第14話

「盗賊狩りを続けてきたはいいものの……目ぼしい情報はないね」


「それに私たちがやりすぎたせいで、この辺の盗賊全部壊滅しましたね」


「しくじったよね」


「サフェトさんが張り切りすぎたんですよ」


 盗賊を狩り続けて半年。噂では僕らのパーティの二つ名は盗賊キラーなんて呼ばれていたらしく、セレスは悶絶していた。


 そんなことはどうでもいいのだ。肝心なのはその盗賊が王都周辺にいなくなったのだ。


 そして、狩ってきた盗賊に暁に繋がる情報を持った盗賊団はいなかった。それに関しては5つ目の盗賊団を狩った時から薄々勘付いていたが、でも意外と見入りいいから続けていたのだ。


「それにしても……盗賊を狩り続ければ何か見つかると思っていたけど、安直だったなぁ」


「そうですね」


「まぁそのお陰でセレスの実力はあげることができたから良かったけどね」


「そこだけですけどね。よかったの」


 王都周辺の盗賊が壊滅したことをザイン様に伝えると、次の仕事を回してきた。いつの間にか僕らはザイン様の配下になっていたようだ。不本意。


「それで今日から──」


「私の家庭教師をしてくれるの?」


「……まぁ、一応」


「やった!」


 そう、ザイン様からの依頼で今日からルイナ様の家庭教師をすることになったのだ。僕が教えるのは主に魔法関連のことについて。


 そしてセレスは家庭教師というわけではないのだが、ルイナ様に競争相手が必要とのことで、その役を担うことに。


 それと並行して王都内に潜んでいるかもしれない暁の構成員を探す、と言うことだ。


「にしても……ルイナ様、炎魔法に適性ありですか」


「うん!」


 ますます姉さんに似てきたかぁ……困るなぁ。


 僕の中の姉さんを霞ませないでほしい。


「それでは魔法について教えていきましょうか。本当だったら元宮廷魔法士の方が教えるのが一番いいとは思いますが……」


「あのおじいちゃん、話が硬い」


「とのことなので、僕からはでの魔法を教えていきましょう。魔法の基礎基本はその方から学んでください」


「はーい」


 そして僕はいつも使っている防御シールドを手のひらに出す。その大きさは普段よりも遥かに小さい。


「あれ?あの時よりも小さいような……」


「そうですね。魔法というのはこのようにサイズ変換ができます。しかしこれができるようになるにはまず無詠唱で魔法を使えるようにならないといけません」


「むぅ……」


「その無詠唱の理論はロックさんから教えてもらってください」


 ロックさんというのはさっき出てきた、元宮廷魔法士のお爺さんで、その実力は前に僕に見せてもらったのだがかなりのものがあった。


「その無詠唱を使える、という前提の元、話を進めていきますが、この魔法のサイズ変換、日常生活においてや戦争時においてではあまり使うことはありません。日常生活では決まった魔法を使えばいいだけですし、戦争時は威力こそ正義ですからね。故に無闇に小さくする必要なんてないんですよ。それによって威力が弱まったりする魔法などありますし」


「ふむ……」


「だからどこで使うか、ということですが……ここでこの授業のテーマ、冒険者目線での魔法に戻ってきます」


「冒険者ではよく使われるの?」


「はい。魔法を小さくするメリット。それは狭いところでも十全に魔法を発動できる、ということです」


「それだけ?」


「はい。それだけです」


 そう言うとルイナ様は分かりやすく首を傾げた。大方、それしかないんだったら意味ないじゃん、とか思っているのだろう。


 だが、それができないと一端の冒険者とは言えないのだ。


「では、ルイナ様に質問ですが、冒険者が基本的に活動する場所はどこですか?」


「それは、森の中とか、平原とか、あとは……あっ、ダンジョン?」


「そうです。平原は除きますが、今出てきた森の中、そしてダンジョン。この二箇所でもし魔法を小さくせずに放つとどうなりますか?」


「森の中だと周りの木々に影響が出て、二次被害が起こる可能性が出る……ダンジョンはダンジョン崩壊が起こりかねない……?」


「正解です」


 王都周辺にはないが、僕が前までいた街の近くではダンジョンがあった。そこで前に起こった事件なのだが、とある冒険者が炎魔法を縮小せずに魔物に向かって放ったと言うことがあった。


 そして何が起こったかというと、もちろん爆発した。


 ダンジョン内は空気が薄いところもある。その上四方八方石壁などに囲まれていたりする。故にダンジョンの壁にダメージが入り、それ意外にも色んなこと重なりに重なり、爆発したのだ。


 そのせいで数人が死亡、ダンジョンは一時期閉鎖されたのだ。


「なので、冒険者の間では魔法を縮小できないやつはパーティに入れるな、という風潮が出回りましてね」


「なるほど……え、ってことは無詠唱って……」


「必須ですね。冒険者に魔法士が少ない理由の一つです」


「……」


 そう言うと彼女は目に見えて落ち込んでいることが分かった。冒険者に憧れていたのだろうが、そんなに甘くないのだ。



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