クロヌイ男爵戦その2

 リザードマンと似ているが、その体格は、倍以上大きく、赤い鱗に緑色の目。この容姿に一致する魔物は一種類しかいない。


「リザードマンの上位種、ジュネラルリザードマン」


「そこの人間。よく知っていますね」


 クロヌイは、俺のことを指さして言った。


「そう、私は元々リザードマンだったんだ」


 魔物の多くは、スライムならスライムで、リザードマンならリザードマンで人生を終える。しかし、ごく稀に進化をする魔物がいるのだ。進化した、魔物は、上位種と呼ばれる存在になる。


「私は、上位種のジェネラルリザードマンになりました。そして、ある日魔族に姿が変ったのです」


「可成」


「どうした?」


「鉄砲隊を、ここまで呼ぶのにどれくらい時間がかかる?」


「十分もあれば、呼び寄せることはできるぞ」


「呼び寄せてくれ。その間、俺と郎党が時間を稼ぐ」


「わかった。リン、無理するな」


 可成は、そう言うと前線から離脱する。


「あれ? お仲間さんと力合わせなくて、いいのかい?」


「仲間が一人減っても、俺と郎党が入れば十分だ」


「言うね」


 クロヌイは、そう言うと笑みを浮かべた。


「ちょっと、待ったー!」


 声がした方向を見ると、骨まみれになっている利家が、歩いて来た。


「俺も参加するぞ」


「大丈夫か?」


「おうよ! お嬢さんが、クッションを作って、受け止めてくれたからな」


「いてて、利家。また抜け駆けしようとしているな」


 勝家も利家の隣に来た。利家と同じく、骨だらけの姿だ。


「最初ので、死んだかと思いましたが、人間以外としぶといですね」


 クロヌイは、そう言うと自身の前に魔法陣を出現させる。


「礼儀として、全力で戦わせて、いただきます」


 魔法陣の中にクロヌイは、手を入れて巨大な剣を取り出した。


「リン、なにか策があるのか?」


「通じるか、わからないが、動きを止めればチャンスがある」


「成功確率は?」


「良く見て、五十パーセント」


「それだけ、あれば十分だ」


「作戦は……」


「おっと、話はそこまでです」


 クロヌイは、俺達に向けて巨大な剣を振り下ろした。


「リン、アドリブで大丈夫だ。なんとかやる!」


 勝家は、俺に向かって、自信ありげに言った。


「カグヤ。あいつと同じぐらいのやつを召喚できるか?」


「私を誰だと思っているの? 滝夜叉姫の孫よ」


 カグヤは、地面に手を当てる。


「出て来なさい、大天狗」


 地面から、鼻の長い、巨大なガイコツが出て来た。手には、クロヌイの剣と同じぐらいの剣を持っている。


「私と同じぐらいの大きさですね」


 クロヌイと大天狗と呼ばれているガイコツが、戦い合う。


「鬼ども、いつまで立っているんだ! 敵の四肢、一本ぐらいでも取ってこい!」


「ごおおお!」


 鬼と呼ばれていた妖怪が、クロヌイに向かって突撃する。


「ん? なんですか? その攻撃?」


 しかし、クロヌイの赤い鱗には、鬼の攻撃は通用していないようだ。


「ごお?」


 鬼達が必死に攻撃をするが、武器の方が砕けてしまう。


「うるさい、ハエですね!」


 クロヌイは、大天狗を突き飛ばして、鬼達を剣で横に払い一掃する。


「化物め」


 勝家は、自分の部下が一掃されるとこを見て、悔しそうに呟いた。


「鱗が厄介だな」


 利家は、クロヌイの姿を見て言う。


「柔らかい部位を狙うしかないか」


 柔らかいと思える場所は、喉と胸、胴。リザードマンの弱点と一緒だ。


「相手の懐に入る必要があるな」


「桃とロイは、大天狗と一緒にクロヌイをかく乱しといてくれ」


「わかりました」


「任せて!」


「カグヤは、俺と一緒に来てくれ」


「わかったわ」


「みな、準備はいいか?」


 勝家は、俺達の方を見て言う。


「あぁ」


「織田兵は、無理に突っ込まないで牽制をしてくれ!」


「おう!」


「行くぞぉ!」


 勝家と利家が先頭を走る。


「俺達も行くぞ!」


 俺とカグヤも後ろについていく。


「諦めが悪い奴らですね!」


 クロヌイは、俺達に攻撃を仕掛けようとする。


「大天狗!」


 カグヤが、そう叫ぶと大天狗がクロヌイに向かって、突進する。


「私は、骨に突進される性癖などない!」


 クロヌイは、そう叫ぶと大天狗の頭蓋骨を叩き割った。


「頭を割っただけで、私のガイコツは、止まらないわよ」


 カグヤが、そう言うと頭蓋骨を失った大天狗がクロヌイに抱き着く。


「な、動けない!?」


 クロヌイは、必死に大天狗の拘束から、逃れようとする。


「今度は、避けられないな」


「じゃあな」


 利家と勝家は、武器を構えて、クロヌイの前に現れた。


「くそ! くそ! くそー!」


 クロヌイが、叫ぶ中、利家と勝家は武器をクロヌイに振り下ろした。

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