もしも悲劇の悪役貴族に転生した俺が、シナリオ無視してラスボスを殺したら?~呪われてヤンデレ魔王に取り憑かれました。無尽蔵の魔力をゲットしたけどこれで未来を変えられますか!?~
反面教師@5シリーズ書籍化予定!
第1話 悪役転生
ヴィルヘイム・フォン・コーネリウス。
コーネリウス公爵家の嫡男。
年齢は10歳。自他共に認める天才で、勉強も運動もなんでもできる。
更に、両親に負けず劣らずの眉目秀麗っぷり。その顔は、あらゆる女性を虜にするという。
まさに完璧超人のような存在だ。
生まれながらに人生の勝ちが決まっている。
——だが、そんなヴィルヘイムにも持ち得ないものはあった。
人間性。
それだけは、本当にどうしようもない奴だった。
天才すぎるがゆえに孤独。孤独がゆえに他者を理解できない。理解できないからこそ、自分は何をしても許されると思っている外道。
なまじ家が最高位貴族なだけに、ヴィルヘイムの悪行に誰も逆らうことができなかった。
そんなヴィルヘイムも、人並みに恋をする。悩み、考えることもある。
不運だったのは、——その対象が物語のメインヒロインだったこと。
そう。ヴィルヘイムという人間は、主人公の世界に色を塗るための存在。
ヒロインに想いを寄せるヴィルヘイム。しかし、悪童と名高いヴィルヘイムに、ヒロインたちは興味を示すことはなかった。
逆に彼女たちは主人公である青年と恋に落ち、それに嫉妬したヴィルヘイムが主人公へ様々な嫌がらせを行う。
その結果、ヴィルヘイムは物語中盤でゲームの表舞台から消えることになる。
以降、彼は他の悪役に利用され死ぬわけだが……もしも、そんな悪役貴族に転生したら、みんなはどうする?
俺は……。
▼△▼
「ふっっっっざけんなあああああ!!」
まず叫んだ。
それはもう盛大に叫んでみせた。自分の鼓膜がどれくらいで破けるのがチャレンジだ。
しかし、鼓膜は破れないし、いくら叫んだところで誰の返事も返ってこない。
ハァハァと肩で荒い呼吸を繰り返した後に、俺はようやく落ち着く。
壁にかけてあった鏡をもう一度見て……——パリィンッ!
鏡面に映し出された人物に頭突きをした。つまり鏡に頭突きをした。
「なんで……なんで俺が、よりにもよってヴィルヘイムに——転生するんだ!!」
朝、目が覚めて最初の違和感は景色だった。
平凡なアパートの一室にしては、やたら豪華な内装が俺を出迎える。
そして次に、声と体の違和感。答えは、部屋に置いてあった鏡が教えてくれた。
——俺、目が覚めたら異世界に転生していた件。それも、生前? プレイしていたゲームの——悪役貴族に。
「おかしいだろ!? 普通、こういうのは主人公に……いや、そもそもなんで転生したんだ!? どうやって!?」
頭から血を流しながら再び叫ぶ。
当然、答えは得られない。代わりに——、
「ヴィルヘイム様? 先ほどから大きな声が聞こえますが……何かありましたか?」
部屋の外、扉の反対側から女性の声が聞こえた。
びくりと俺の肩が震える。間違いなく、口調からコーネリウス公爵家に仕えるメイドだろう。
どう返事をしたものかと悩んだ結果、おずおずと口を開く。
「なんでもない。気にするな」
——んん!?
今の誰だ!? 確実に俺の……というか、ヴィルヘイムの口から出た言葉だよな?
けど、俺は、「な、なんでもありません。うるさくしてごめんなさい」と言おうとしたはず。
それがどう変化したら、「なんでもない。気にするな」というものになるのだろうか。
「まさか……俺はヴィルヘイムの口調でしか喋れないのか!?」
最悪の状況に気付く。
それじゃあ俺は、どうやってもヴィルヘイムが辿るルート通りになるってことか!?
転生して早々、死亡確定の人生なんて納得できるか!?
うぐぐ、と体を精一杯捻って考える。
まだ口調だけしか強制されていない。これで行動まで縛られるようなら終わりだが、今のところその兆候はなかった。
俺がヴィルヘイムとして縛られているのは、もしかして口調だけ?
だとしたら……まだ打開策はある。
前世で死んだのか、死んだら前世に戻れるのか。確かなことは何もわからない。わからないのだから、——死ねない。
ヴィルヘイムとして生きるためにも、俺にはシナリオを無視して行動する必要がある。
どうやって? 決まってる。本来ヴィルヘイムが行うような外道な行いをしなければいい。
清廉潔白に生きるし、主人公たちの邪魔もしない。惜しいとは思うが、ヒロインたちとも距離を置けば完璧だ。ヴィルヘイムの死亡フラグは断ち切れる。
「そうと決まったら……まずは——」
「ヴィルヘイム様。入室してもよろしいでしょうか」
纏まりかけていた思考が、再びメイドに邪魔される。
俺は無意識に返事を返してしまった。
「今は忙しい。用事があるなら後にしろ」
「しかし……」
「後にしろ。三度はないぞ?」
「……畏まりました。失礼します」
ああああああ!
どうしてお前はそう悪態みたいなことしか言えないんだ! もっと優しい口調でいいだろ!?
今は忙しいので、ごめんなさい。また後でお話しましょう! ——とかさぁ!
生粋のクソガキに期待した俺が馬鹿だった。
ひとまず面倒なメイドは追い払えたし、今はよしとする。
大事なのはこれから先のことだ。先ほど脳裏に浮かんだ考えを、今度はしっかりと口にする。
悪役転生し、けれど悪役としてのバッドエンドを避けたい俺は、物語が始まる前にある行動をすべきだろう。
それは——。
「——よし。魔王を倒しに行こう」
———————————
あとがき。
新作を見ていただきありがとうございます!
本作はまたしても悪役転生ものですね!
ラスボスと主人公がタッグを組むわけですが……前作とはキャラクターの位置が逆ですね!その上で、チートを手に主人公が努力し、困難を打ち壊す!そんな作品かも……?
本当は投稿を見送るはずの作品でしたが、よかったら皆様に応援してもらえると嬉しいです!
頑張って書くぞー!毎日更新だー!
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