第12話 彼氏の告白

「お風呂いただきました」

 少々ぎこちないのは許して欲しい。


「じゃ、お風呂行ってくるねー。てきとうにしててよ。じゃ」

 てきとうに出来るはずがない。ゲームをして、晩御飯でエビチリ食べてご飯はちょっと豪華なやつを炊いた。


 結局、それだけだったのにゴムの回収を忘れた。ここだけ詰めが甘かった。封は空いていない。ということはこの箱がどう使うのが適切なのかを分かっていない可能性がある。


 お母さんはお父さんとそういうことをする時に使うくらいでそうならばどういうふうに使うのかを教えてくれなかった。


 どうしよう。どうしよう。とりあえず困ったら検索。口先にゴムを挟んで、その大きくなった物をつけていく。これは私の経験値では無理だ。物に男がつける。これが一番簡単だけど、初めてだと手こずるらしい。


 開いていないなら、尚更手こずるだろう。


「あー、すっきりした」

 お風呂を上がるのが早い。


「あー、その箱? 前に忘れて行ったでしょ?」

 しまった視線を戻せなかったのか。

 天然なくせに変なところで引っかかる。

「中学の先輩に見てもらったんだ。彼女いるか? って言われたから彼女はいますって言われたんだ。模型を使って教えてくれたんだけど分からないって言ったら先輩が膨らませたらソフトバレーが出来るって教えてくれた。バレーしよ」


 そっかそうだよな。先輩もさじを投げるよな。だって彼女がいても高校二年生でも保健体育やってるはずなのに分からないもんな。


「これはね、まずゴムをはじに寄せてから封を切るの。優しくつまんで巻いてる方向から下ろしていくとこういう形になると」


「それで膨らますわけだ」


「本来はそういう用途じゃないけどね」


「じゃ、線はこのボールペンね。行くよ、はーい」


「後ろに行っちゃうよ」


「ダメだよ、正座から動かしちゃだめ」

 ゴムバレーボールは私は三十分もしたら飽きたが、カズオ君は新しいおもちゃの誕生にワクワクして結局一時間もバレーボールをした。


「あー、遊んだよ。楽しかったね」

 一時間は付き合わされたけど、カズオ君の笑顔を見たら、どうでもよくなった。


「ごほん、ことはさんに言わないといけないことがあります」

 え、何改まって、実は本命の彼女がいるの? 

 私はキープで仲良くなったから、友達になってって相談?

 嫌だよ、あんなノート書かれて変な汗かいたり、お祭りで間接キスしたりドキドキして、楽しかったのにもう終わりなの?


「実はことはさんの事が好きになりました。ガチ恋です。僕の本カノ子になってください。つきましては好きかそう好きじゃないまたはその他のご返答をいただきたく」


 この前告白もどきしたじゃん。


「そのいかがでしょうか」

 部屋の外で鍵の開く音がした。


「ただいま。二泊で取ったはずなのに一泊なってて、観光もしたし、帰って来ちゃった。きれいな着物だね。あっ」

 私はスッと立ち上げて部屋からリビングを覗き見た。


「お邪魔しております」

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