第27話 魔物が強くなっている?
二日間過ごしたホテルを出て車を出した。
ゆっくり休めたので割とすっきりした感じで今日を迎えている。
他の三人もリフレッシュできたようだ。
「今日はなんだかいけそうな気がしますね!」
元気にそう言い放つのは千紗だが、コイツのせいでこんなことになっているのだ。まぁ、それは置いておこう。
「あぁ。だいぶ寝られたからなぁ。良く身体を動かせそうだ」
「ですね!」
凄い爽やかな笑顔でこちらを見てくる。こんな顔ができるようになってよかったよ。昨日何てすみませんってずぅっと謝ってばっかりで暗い顔をしていたんだから。
高速を軽快に走っていると後ろから声を掛けてきた。
「今日は車中泊っすかね?」
「どうだろうな。泊まれるような所があればいいけどな。どっかの施設とか学校とかな。一般の家はなんか抵抗あるからさぁ。その家の思い出の写真とか見かけたら落ち込んじゃうだろ?」
「うっ。たしかに。しかも家で魔物に襲われた跡とか発見したらと思うと無理っすね」
「だろ?」
そんなこと考えただけで気が滅入っている。
子供のとか考えると目も当てられない。
その点、公民館のような施設とかだと普段使われていないし、学校は人がいることはまずないだろう。魔物が出始めてからというもの、学校に行ってる場合ではなくなっているからだ。
「刃さんはそういう場面にあったことあるっすか?」
「この世界ではまだない。異世界に居た時は一般の人が盗賊に襲われたりした場面を見ることはあった。いたたまれなかったよ。だから、俺達が討伐したんだ」
「人を!?」
「あぁ。殺した。その世界では盗賊は死罪。冒険者と言われる者達は盗賊を殺すんだ。自分がやったことを正当化するつもりはない。俺は、人殺しだ」
少し暗い気持ちになってしまった。それで皆に嫌われても仕方がないだろうと思っていた。
「私は、別にそれで刃さんを嫌になったりしませんよ?」
そう話してくれたのは千紗だった。本当にこういう時に気持ちがいいくらいサバサバしているからな。
「その世界ではそれが普通だったんですよね? 郷に入っては郷に従えといいます。その世界ではやらなければ、やられる。今のこの世界と一緒じゃないですか」
「そうっす。別に嫌だとか言うつもりはないっす。ちょっと驚いただけっす」
「ワタクシは、そもそも刃さんの過去は関係ありませんわ。今の刃さんを見て判断しますわ」
冬華がなんかカッコイイことを言っている。
そう言っている自分に酔っている節があるからなぁ。
話半分で聞いていた方がいいだろう。
「みんなありがとな」
「あぁ。いい所だったのに魔物よ!」
車を止めて降りる。
向かってきたのは角を生やした黒い牛が二頭。
ブッファローだ。
「あの魔物は突進しかしてこない。だが、闇の魔力で角の攻撃範囲を長くして突進してくる。距離を見誤るな!?」
「「「了解!」」」
炎を纏い斬撃を放つ。合わせて魔法と魔法銃を放っていく。
そんなにスピードは速くないので対処はしやすかった。
傷を負ったのだが、そのまま突っ込んできた。
「ちっ! ファイアーウォール!」
三枚ほどの炎の壁を出し突進の勢いを落とす。
そうすることで、少しスピードが緩まった。
「足を狙え!」
横から二頭それぞれの足を狙って攻撃していく。
二頭のブッファローが膝をついた。
ここまでくれば後はとどめをさす。
首を落として魔石を取り出す。
少し疑問が頭を過ぎる。
(ブッファローってこんなに強かったっけなぁ。もう少しすんなり倒せていたような気がするが。そもそもあっちではDランクだし。そういえばマラスも……)
「刃さん!?」
呼ばれて初めて俺がボーッと立っていることに気が付いた。
「どうしたんですか? 行きますよ?」
「あっ? あぁ。悪い。今の乗る」
車に乗り込み出発する。
魔物が強くなってる?
そう言われれば最初のサルどもも強かったような。というか、魔力量が増えてんのかな?
窓の外から過ぎ去っていく街並みを見ていると森林が多くなっていることに気付かされる。
データとしては知っていた。ただ、実際に見るのは初めてだった。だから異世界化という現象が本当に起きていることだと改めて実感させられた。
魔力だって大気中に漂っているから魔力器官に魔力が溜まるわけだ。
元々の現代には魔力などなかったはず。一体どの時点から魔力があったのか。それありきの魔物だと思うから。
「刃さん? どうしたんですか? さっきからおかしいですよ?」
「あぁ。すまん。なんか魔物が異世界に居た時より強くなっている気がしてな。なんか嫌な予感がするんだ」
「この世界の方が強いんですか?」
「たぶんだがな。最初の斬撃によって始末できていたはずなんだ」
やはり何かが起きているのは間違いなさそうだ。
「そうなんですか。でも私達も魔法は使えますし、負けませんよ!」
その時、佳奈の言葉を思い出した。「まけてない」そうだよな。何を暗くなる必要があるんだ。強くなればいいんじゃないか。
「そうだな。鍛えながら行くか。強くなれそうだなぁ」
後ろからうめき声が聞こえてきた時は笑いが込み上げてきた。
「あっ! 那須高原だぁ!」
「遊びじゃないんだぞ?」
「わかってますよぉ」
口を尖らせる千紗。
車は順調に高速道路を駆けて行く。
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