第32話 今度はオーク

 俺達は愕然としていた。

 それは、高速道路が途切れていたからだ。

 大きななに物かが通ったかのように、分断されていた。


 崩れている道路の所からゆっくりと降りる。

 仙台南インターを先程通過してきたところだった。

 住宅街の道路に無理矢理入って何とか舗装されている道路を走る。


 住宅は全て破壊され、酷い惨状であった。

 下道で行くしかないが、かなりまずい状態にあると言っても過言ではない。


「刃さん、どうやって行きましょう?」


「とりあえず、四号線目指して行くか。あれは北に繋がっている道路だからな」


「了解です!」


 道路の標識をみながら向かうが、ちらほらと遠目に豚型の二足歩行の魔物がいる。


「あの豚たちは……?」


「この辺はオークの縄張りみたいだな」


「あっ。来ましたね」


 この車へと向かってくるオークが数体いる。道路をふさがれているので戦うしかない。


「今度は冬華も手伝ってくれ」


「わかりましたわ」


 車から降り、刀を構える。


「自分が先制で攻撃します! ライジングアロー!」


 オークはあまり動きが速くない。速度の速いアロー系の魔法は正解と言っていい。


 思った通りオークたちはあまり反応できずに魔法が着弾する。半数は動けなくなった。だが、このままで終わりではなかった。


「オオオォォォォォ!」


「はぁ。面倒だ」


 ため息をつかざるを得ない。これは仲間を呼んでいるようだ。

 忘れていた自分に嫌気がさす。

 そういえばこいつ等仲間を呼ぶんだった。


「なんっすか!?」


「仲間を呼ばれた」


「えぇ!?」


 眉をハの字にさせてダルそうな声を出す雷斗。言いたいことはわかるが、やるしかないんだ。


「さぁ。やるぞ」


 オークたちは斧やら角材やら鉄パイプやらを持っている。現代的な武器である。


青炎一閃ほむらいっせん!」


 目の前に並んでいたオークは真っ二つにした。魔力を温存しないとこのままだと魔力切れになる。


「ライジングウェーブ!」


 雷の波がオークたちを痺れさせる。そこに冬華の魔法銃が突き刺さる。貫通して何体か負傷させたようだ。


 仕方がないので、俺はオークたちの群れの中に突っ込む。


 振り下ろされる武器を受け流し、下げた刀を返し切り上げる。

 上げた刀をまた返して横への一閃を放つ。

 これで三体。


「おおぉぉぉ!」


 さらに深く切り込んでいく。

 炎を体に纏い、オークを切り刻んでいく。

 右、左、切り払い、切り上げ、袈裟斬り。

 これで五体。


 オークたちはまだまだ出てくる。

 迫りくる攻撃を紙一重で避けて攻撃するを繰り返す。

 数十分それを繰り返していると、オークたちが攻撃の対象を変えた。


「ライジングインパクト!」

「こっちにきますわ!」


 雷斗と冬華に近付いて行ったのだ。


「小癪な!」


 俺は二人の元へと行きオークを排除する。そのまま背中に二人を守りながら戦う。後ろから援護をしてくれるのでなんとか戦える。


 徐々に被弾する確率が多くなってきた。致命傷はないが、切り傷と打撲は多くなっている。


「ぐぁぁあ!」


 振り返ると死角から攻めてきていたオークが鉈を振り下ろしているところだった。


 雷斗の腕から血が滴り落ちている。


(くそっ! まずいぞ! このままでは……)


「自分を置いて行くっす! 囮になるっす!」


 俺の脳裏に記憶が甦ってきた。


◇◆◇


 そこは魔物に埋め尽くされていた。


「僕が囮になる! お前達は先へ行くんだ! 魔王を倒してくれ! 頼んだぞ!」


「だが! ■■■! お前を置いてはいけない!」


 頭と腹から血を流し佇むローブの来た男性。


「行くんだ。お前達はここでやられていい訳がない!」


「くっ! すまない!」


 その男性を残して俺達は先に向かった。魔王の元へ。


◇◆◇


(俺はその時置いて行く選択をしたようだ。だが、それが今も胸につかえている)


「早く行くっす!」


「行かねぇよ! 俺は二度と仲間を見捨てない!」


 気持ちをぶつけながらオークを切り裂き。


「俺が道を切り開く! 千紗! 冬華! 雷斗! 車に乗れ!」


 三人は急いで車に乗り込んだ。


 体に纏う魔力を増大させ、道路を塞いでいるオークに手を伸ばす。


獄炎砲ごくえんほう


 地獄の業火を一直線に放つ。

 余波で住宅も消し炭になった。

 道路が広くなったように錯覚する。


 車に乗り込む。


「行くぞ!」


 スキール音を響かせながらオークの包囲網を突破していく。

 東に走る。

 少し走ると四号線が見えた。


「あれを北上するんだ!」


「はい!」


 車を傾けながら曲がり大きな道路に車体を滑り込ませる。

 その先にもオークがいる。


「オークです!」


「任せろ」


 窓から左手を出す。


飛炎ひえん


 無数の鳥のような火の粉が飛んでいく。

 行く手を阻むオークを全て焼き焦がす。

 魔力を操作しながら邪魔なオークは消す。


(体から魔力が抜けていく感覚が顕著だ。まずい。もう少しもってくれ!)


 車はそのまま北上していき数十分走るとオークは見えなくなり、ホテルが見えてきた。


「あそこで雷斗の治療をする!」


 そのホテルの前に横付けして駐車し、急いで降りる。


 階段を一緒に上る。

 何かが入って来ても対応できるようになるべく上の階へと駆ける。

 

 六階の一番奥の部屋を入れるようにしてベッドに雷斗を寝かせる。


 ここからは千紗の出番だ。


「血を止めます!」


 ざっくり切られているから血がドクドクと出ている。

 腕の肩の近くを縛り腕を上にあげる。

 そして傷口を縫合していく。


 綺麗で素早い。すぐに処置が終わった。


「終わりました。これで様子を見ましょう。血を流したので、何か食べた方がいい」


「すまないっす。感謝するっす。足手纏いになってみんなに申し訳なかったっす」


「雷斗。大丈夫だ。気にするな。今はよく休むんだ」


 コクリと頷くと寝息を立て始めた。


「冬華、見張りを頼む。俺も魔力がないから一旦休む」


「任せるのですわ」


 冬華が部屋を出ると俺は目を閉じた。

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