異郷にきたハルト、今は落ちぶれた勇者を救う

宵崎楓介

第1話「プロローグ」

「ふむ、ここ数年でこの国はだいぶ変わってしまったようだね」

部屋の外に出て、辺りをキョロキョロとする男がいた。


「まて貴様、国王陛下がお呼びだ!」

「ん?これはこれは異界の兵隊さんじゃないか、まあ国王が呼んでるんだから僕は逃げたりはしないよ」

数年前から突如として現れた異界の兵隊たちがアスパル大陸をうろついているのだ。


そして国がおかしくなり始めたのもこの兵隊たちが来たあたりだ、まず霧の濃い島であったドラゴン帝国が滅ぼされ拠点とされている。


「なんで僕を呼び出したかなんてすぐにわかる、どうせだろうね」

「貴様はさっきからなにをブツブツとつぶやいてるんだ?もうすぐ着くんだから身だしなみには気をつけろよ」

一応異界の人物だろうとも国のトップと出会うときは身だしなみには気を付けるらしい。


王座がある場所までは案内されたが、過去に来たことはあるので知っている。

「わざわざ国王様が一般人である僕を呼び出すとはいったい何の御用かな?」


「お前がコソコソと何かを計画していることはすべて知っているぞ、なぜお前は俺の邪魔をする?」

やはりかとその顔をあらわにしていた、だがそれも計画のうちなのでにやりと笑っていた。


「逆に問うよ、君はなんで知らないような人たちと手を組んでるんだい?」

「俺は勝ち目のない相手に無駄に戦う気がないからだ、そんなことで住民に被害が及んだらとんでもない損害だ」

先の利益しか考えないようなとんでもないクズになっていた。


「降参したらしたで今度は君に権力が無くなってしまうんじゃないのかい?」

「いいや、無条件だったから俺は権力がある」

どうやら無条件で手を組んだらしく、そのため兵隊からも好印象を持たれている。


「ハハハッ、君には失望してしまったよ」

「それは俺への不敬と見ていいんだな?ならこちらもすぐに軍を呼んでお前を射殺してもらおう」

そういった瞬間外で待機していた兵隊たちがずらずらと王座の間へとやってきた、それもものすごい数である。


「はあ、やれやれ…まさか戦うことになるとはね」

ハルトは呆れてしまいながらも階段を飛び降り兵隊がいる場所まで着地をした。


「昔はあれだけ優しくて民に慕われていた王がこうもひどくなるとは」

ただ王座に鎮座しているタツヒロ国王は無言でにらみつけているだけだった。


「これがそっちのやり方なら、僕も自分のやり方で行こう!」

昔は警護隊員として使用していた戦闘服を久々に着た。


「あれ、どこに行った?これでは精密に魔法を放つことができない!」

「隊長!上です上にいますよ!」

隊長らしき人が杖を握り上に向けた時にはもう手遅れであった、先にハルトの方が攻撃をしたからである。


「うわああああ、隊長があああ!」

「怯えるでない!攻めるんだ」

しかしその動きの速さから誰もとらえることはできずに、ただ立ってみることしかできない。


「お願いだ、助けてくれ…オラはここで死にたくねえよ」

だがその要望に応じずに無言で助けを求めた兵隊も切り刻まれた。


「へへっ、遅い遅い」

あまりにもあっけなく倒されてしまっているため、すでに気を失っているものもいた。


「もう一人ずつ殺すの面倒だから一気に殺すことにするよ」

ハルトの周囲が禍々しい雷を帯びながら少しずつ格好が変化をしていった。


「な、なんだあれは!故郷で伝わる魔王と同じような見た目をしてるじゃないか!!」

「魔王?これが君ったちに言い伝えられてる魔王の姿なのかい?」

こちらの国では初代国王が使ったとされる武装だったが初代王はもしかしたら異界の魔王なのかもしれない。


「クソッ!見たら殺されるぞ、みんな目を閉じるんだ!!」

だが城の天井は突き破られ空が見えるようになっていたが、だんだんと雲が覆いかぶさってきているのだ。


「それじゃあ早速だが君らの拠点をぶち壊させてもらうよ」

「何を言ってるんだ!ここから俺たちの拠点は目視できないくらい離れているのだぞ!」

自前の槍を取り出し、目標の場所にめがけて全力で投げた。


少し経った後、とてつもない光が見えさらには大きな揺れまで起きたのだ。

「まあどこに当たったかはわからないけど何とかなるでしょ、これで君たちは増援をすることも故郷に帰還することもできないようだね」


しかし彼の武装は先ほどの影響で少しボロボロになっていた。

「なんだよヘロヘロじゃないかどうやら反動の方が大きいようだな」

「いいやこれも計画の一環だよ」

そういいながら落下していった、しかしそのとき偶然にもなぞの空間がありそこの中へと入っていった。


「ん?あれはなんだろうか見たことのない生物がいるね」

しかしその生物は出口の方を目指していたので危機感を覚えた、もし出口に人がいたとなるとそいつに襲われることになってしまうからだ。


「おい、お前どうやってその魔法使ったんだよ。召喚魔法とかなかなか使えないんだぞ!」

「きゃーっ、誰か助けて!」

外の方で誰かの助けを呼ぶ声が聞こえた、それを聞いてさらに速いスピードで移動をしようとした。


だがその時、自身の視認できる範囲ではあるが時間の流れが遅くなっていることに気が付いた。

「ふむ、これを利用するしか他ないようだね」


「わあ、何あの人…すごい力であの魔物と互角に戦ってる!」

少女が互角に戦っている姿を見て驚いているが、そのあとにデカい魔物は断末魔をあげながら死んでいった。


「ふう、やれやれだねこんな魔物が世に放たれては困ってしまうよ」

戦闘を終え、先ほど悲鳴をあげていた少女を見下ろした。


「妙だなこの魔物は僕らが20年前に倒したはずなのだが…」

過去にハルトのいた世界では正体不明の現象におそわれていた、そしてその時上空に飛び交っていたのがこの魔物だったのだ。


「そうだ一つ聞き忘れていたが君の名前は?」

「わ、わたしは名前がないの」

その少女には名前というものが存在しない、なぜなら少女は勇者だからだ。


「その特殊な格好を見るに僕は勇者だと勝手に理解をしているのだが違うかい?」

「でもわたしはあなたを殺さなくてはいけないわ、何しろあなたのその姿は魔王にとても似ている」

少し前にも聞いた言葉ではあったがここの住民からすると魔王の姿を模したものらしい、考え方が違うようだ。


「そうか…ならば元に戻らないとね」

一瞬で元の姿に戻り、少しかがんだ。


「僕は普通の人間だよ、武器を降ろしてくれないかい?」

「こういう性格で…ごめんね」

見たこともないような生物を見るととっさに武器を出してしまうらしい、だがそれはいいことでもある。


「まあ話はあとで聞こう、今はここから離れるべきだ」

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異郷にきたハルト、今は落ちぶれた勇者を救う 宵崎楓介 @deppaman

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