくなるのは必然と言うわけだ。


 ナイフを投げることしかできない奴は囲めば何もできなくなる。攻撃手段がそれしかないからだ。


「はははっ!小娘、中々に面白いのう!」


「っ、防御シールド出してもらってこのザマとは……私の実力の無さに失望してしまいますっ……!」


「いやいや、儂にこれほどついて来れるのだ、誇ってもいいぞ!」


「あなたのような者にこのザマで誇ってられますか!」


「面白い面白い!どこから来るのか全く読めんわい!こればっかりは小僧に感謝せねばなぁ!」


 縦横無尽に駆け巡り、空中からも攻撃を仕掛けるセリスに対し、刀一本でその全ての攻撃に対応する老人。


 この戦いに他の奴らは入ることができないでいた。


「クソがっ、だったらこいつを──」


「お、僕の方に来るのかぁ。防御シールド


「「「あああ!!」」」


 僕の方にきた雑魚どもを纏めて潰したあと、僕は静かに彼らの戦いを見守ることにした。



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